週刊金曜日 編集後記

1457号

▼ベトナム戦争を検証する連載を書きつつ、「暴力とは何か」を考え続けている。パレスチナでもウクライナでもベトナムでも、抵抗や革命に暴力を伴うのは必然で、否定も肯定もしない。日本国憲法9条の理念である非暴力・非武装の抵抗は侵略者の圧倒的暴力を前に、命を守るうえで最も現実的・実利的ではあるが、停戦を訴える際の有効な道具や武器ではない。

 イスラエルの戦車や装甲車に石礫を投げる若者や子どもたちを見てきた者として、あなたはどうして彼ら彼女らに「やめろ」などと言えるのか?一番の暴力装置である国家や軍隊や警察や監獄の構造的暴力を問わずして9条を説くこと自体、日本の"平和主義者"の偽善ではないのか。本誌創刊者の本多勝一は、「殺される側」に身を置かない傍観"ジャーナリスト"は「殺す側」=権力の走狗となると警告している。ベトナムの戦場では人民から常にそう問われていたと......。ルポルタージュとはアンガージュマンである。(本田雅和)

▼昨年、自民党の政治資金パーティを巡る疑惑が表面化した後、立憲民主党も追及する構えを見せた。だが、この動きを報じるニュースを見るたびに失望感は高まった。

「自民党派閥裏金調査チーム」。会議室のテレビに映る壁に、こう書いた大きな紙をいつも張る。こんな紙を作って張ることに意味があるのだろうか。テレビ映りを意識し、「やってる感」を国民にアピールしたいのではないか。政権の疑惑が出るたびに「追及チーム」「野党合同ヒアリング」を作り、官僚をつるし上げてきたが、これらのチームの力で疑惑が明らかになったためしは記憶にない。

 小沢一郎氏が本誌インタビューで政権交代を強く主張したが、ほかの野党幹部にどれだけ覚悟と心構えがあるのか。かりに最大野党の代表である泉健太氏が新首相になるとしよう。「泉首相が訪米し、バイデン米大統領と初の日米首脳会談に臨んだ――」。こんな場面は絶対に想像できない。(小川直樹)

▼能登半島地震、人間も大変ですが、ペットたちも大変なことになりました。強烈な揺れや家屋の倒壊などで、ペットを連れ出せなかった方もいらっしゃるのではないでしょうか。ペットのレスキューも始まりました。多くのペットが一日も早く飼い主さんと再会できますように。そして、いつまでも一緒にいられますように。

 そして残念ながら今回も、ペットとの同行避難がなかなか進まないという現実があるようです。2次避難所に行くけれど、猫は家に残していかなければならないのが気がかり――と被災者の方が語っているニュースを見ました。一部、ペット同伴可の避難所も開設されたようですが、数としてはまだまだ少ない。同行避難が当たり前になってほしいなと思います。

「くらしの泉」コーナーの執筆陣に、今号から印鑰智哉さんが加わりました。科学や食と農業のかかわりについて、幅広く取り上げていただく予定です。(渡辺妙子)

▼成人の日に合わせ、朝鮮学校の卒業生も各地で、関係者や家族と祝賀会を行なった。『朝鮮新報』には「ウリハッキョ(私たちの学校=朝鮮学校)の先生方が子どもたちに社交性や人を思いやる人間性を育んでくれた」と感謝する保護者の声や、「今までは守られる側だった。これからはウリハッキョを守る側」との新成人の声も。しかし朝鮮学校は、高校無償化制度から除外。文部科学省前で適用を訴える「金曜行動」は、昨年12月15日で500回目を迎えた。

一方、東京都内で朝鮮学校を支援する市民たちが昨年12月、石原都知事時代に交付が停止された「私立外国人学校教育運営費補助金」について、「都こども基本条例」に基づき再開するよう第1次集約分8232筆の署名を小池都知事に提出した。2月6日(火)19時から府中市市民活動センタープラッツで「朝鮮学校に補助金復活を求める一万人署名 2・6緊急集会」を行なう(090・1814・8371上村)。(吉田亮子)