敗戦特集

記憶されない歴史は
繰り返される

 韓国ソウルの南山の麓に日本軍「慰安婦」を追悼する公園「記憶の場」がある。モニュメントには、日本語など4カ国語でこう書かれている。「記憶されない歴史は繰り返される」。表紙や上の写真である。その言葉を心に刻みたい。

 戦後74年の『週刊金曜日』敗戦特集は、合計39ページ。各記事に共通するのは「記憶の継承」。内容を紹介する。

「慰安婦」問題を学ぶ韓国ツアーに参加した若者たちが、東京で在日朝鮮人の元「慰安婦」の写真展やイベントを行なった。中国人の元「慰安婦」を記録したドキュメンタリー映画『太陽がほしい』の班忠義監督及び、在日朝鮮人による劇団の演出家・金正浩さんに、ジャーナリストの中村富美子さんが聞いた。

 元広島市立大学教授の田中利幸さんは1月、「明仁天皇への公開書簡」を発表し、天皇制の問題や戦争責任を問いかけた。解説は武蔵大学の松井隆志准教授だ。

 天皇制は「元号」のもと個人の時間も支配する。「元号差し止め訴訟」の持つ意味を考えた。「政教分離」の原則が侵食されている。恵泉女学園大学教授の齊藤小百合さんは、国家神道の復活を警戒する。キリスト教団体は、天皇代替わり行事の国事行為化を憲法違反だと主張する。星出卓也牧師に聞いた。

 新しい試みとして、パズルを掲載した。

 日本軍将兵らが収容された撫順戦犯管理所について、ルポライターの星徹さんが報告する。植民地朝鮮から「満洲」に集団移住した朝鮮人たちがいた。彼らを取材してきた朝鮮族の写真家・李光平さんの話をルポライターの永尾俊彦さんが聞いた。解説は東京外国語大学名誉教授の中野敏男さんだ。

 被爆したのは日本人だけではない。大学生らが朝鮮人被爆者問題を学び、広島で朗読劇をした。問題は終わっていないことを知ったと話す。

 韓国大法院が日本企業に対し、元徴用工らへの賠償を命じた判決をきっかけに日韓関係が悪化している。しかし、高校生の友情は途切れない。日韓の高校生によるコンサート「響けよ 歌声」は今年で3回目、8月下旬に千葉県の2カ所で開かれる。主催者の戸田志香さんが報告する。木村聡さんの「不謹慎な旅」はアヘンで戦費を調達した話。ワタナベ=アキラさんには、戦争関連テレビドキュメンタリーを紹介してもらった。

 ひとつひとつの記事を読みながら、戦争の惨禍を想い、改めて不戦を誓う。(本誌発行人 植村隆)

  • 日本に本当の民主主義を創るために
    退位する明仁天皇への公開書簡
    (2019年1月1日付)

    田中利幸

    元広島市立大学教授で歴史評論家の田中利幸氏(70歳)が今年の1月に個人ブログ「吹禅」で明仁天皇へ向けた書簡を公表し、大きな話題となっている。4月には自身で英訳し、アジアパシフィックジャーナル/ジャパンフォーカスに掲載された。天皇の人権問題や戦争責任を追及することで日本の戦後民主主義の歪みを問う。

  • 「明仁さん」への書簡が
    わたしたちに問いかけるもの

    松井隆志
  • 元号差し止め訴訟、いよいよスタート
    「『令和』の中で死んでたまるか!」
    岩本太郎

    「昭和初期世代」の原告3人が「令和」に待ったをかけるべく国を相手に民事訴訟を提起。ネット上でも大きな関心を集める中、法廷での審議がいよいよ始まった。

  • 「神社は宗教にあらず」が復活させる「国家神道」
    齊藤小百合

    戦前の反省から生まれた日本国憲法の「政教分離原則」。しかし、積み重ねられた判決や、天皇の代替わり儀式を通して、「社会的儀礼・習俗」を装った「国家神道」が再び蘇りつつある。そんな時代だからこそ、改めて「政教分離原則」の意味を考えてみたい。

  • 政教分離の侵害を監視する全国会議事務局長・星出卓也氏に聞く
    「信じない自由」と「信じる自由」

    「政教分離」の問題に一番 敏感な宗教の一つがキリスト教会だ。背景には、教義はもちろんだが、戦前の苦い記憶がある。天皇の代替わり儀式などを通じて神社参拝が当然とされる空気にどう向き合うのか。「政教分離の会」事務局長の星出卓也牧師に聞いた。


