週刊金曜日 編集後記

1116号

▼小池百合子と橋下徹は大歓迎だろうが、カネのために犯罪を合法化していいのか。刑法185条で禁じられ、江戸時代でも犯罪とされた民間賭博を、自民党、日本維新の会、公明党の国会議員は、「経済成長」を名目に初めて合法化する「カジノ法案」の成立を目論む。
 戦争法を作った安倍政権は人命や環境を犠牲にしてもカネさえ生めばと、武器や原発を売りまくる。人の不幸を食い物にして家庭崩壊、横領事件などを誘発するカジノを解禁するのも同じ発想だ。なぜ刑法上の犯罪かという本質的な議論を避けるのは、加害と被害の関係が明白になるからだろう。
 世界保健機関(WHO)が「病気」と認定しているギャンブル依存症。世界平均で成人人口の1~2%とされるが、日本は5%近く(推定536万人)と飛び抜けて多い。カジノ解禁で被害者はさらに増えよう。儲かるのは業者と献金をもらう政治家、天下り先が増える省庁、広告費が入るメディア企業だけだろう。(片岡伸行)

▼そのファッションセンスが週刊誌を賑わせている小池百合子都知事。問題山積みというのに、東京オリンピックボランティアのユニフォームを「躊躇なく変えていきたい」と言う。すでに3735枚のユニフォームに、製作費約3015万円が使われている。ボランティア募集人員は9万人。ユニフォームのデザインより取り組むべきは宿泊施設のことではないのか。「東京2020大会に向けたボランティア戦略(案)」では活動は無償で、宿泊は自己手配とある。
 先日、数人で地方のホテルに宿泊したときのこと。予約時空いている部屋がなかったのか、なんと2部屋もが「スイートルーム」に。朝食のバイキングには予想通り外国人観光客らしき姿が目立った。今でさえ宿をとるのが大変なのに、4年後が思いやられる。 
 その対策なのか、この4月、政府は旅館業法の一部を緩和したうえで、民泊解禁のための民泊新法も検討されたが、今国会への提出は見送られている。(柳百合子)

▼東京・神田神保町で、岩波書店発行の書籍販売を中心とした「岩波ブックセンター」を経営していた信山社(岩波書店との資本関係はない)が、11月25日、東京地裁から破産開始決定を受けた。
「店主急逝のため誠に勝手ながら11月23日よりしばらくの間、休業させていただきます。」と記された貼り紙を店の入口で見たのは、24日。正直、「えっ!(まさか)」という感じだった。多くの書店が集まる神保町界隈のシンボル的な存在で、店の凜とした佇まいが好きだった。本誌をレジ横で販売してくれていて、本当にありがたかった。最後にレジ横に並んだのは「ボブ・ディラン特集」の11月18日号だ。なにか、ひとつの「時代」が終わったような気がする。まさに「時代は変わる」のだ。
 偶然だが、11月25日、水道橋の小さな居酒屋「蜂の巣」が58年の歴史を閉じた。「身体が元気なうちに、自分の手で引き際を決める」という店主の見事な決断に乾杯。お疲れさまでした。(本田政昭)

▼下の子の生まれつきの疾患のためにずっとかかっていた大学病院をやっとの思いで転院した。遠くなったが、専門外来があり他の科との連携もスムーズで、前の病院では当初の話とまったく違っていて困惑していたリハビリ関係も進みそうでほっとしているが、通う回数が多くなり、市の療育センターももっと利用しろとのことで、なかなか道のりを険しく感じる。
 保育園のクラスメートの兄弟など療育センター経験者の親同士で、これが若い母親でしかも1人目の子だったらさぞかし落ち込むよね、気の毒だよね、私らだからなんとか、こういうこともあるかと構えられてよかったよねという話をした。他にも考えることやるべきことはたくさんあるのだし。
 そんななかテレビの話をするとよく余裕あるよねと言われたりもする。そのぐらい楽しみがあってもいいでしょ? とりあえずドラマ「黒い十人の女」は最終回スッキリできてよかった!(佐藤恵)