週刊金曜日 編集後記

1095号

▼子どもの困窮を救おうとしない自民党の考え方は、同党の議員が井戸まさえさんに言ったという言葉「親の因果が子に報い、ってあると思う」に端的に表れている。
 しかしそれでは何のために政治家をやっているのだろうか。市場の論理だけでは貧富の差が拡大するから、そこに介入して所得を再分配し社会的不平等をなくしていくのが政治の役割だ。それを「親(個人)の責任」と放置するような考え方の人たちが長く与党の座にいるから、OECD諸国の中で日本だけが所得再分配後の貧困率があがるという恥ずかしい事態になるのだ(18、19ページ参照)。
 特集は「子どもの貧困」と題したが、その要因は保護者の貧困である。そこには非正規労働の増加、女性の賃金差別、ひとり親家庭の困窮、DV、保育園不足、高額の学費、貸与制奨学金など、各々の問題が関係する。つまりこれは社会の貧困問題であり「99%」の私たちが当事者だ。子どもがいなくても他人事ではない。(宮本有紀)

▼遅ればせながら、大阪朝鮮高級学校ラグビー部のドキュメンタリー映画『60万回のトライ』(2013年)の上映会を東京・町田市で行なった。ラグビー部の高校生たちは現在社会人2年目。なかにはトップリーグで活躍する選手もいる。朴敦史監督は、映画ではカットされているが、ラグビー部の高校生が高校無償化制度から朝鮮高校が除外されている件で署名活動をしたとき、日本の高校生も応援してくれたことを明かした。
 もう一人の監督、ソウル出身で今は日本在住の朴思柔さんは会場に「君が代不起立」の根津公子さんの姿を見つけると、すぐにインタビュー。韓国でも根津さんのことは報道されているのだという。先日、最高裁で取り消しが確定した07年の「君が代不起立」による処分は、町田市の中学校に勤務していたときのもの。町田市は13年に、市内の朝鮮学校の児童にだけ防犯ブザーを配らないという事件も起こしている。(吉田亮子)

▼自民党の長尾敬衆院議員は6月21日、自身のフェイスブックにこのようなことを書き込んでいた。
〈本日都知事が辞任しますが、一連の問題に何を学び、参議院選挙をにどう臨むのか?? みなさんと一緒に考えたいと思います〉
「何を学び」とあるが、少なくとも石原慎太郎、猪瀬直樹、舛添要一と3氏つづけて自民関係者が都知事を務め、現在に尾を引く何かしらの"汚職"疑惑を抱えてきた。長尾議員には「どのクチで言う」と思いつつ、経緯はよく学びたい。
「泥船も沈むまでは浮かんでいるのよ」。誰のセリフか忘れたが、よく読めば出鱈目でも、ふわりとした雰囲気では支持されてしまうところに"政治"の恐ろしさがある。メディアが流す"大本営発表"より確かなのは今月の収入だ。これに対する支出(税や生活維持費)の割合だ。暮らしを凝視するところから政治を考えたい。(内原英聡)

▼春のGIを締めくくる競馬「宝塚記念」。二冠馬ドゥラメンテ、キタサンブラックが人気を分けた。レースは逃げたキタサンを有力馬が追う展開に。ゴール寸前、後方から8番人気の牝馬マリアライトが逃げ粘るキタサンを捉え、さらに外から猛追した一番人気ドゥラメンテを振りきって優勝した。マリアライトの蛯名騎手は、体を上下しながら懸命に追い、ダービーの無念を晴らさんばかりの鬼気迫る騎乗だった。ところで、先日終了したドラマ「僕のヤバイ妻」。現実に私のヤバイ妻は傍らにいる。それはそれとして、このドラマは関西テレビの制作だが、宝塚記念の舞台は阪神競馬場。そして主人公の名は真理亜。奇妙な一致は他にもあるが都合により割愛。さて、参院選も終盤だ。競馬にたとえちゃ悪いが逃げ切ろうとする自公候補に野党統一候補がどこまで迫れるか。鼻差でも勝てばいい、改憲を阻止するために。(原口広矢)