週刊金曜日 編集後記

1451号

▼日韓の演劇人がタッグを組み、『外地の三人姉妹』を上演している。日本統治下の朝鮮半島をなぜ舞台に選んだのか、今週号で2人に尋ねた。筆者は20年ほど前に広島と韓国・大邱の教職員が取り組んだ歴史の副読本作りを取材し、両国で共通認識を持つことの難しさを思い知らされた経験があり、2人の答えには強い関心があった。

 この副読本作りでは合意に時間がかかる近現代史を後回しにし、記述対象を近世に絞ったが、豊臣秀吉の朝鮮出兵を巡っても議論が紛糾した。ことほど左様に歴史をめぐる両国の歩み寄りは難しい。

『外地――』の脚本を書いたソン・ギウンさんは、両国に「認識の差」「知識の差」があることを認めつつ、「喧嘩になるから」と議論を避けるのはよくないと語る。

 演出家の多田淳之介さんは「(両国の)情報格差を補完したい」と、場面ごとに「創氏改名」「朝鮮語学会事件」などの歴史上の出来事を字幕で示す工夫をした。2人とも40代だ。若い世代による共同作業に、共生社会のヒントを見る思いがした。(平畑玄洋)

▼「違う字が入っているようです」と校正作業中に指摘される。この仕事では日常のことだが、しかしそこは普通そんなに間違うところじゃないんだけど......と訝りつつ確認してみて愕然。「本」とあるべき字が「夲」になっていたのだ。

「なぜだ......」しばし作業の手を止めて愕然。入稿原稿を見ても、確かにそれは私がワープロソフトで入力した箇所だった。とはいえ自分の名字2文字の中の1つで、今も原稿のほかメールでも年間に何百だか何千だか、他人様の目に触れる場所で書いている文字ではないか。数年前、アルファベットの「o」のつもりで入力した字に後日「それはキリル文字の『о』です」と指摘されて以来の衝撃だ(ウェブ記事に掲載された場合、検索に引っかからないなどの実害が生じる可能性があるという)。

 校閲ご担当のYさん、Hさん、オペレーターのHさん、貴重なご指摘を戴き心より感謝です。貴重な経験を記録し、自らへの戒めとすべく、本項は以下のペンネームを使うことにする。(岩夲太郎)

▼手元に今井康夫氏の『俳優座養成所卒業生たちのいま』という写真集があります。載っているのは錚々たる役者ばかりですが、その中の一人、小川幾多郎さんのことを「師匠」と呼ばせてもらっています。怪優・山谷初男(はっぽん)さんを紹介してくれたのも師匠でした。二人は60年来の友人で、1970年代には共にグループを組み、フォークフェスティバルなどにも出場していました。

 師匠ゆかりの俳優座劇場が再来年4月に閉館となると聞き、当劇場で上演された無名塾の『等伯―反骨の画聖―』を観に行きました。知人の俳優も出演し、見応えのある舞台でした。

 長谷川等伯の出身地・石川県七尾にある「能登演劇堂」での無名塾の『マクベス』公演を思い出しました。はっぽんさんが門番役で登場。そのときのコミカルで存在感抜群の演技は今も目に焼き付いています。はっぽんさんが亡くなって4年がたちました。俳優座劇場の無名塾公演、一緒に観たかったなあ。(秋山晴康)

▼11月2日に東京・日本教育会館一ツ橋ホールで行なわれた小誌創刊記念大集会にご来場いただいた方、ネット配信に参加された方、心の中で応援してくださった方、ありがとうございました。

 編集委員による講演、セッションから、崔善愛さんのピアノ演奏、松元ヒロさんのスタンダップ コミックと、多彩な内容にご満足いただけたものと思います。

 1年前から準備を始めました。新型コロナ自粛の緩和期と重なり、各種イベント、コンサートなどが一斉に動き出し、都内の施設の土日は満館でした。そこで休日前夜の18時からの開催としました。

 結果として、来場者は5年前の475人に対して317人。今回初めて実施したネット配信の参加者144人を加えて5年前とほぼ同じ水準となりました。

 帰宅が深夜になるので参加をあきらめた方のために、DVDを制作しています。12月下旬完成予定で、予約受付中です。価格は2500円(税込)。業務部03・5846・9001まで。(円谷英夫)