週刊金曜日 編集後記

1138号

▼加計学園問題で文部科学省が内閣府から早期開学を促されていたとする文書について前川喜平前文科事務次官が5月25日に記者会見を開き、一連の文書は「確実に存在していた」と証言した。会見で私はこう質問した。「一連の文書にある『総理のご意向』『官邸の最高レベル』、これは内閣府の藤原豊審議官の言葉ということだが、もし勝手に審議官が使っていたとしたら大変なこと。長い官僚生活の経験で、審議官が総理の意向とうそをつく、つかれたとの経験はありますでしょうか」。前川氏は「経験ないです」と即答。「こういう役所文書はある程度信頼して、文言というのは真実相当性があるとして読まれるものか」と聞くと、「専門教育課の職員が内閣府の藤原審議官のもとを訪れて、藤原さんがおっしゃったことを書き留めた」「私の部下だった職員がやはり書いてあるようなことを聞いてきたんだと思う。これは100%信じられると思っております」と答えた。前川氏の発言は一貫しており、信頼に値すると思える。事実究明に動かなければ国会の信頼は地に落ちよう。(伊田浩之)

▼朝鮮民謡のCDアルバム4枚、絵はがき5枚セット、書籍6冊、インスタントラーメン3袋、スナック菓子1袋、朝鮮民芸品(湯飲み)3つ、高麗人参のティーバッグ6ハコ、『労働新聞』(5月6日付)......。
 一つひとつ項目と個数を書かされ、「所有権を放棄します」と書かれた紙に署名をするハメになった。朝鮮から帰国した折り、羽田空港の税関でのことだ。
 訪朝団6人で、わざわざ時間をずらし、別々のレーンに並んだのに私だけ捕まってスーツケースの中をしっちゃかめっちゃかにされる。「あんたら、どういう法的根拠でこれ没収すんの?」と聞くと、「いえ、没収したのではありません。放棄していただいたんです」と若造が言ってのけたもんだから頭にきて「へ~」っと睨んでたら6人くらいの屈強な男に取り囲まれたから、こりゃいかん、やられると思って撤退した。
 経済制裁ってやつだが、こんなことされて「今後は大人しくしよう」って奴は普通おらんだろう。それをわかっててやってるのか?高麗人参かえせ。(野中大樹)

▼テレビを通してではあるが、いつもその発言を心待ちにしている元財務相の藤井裕久氏。だが先月16日付『朝日新聞』「憲法を考える」欄のインタビューでは「憲法を改正して、これ以上借金を増やさない目標を付け加えるべき」と答えていたときだけはさすがに心が騒いだ。
 藤井氏の言う「収支均衡条項」を設けるという「加憲」が、9条改正をもくろむ安倍政権の改憲の糸口にされてしまうのではないかと気がもめたのだ。債務残高が1200兆円を超えるという現実では、将来世代のために必要な措置ということはわかるのだが、ほかの方法はないのだろうかという素朴な?「疑問」がわく。そんなとき、『経済学が世界を殺す「成長の限界」を無視した倫理なき資本主義』(谷口正次著、扶桑社)という本とのであいがあった。世界経済の危機を説く書ではあったが、やはり「自分たちが生きている間の経済のことにのみ関心を持ち、将来世代に対する責任を放棄し、リスクを直視していない」との指摘があった。(柳百合子)

▼中学生の息子がネットニュースを見ながら、ぼくでも「便宜」ぐらい読めるんだけど、と言ってきた。定期テストを終えたばかりで、国語はせめて漢字の勉強だけはしておけと散々私に言われていたことが記憶に新しい時期。
 っていうかさ、前後の文でこれがいくらなんでも「びんせん」ではないってわからなかったのかなあ、意味わからなくてもそのまま思いついたまま、読んじゃうんだね、(なんで意味考えないのな?)書いてあげるんならふりがなもふってあげないとねえ、でもどこまでふっていいかわかんないねえ、と。
 文科副大臣? 勉強のこととか学校のことをあれこれ言ったり決めたりする人なんじゃないの?「そもそも」大臣になるのには言葉の知識とかなくていいの? なんか似たような話多いよねえ、と彼の疑問は続く。
 そうだねえ不思議だねえ、読めなくても言葉の種類とか意味とか必要だよね。だから、あなたが漢字の勉強をしなくていいことにはならないよ。(佐藤恵)