週刊金曜日 編集後記

1075号

▼TPP参加12カ国は2月4日、ニュージーランドのオークランドで協定に署名した。高鳥修一内閣府副大臣が日本政府の代表として出席したが、高鳥副大臣は2011年5月11日に自身のブログでこう記していた。<私はTPPについて国家主権の放棄であり、平成の「開国」どころか平成の「売国」だと考えている。(中略)TPP問題は日本を守る断固とした決意のある「保守政治家」か否かのリトマス試験紙みたいなものだ>。
 この発言は署名式の前後からネット上でも話題になったが、政治の真価はやはり口先より結果がすべてであることを私は再認識した。
「イモ(ジャガイモ)植えりゃ国破れてもわが身あり」----ロシアの古い諺として、農民作家の山下惣一さんが『TPP反対の大義』(農文協ブックレット)で紹介した言葉だ。日々悪の前進が見てとれる。心して備えたい。(内原英聡)

▼誰かは待っていてくれたんじゃないか! 恒例、映画ベストファイブです。今年は人物に惹かれての5本にしました。
『イコライザー』クロエ・グレース・モレッツ。『ビリギャル』有村架純。『海街diary』長澤まさみ。『戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)』(山城)ヒロジさん。『小さな恋のメロディ』トレイシー・ハイド。
『マイ・ボディガード』ではピタを救い、今回はテリー(クロエ)を助けるデンゼル・ワシントン。クロエが『タクシー・ドライバー』のジョディ・フォスターとダブったのは、私だけではないだろう。ほんとにビリギャルっぽい有村。静かに流れる時間に溶け込んでいた長澤。ヒロジさんのアジテーションは一見の価値ありです。
 それでなんで、ここでトレイシー・ハイドなんでしょうか!? 1971年公開の映画です。7〜8年に1回見てしまう。見るたびに目と鼻のじゅるじゅるが激しくなる。ビージーズ、ジャック・ワイルド、このアナーキーさ。今年は見るのを控えよう。 (土井伸一郎)

▼昨年4月、「女の子みたいに(#LikeAGirl)」という米P&Gの生理用品Always(日本ではウィスパー)の感動的なCMのことを本欄で書いたが、これが「世界フェミCM大賞2015」で1位になった。2位の「母が娘から教えられたこと」という中東アラビア語圏向けのCM(同じ生理用品)もとてもいい。内容はこんな感じ。 複数組の母と娘が仕切りを挟み、「テーブルの上にいくつかのものがあります。女の子用じゃないものを外してください」と指示を受ける。どの母親も、ギター、サッカーボール、聴診器、顕微鏡、カメラ......と外していき、残るのは箒とアイロン、ほ乳瓶などわずか。仕切りが上がると、何も外していない娘に驚く。少女は言う。「女の子だってなんでもできる」。そして話すうちに、母親たちも「私が間違っていた」と、自ら道を狭めていたことに気付くのである。
 私もこのCMに投票したが、5つのノミネート作品がどれも素晴らしいので迷った。ご覧になりたい方は「世界フェミCM大賞2015」で検索すれば「明日少女隊」のサイトで見られる。 (宮本有紀)

▼甘利氏の口利き問題は千葉の建設会社とURをめぐるトラブルなのに、なぜ選挙区の違う甘利氏なのかと思ったが、URの本社は神奈川だったかと合点がいった。だがトラブルの内容からして国交省マターなら、直接国交省に談判しそうなものだ。それともUR絡みは甘利氏が適任だと思ったのか。いずれにしても国交省とURが口裏合わせをしているみたいで、甘利氏だけに「ゲスの勘繰り。」をしたくなる。甘利氏の辞任にとどまらず、疑惑は国交省とURへ及んでいる。国交省といえば、雪による鉄道大混乱の原因の一つが国交省の指示による「間引き」運転だったそうだ。国交省の責任を問うべきだ。URも居住者に対してしばしば一方的に通達する。頼んでもいないのに外装工事を行ない、挙げ句、共益費を値上げするとのこと。これでは不信感が増すばかりだ。もっと居住者の声に耳を傾け、風通しの良いURを目指してほしい。ちなみに居住者の私の台所は風通しが悪くなっている。悲しいことに換気扇が壊れてしまい、換気せん。 (原口広矢)