週刊金曜日 編集後記

1147号

▼安倍政権の下で、立憲主義に基づく政策・慣行が破壊され続けてきた。平和主義を維持するための知恵も踏みにじられた。そのうえ、リーダーとは最も謙虚であるべき責任者だということを「1ミリも」理解していない首相が発表した案に則って改憲発議へと進もうとしている。自民党はこれまでも改憲案を出してきたが、首相が党総裁の立場で党内審議も経ないまま、メッセージで改憲提案する形は、独裁的かつ同党史上最も卑怯なやり方と言えるのではないか。
 この安倍"壊憲政治"を阻止するためには野党協力、特に民進党と共産党の共闘が必要だと思うので、今後の両党を担う力のある若手議員に対談をお願いした。批判を恐れず率直に語ってくださったことに感謝したい。
 本誌は自民党改憲案が立憲主義・民主主義・個人の尊厳を破壊するものであることを指摘してきたが、今後は安倍改憲案の危険性を伝えるため、さらに力を入れて取り組むつもりだ。表紙に打ち出した「武装しないための『理論武装』」は今号の憲法特集だけではなく、これからも続く。(宮本有紀)

▼東京・町田市にある西東京朝鮮第二幼小中級学校は、数年前に校舎を新築。旧校舎は築40年を超え、耐震などに問題がありましたが使い続けていました。町田周辺の在日コリアンは1000人程度、学校規模も小さく、寄付が見込めないからです。しかし子どものためにと、戦後1世たちが苦労して手に入れた校地の約半分を売却、その金で建て替えを決断しました。
 7月19日、広島地裁は高校無償化裁判で、就学支援金が適切に授業料にあてられるか懸念があるとし、朝鮮学校側の訴えを退けました。しかし、そんな余裕がないことは町田の学校を見てもわかります。28日の大阪地裁での判決は、なんと一転勝訴! 「朝鮮学校〈ウリハッキョ〉という権利」を連載した中村一成さんに、次号で報告してもらう予定です。(吉田亮子)

▼「自由にやっていいと言われ、前に進もうとしたら、スカートの裾を踏まれて進めない。踏んづけていたのは言った本人だった」(要旨)とは、かつて田中眞紀子氏が言った名言ですが、蓮舫氏と稲田朋美氏の辞任が重なった日に、久々にこの言葉を思い出しました。
 政治のことはわかりませんが、蓮舫氏と稲田氏のスカートの裾は、誰にも踏んづけられていなかったと言えるのか、素朴な疑問を感じます。「自由にやっていい、好きなようにやって」的なことを言うくせに、結果が出せなかったら(あるいは結果が出せたから)貶める人々は、どこの世界にも存在します。今回の二人のケースだけが例外で、単に"本人の資質"が問題だったとは思えないのです。
 さらに、秘書への暴言・暴行で問題になった豊田真由子氏。もちろん暴言や暴行はNGですが、もしこれが男性議員だったらどうなっていたでしょう? 議員が秘書に暴言吐くなんてことは、おそらくこれまで山のようにあったわけでしょう? というわけで、最近、女性議員の方々がおもしろいなあと思うのでした。(渡辺妙子)

▼「この学校にはいじめがあります。でも猶予を与えます。今のいじめっ子が卒業したら、この学校はいじめ撲滅に真剣に取り組みます」なんて話は通らない。今、苦しんでいる人間に猶予などない。
 新国立競技場建設の現場監督で23歳の若者が残業200時間超の過重労働を苦に自死した。着工の遅れと人手不足が相まって過酷な労働環境がそこにあったのは想像に難くない。企業側の管理責任は重い。しかし五輪を国家事業とし、「働き方改革」で建設業の残業時間を5年間猶予した政府の責任も見過ごすわけにはいかない。
 安倍政権の支持率が低下している。市民はいい加減気付きはじめたのではないだろうか。政権に近い人間や大企業は優遇するが、抗うものや社会的弱者は簡単に切り捨てていくことを。どんな不祥事を起こしても、犯罪まがいなことをしても"安倍晋三"の名の下に許されてきたし、彼の名前で忖度されてきた。本人や取り巻きに、その記憶がなくとも、市民の安倍悪政に対する記憶までをなくすことはできない。(尹史承)