週刊金曜日 編集後記

1069号

▼年末に殺風景な未来を予感した。
 今後、沖縄の辺野古には米軍基地が新設される。奄美や宮古・八重山の島々にも自衛隊基地が増設され、2000人、またはそれ以上の自衛官が配備される。翁長雄志知事は「圧政に抗った政治家」として名を残す。日本の中央政府はどう非難されても動じない。「民草も喉元すぎれば熱さを忘れる」との確信があるから。そして月日は流れ、人々が本当に今日のこの日を忘れるときがやってくる......。
 勧善懲悪の発想で物事をとらえ、どちらかの側に加担したくなる気持ちはわからないではない。希望をもつことも大切だろう。だが「信じたい」という気持ちが強すぎると人は判断を誤ることがある。
「政治とは技術である」と語った人がいた。「政治は結果がすべて」という言葉もある。 (内原英聡)

▼魂の飢餓。楠田實という人物が遺したこの言葉が気になっている。佐藤栄作総理(当時)の秘書官だった楠田は、沖縄の本土「復帰」に裏方で尽力した。しかし退官後の1995年、米兵による少女暴行事件とそれに憤怒する県民の姿をまのあたりにする。
 本土の識者らが基地の戦略的重要性をとき、平和論や沖縄への同情論を揶揄するなか、楠田は自身の手記にこう記した。
<復帰後、日本政府も巨額の公共投資をして、まちなみも以前とは比較にならないくらい近代化した。しかしそれとても沖縄県民の魂の飢餓を満たすものではない>
 楠田は2003年に没するが、ことし8月、言葉は蘇る。「県民の気持ちには魂の飢餓感がある」。述べたのは翁長雄志知事だ。
 永田町を歩いていると「沖縄を甘やかすな」という声をよく耳にする。政治信条に大きな差異はないと思うが、感じ方は、人によってずいぶんと違う。 (野中大樹)

▼「バカか」という声が傍聴席に響いた。夫婦同姓を強制する民法750条を合憲とした最高裁判決後、裁判官退廷中のときだ。同感。
 普段穏やかな榊原富士子弁護団長が怒りを表明して言った。
「違憲とした裁判官は女性3人と弁護士出身の男性2人。構成を言うのは最高裁の中の男女構成比のアンバランスがこの結果を招いているとつくづく感じるからです」
 これも同感。最高裁の女性裁判官は入っても1人で、今ようやく3人。2割だ。世情に明るい弁護士より裁判官出身が多いし、これではお得意の「世論」もごく一部しか反映できないではないか。
 今回、合憲判断をした寺田逸郎、千葉勝美、大谷剛彦、大橋正春、小貫芳信、山本庸幸、山崎敏充、池上政幸、大谷直人、小池裕の各裁判官を忘れまい。国民審査の時には必ず×をつけさせていただく。もちろん、法改正に直接つながる国会議員を選ぶことが最も大事なのだが。 (宮本有紀)

▼夫婦同姓が日本の伝統だとか、別姓は家族制度の崩壊につながるとか、説得力のないことばかり言う人がいる。他の人の人生なんてわからないはずなのに、どうして選択を制限したいのかわからない。表札がどうの、って二世帯住宅の表札見たことないのかな。夫の姓で呼ばれて結婚を実感して嬉しさを感じるものだ、とか想像で言うなよ、気持ち悪い。
 私自身は戸籍上の姓は変えたが、それは元々の姓が嫌いだったから。特に相手と同じ姓にしたかったわけではなく、呼ばれても他にいるかもと気にしなくてすむのは楽だなあと思ったから。同姓同名がいるよとかいちいち言われたり、同じクラスに4人もいて区別のために小さい方のとか呼ばれたり、わざわざフルネームで呼ばれたり、うんざりした覚えしかないから。
 会社では呼び名を変えるってのも面倒なので旧姓のままです。そんなのは自由なので。電話で相手に名乗るのも楽だし。 (佐藤恵)