週刊金曜日 編集後記

1122号

▼今週号の特集「ネット依存社会」に出てくる「post-truth」という言葉。なにも欧米だけに象徴されることではない。足下を見れば日本だって同じことが起きている。本誌2016年11月4日号で大塚英志さんが語った「感情化する社会」だ。人は木石ではないので、感情がつねに伴う。
 斎藤貴男さんと武田砂鉄さんの対談では「態度変容」という文言が出てくるが、感情すらも操られてしまうと思うと空恐ろしい。
 対談の中で、武田さんは「ジャーナリズム云々というよりも精神世界のよう」と述べている。先日、東京大学で行なわれた講義で四方田犬彦さんが日本は無戒の国であるということを指摘した。「宗教が根付いていない日本に戒律を持っている人がどれだけいるのか。よるべなくふわふわと漂う私たちが向かう先はどこか」と。日本人の精神世界とは何か。「無戒」だからといって何をしてもいいというわけではない。(赤岩友香)

▼阪神・淡路大震災での火災の原因の61%、東日本大震災の時の65%が電気によるものと言われていることを今まで知らずにいた。停電が復旧したとき、破損した電気製品などが通電によって火事になってしまうという。いまでこそ神奈川県平塚市など住宅密集地や1人暮らし高齢者などに無償で「感震ブレーカー(地震の揺れで自動的にブレーカーを落とす機器)」を配布する自治体が増えてきているというが、当時通電されるときの危険性がもっと周知されていたら! 地震が起きて避難するとき、手の届かないところにあるブレーカーを落としてから避難する余裕のある人などいるだろうか。国は自治体に家庭への感震ブレーカーの設置を義務化させるべきでは!
 かつて防災関連の仕事に携わっていた知人が「災害が起きてからの避難の仕方より、火災が起きないようにすることにもっと力を注ぐべき」と感震ブレーカー設置の必要性を説いていた。(柳百合子)

▼おひさしぶりです。前編集長の平井です。気づけば昨年10月以来の本ページでの登場です。この20年、「紙」中心の仕事でしたが最近はWEBやデジタル関係に関わっています。11月から小誌の有料メルマガで「神保町悪童日記」という当たり障りのあるコラムを書きはじめました。コラムの目的は個人の思索と、メディア・リテラシーです。小誌では書けない日々の思考をさらし続けることで、社会やメディアの特徴や法則が見えてくるものを書く方向です。12月にはアマゾンの電子本「キンドル」で読める「電通の正体 新増補版」を編集・出版しました。この1カ月で2万ページほど読まれましたが、もっと読んでもらいたくて期間限定で値下げする予定です。昨4月からは小誌が読める電子版が始まっています。dマガジンなど雑誌読み放題アプリに参画する予定はないので、ぜひ小誌アプリをダウンロードしてみてください。などなど今後もこの欄で近況報告します。(平井康嗣)

▼2015年7月に定期購読の発送を日本郵便のゆうメール便に変更した。埼玉県和光市にある発送元の「東京北部郵便局」を先日、視察した。大阪の「新大阪郵便局」、東京の「新東京郵便局」に匹敵する巨大な郵便局である。
 本誌を搬入する水曜日の午後4時頃に訪問した。郵便番号ごとに結束された本誌の頭紙には遅配厳禁の赤字が記されていた。搬入する前の作業で行なってもらっているそうだ。
 本誌は次に行き先ごとに仕分けされる。郵便番号の上2桁で区分けされ、番号を印字した票札ごとに収納して出荷される。仕分けは、概ね自動化されているが人手も必要。「週刊金曜日が入荷しました」というアナウンスで、スタッフが集まってきて作業が始まった。その後、全国の郵便局に配送される。視察を終えて数時間後、新宿で酩酊しつつ、この拙文の構成を考え「よし出来た」と納得して帰宅した。だが翌日書き始めたら思い出せない。探しものは夢の中にあるかも?(原口広矢)