週刊金曜日 編集後記

1121号

▼特集でとりあげた「官製婚活」や「ライフプラン教育」は、1939年に厚生省(当時)が出した「結婚十訓」を思わせる。「健康な人を選べ。悪い遺伝のない人を選べ。晩婚を避けよ......」などの訓示は、20代で結婚すると3人産める、障がい児の産まれやすくなる高齢出産は避けたい、という方向性となり、文科省が作成した高校保健教育の副教材や各自治体作成のライフプラン冊子に受け継がれている。「十訓」の中で最も有名な「産めよ殖やせよ国のため」は(「産めよ育てよ~」が正しいという指摘もあるが)、ずばり「国のため」の出産育児奨励である。
 政府はこの時代が羨ましいのかもしれないが、いま出生率を上げたいなら、政策の間違いに気付くべきだ。貧困や長時間労働など育児を妨げる要因をなくし、どのような家庭の子どもでも差別されず公正に扱われるよう生活環境を整えることが行政のなすべきこと。
 冷たい北風がいくら「産め」と迫っても効果はない。暖かい太陽の下、みんなが笑っている所でこそ、子どもは増える。(宮本有紀)

▼民進党が3月12日の党大会までに、「2030年代原発ゼロ」という現行方針の見直しを発表すると見られ、注目が集まっている。
 1月17日、「首都圏反原発連合」(反原連)の新年会に出席した民進党の菅直人議員は「2030年代というとだいぶ(時間が)あるものだから、その間、(原発を)再稼働させてもいいじゃないかという論理が(民進党内に)残っている。そこを消さなきゃいけない」とし、「(民進党が)即原発ゼロに向かうということを表明できるように頑張りたい」と話した。同党の初鹿明博議員も「原発については、鹿児島と新潟の県知事選で、(脱原発を掲げた候補が勝つのだという)結論は出た」と強調した。
 共産党の藤野保史議員は、1月15日の党大会で民進党の安住淳代表代行が語った「一定の幅」について、「そこに希望がある」として、政策の違いはあれど一定の幅に歩み寄るべきと話した。次回の衆院選は野党共闘をいかに実現できるかにかかっている。野党の歩み寄りに期待したい。(渡部睦美)

▼今年はじめの芝居は、NODA・MAPの「足跡姫 時代錯誤冬幽霊」。2012年に亡くなった歌舞伎役者、中村勘三郎へのオマージュという触れ込み通り、野田秀樹の勘三郎への「思い」が詰まった作品だ。勘三郎好きとしてはストレートな「思い」の表現に、「そりゃないよ~」と涙が出る。
 勘三郎の葬儀のときに坂東三津五郎が弔辞で「肉体の芸術ってつらいね、死んだら何にも残らないんだものな」と語った言葉が忘れられなかった野田は、いつか書きたいと思っていた演劇をモチーフにしたのだという。なので最近の社会性のあるものとは違い、今回はより演劇らしくなっている。
 おもしろかったな~、勘三郎の芝居。歌舞伎はもちろん、野田との共演もあったし、藤山直美とのコンビは抜群だった......。亡くなってからは歌舞伎を観る回数が減ってしまったが、勘三郎の「足跡」を見つけに、また通わなきゃ。あれっ、野田の思惑に乗せられているような気がするのは私だけ?(吉田亮子)

▼1月クールのドラマ。目が離せないのは「カルテット」。役者さん4人とも好きで、脚本も好きで、オリジナル脚本で、見ごたえがある上にサスペンスの要素もあって、期待以上でした。集中度上げて視聴中。勝手にもっとラブ寄りかと思っていたので、ハラハラ度が高い分キュン度が予定より低く別番組で補充しなくては。しかし残念ながらそのジャンルは、今クール適当なドラマがない。最近手を出し始めた二次元方面の「ACCA13区監察課」でキュンしよう。
 全体的に気軽に楽しめるものが多く、特に「スーパーサラリーマン左江内氏」はバカバカしくて面白くてしょうがない。「東京タラレバ娘」は原作の力もあるのか予想以上の楽しい仕上がり。最近 iPhoneで録画番組が見られるようになり自分専用の画面を手に入れ、ここぞと録画した一挙放送に追われているのに「精霊の守り人」も始まるなんて嬉しい悲鳴。そうか守り人のディーン様と「視覚探偵日暮旅人」の桃李君でキュン補充できるか。(志水邦江)