  • きんようパズル クロスワード

  • 不謹慎な旅第15回 麻薬大国ニッポン
    国産アヘンとケシ畑
    写真・文 木村聡

    侵略した土地でアヘンを売りさばいた国があった。「国のお役に」と生涯をケシ栽培に捧げた男がいた。戦争資金のために、国家と国民が麻薬を作る。かつてこの日本は、世界一の麻薬製造国だった。


  • 撫順戦犯管理所の歴史的意味
    日本人加害兵士らへの中国人の思いとは
    星徹

    中国人を虐殺するなど罪を犯した日本人が、再教育を受けた場所が中国にはある。筆者が再訪すると、かつて日本人の世話をしたという91歳の元看護師が迎えてくれた。


  • 元集団移民の朝鮮人を取材した李光平さん
    「満洲」侵略の実態をまず知ってほしい
    永尾俊彦

    日本ではあまり知られていない朝鮮人の「満洲」への集団移民の実態を取材した写真集が6月に出版された。著者の李光平さんが来日、話を聞いた。


  • 「満洲」に渡った朝鮮人たちを心に刻む
    中野敏男

  • ドキュメンタリー『太陽がほしい 劇場版』
    班忠義監督に聞く

    中村富美子

    中国人の日本軍「慰安婦」の証言を20年にわたって記録し続けたドキュメンタリー『太陽がほしい 劇場版』が公開されたばかりの班忠義監督に、いま、日本人に伝えたい映画への思いを聞いた。


  • 劇団アランサムセ演出家・金正浩さんに聞く
    中村富美子

    金正浩さんが在日朝鮮人による劇団アランサムセを立ち上げたのが31年前。以来、自分たちがこの日本社会で何を考え、どう生きているかを表現し続けてきた。笑いに包んで重いことを伝える舞台で、どのように歴史や時代に向き合ってきたのか。


  • 武蔵大学・永田浩三ゼミの試み
    大学生による朗読劇
    「わたしたち朝鮮人がヒロシマで体験したこと」

    2018年8月、広島平和記念資料館の会議室で、朗読劇『わたしたち朝鮮人がヒロシマで体験したこと』が上演された。自ら台本を作り上演したのは、東京の武蔵大学・永田浩三ゼミで学ぶ18 人の大学生。過酷な体験をした他者の言葉をどのように語ったのか、そして昨年のその経験から何を学び取り、いま何を学ぼうとしているのか、大谷ひかりさんと浜屋瑞希さんにお話を伺った。


  • 日韓の高校生が同じステージに 今月千葉で
    「まずは友だち! それが一歩」
    戸田志香

    日韓の高校生が同じステージでともに歌うコンサートが3年目を迎える。日韓関係が悪化している今だからこそ草の根交流の持つ意味は小さくない。


  • 「慰安婦」問題とどう関わる?
    若者たちがぶっちゃけトーク
    写真展とコラボ企画も

    文聖姫

    在日朝鮮人として唯一、日本軍「慰安婦」被害を訴え、日本政府を相手に裁判を起こして闘った宋神道さん。2017年12月に95歳で亡くなった。宋さんの闘いや支援者らとの交流を記録した写真展「となりの宋さん」が7月14~21日、東京・中野で開催、20代からの広範な層が捉えた戦時と現在の性暴力はつながるとした各種イベントも好評だった。


  • TVが伝える夏の戦争ドキュメンタリー
    ワタナベ = アキラ

    毎年8月「恒例」の戦争関連テレビドキュメンタリー。テレビに限らず、新聞や出版もこの時期だから関心を集めやすいと一挙に戦争モノを伝える。見るのは大変だが、年に一度の「恒例」を受けとめたい。

  • 「表現の不自由展・その後」展示中止に 井澤宏明
  • 「れいわ新選組」木村英子、舩後靖彦両参議院議員が初登院
    メディアの心のバリアフリーが必要だ 写真・文/薄井崇友
  • 不謹慎な旅 (15)国産アヘンとケシ畑
    麻薬大国ニッポン 写真・文/木村 聡
  • STOP!9条改憲(42)
    改憲は安倍政権の"アキレス腱" 高田 健

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