1519号
2025年05月02日
▼「日本国憲法第1章の天皇条項の矛盾はあなたの言う通りだが、それを言えば言うほど、今の政治情勢では右派が9条に自衛隊を書き込むなど、平和条項の改憲を推進することになると思う」。先日、神戸での本誌読者会主宰の拙著出版記念会懇親会で、熱心な読者からそう指摘された。私の古巣、自称リベラル朝日新聞社の「9条護憲」勉強会でも同志記者から同じことを言われてきた。
僕が、そんな政治力学を忖度して発言を変え、節を曲げるような「セコい男」でないことは知ったうえでの「友人としての忠告」であろう。面倒なことに、9条誕生の歴史的経緯が天皇制護持と切り離せないことで、こうした忠告を〝リベラル〟と感じさせている。
本号から「象徴天皇制を問う」特集を戦〝後〟80年企画の連載で提案させていただいた。本欄でも、非暴力不服従抵抗の重要性と戦場取材体験からの9条論は何度も書いてきた。だからこそ選択的夫婦別姓の有効性は支持しつつ、国家承認届出婚=法律婚前提の人間差別は批判し続けている。近々フランスのPACS制度の紹介なども企画したい。(本田雅和)
▼俳優の山口崇さんが亡くなられました。劇団俳優小劇場で一緒だった小川幾多郎師匠からの紹介で交流が始まりました。ご自宅にもお邪魔し、「次は鱧鍋にしよう」と話されていたのですが、果たされないままとなりました。
今年は怪優・山谷初男(はっぽん)さんの七回忌の年。淡路島の山口さんの実家を、はっぽんさんが訪ねて2カ月ほど滞在するなど、二人は50年以上にわたり刎頸の交わりを結んだ仲。故郷、秋田・角館の同輩らに「友人の山口を紹介するから」と約束していたそうで、「はっぽんさんの七回忌には、ぜひ角館にご一緒しましょう」とお誘いしていました。ただ昨年10月、「今、声を失っています。会話ができないのです。意思疎通は手真似だけ。はっぽん行けなくてゴメン」というメールを頂戴し、今年1月にお電話をいただいたのですが、それが最後となりました。謹んで哀悼の意を表します。
山口さんは、「天下御免」「肝っ玉かあさん」ほか数多くのドラマに出演。「大岡越前」では、徳川吉宗役を演じました。吉宗といえば、「米将軍」で知られています。「言葉の広場」6月のテーマは「おコメの話」です。(秋山晴康)
▼『週刊金曜日』のサイズを変更してから1カ月が過ぎました。サイズ変更とともに、文字も前より大きくしました。「読みやすくなった」との声を複数いただいており、読者のみなさまにも受け入れていただけたことを実感します。
今回サイズを変更したのは、印刷会社からの要請であるとの説明をさせていただきました。本誌のサイズの印刷ができる機種の機械を印刷会社で使用しなくなったのです。昨年の早い段階で印刷会社から強い要請があり、それを選択せざるを得ませんでした。印刷不況の中で、印刷会社もコストを極力抑えていかなければならないのでしょう。紙の印刷がそれだけ深刻な事態になっているのです。
創刊101年の歴史を誇ってきた『週刊朝日』が休刊したのは2年前の2023年。その後も雑誌休刊の知らせは後を絶ちません。そうした中でも本誌が刊行を続けられるのは、読者やさまざまな形で支援を寄せてくださるサポーターがいるからです。今後、出版不況はますます大変になることが予想されますが、そんな中でも刊行を続けられるよう頑張ってまいります。(文聖姫)