週刊金曜日 編集後記

1450号

▼岸田文雄政権の支持率下落が止まらない。政権浮揚につなげようと、所得減税や低所得世帯向け給付金を打ち出しても、「選挙目当て」と多くの国民に見透かされている。「内閣支持率を上げる→解散・総選挙に打って出て勝利する→来年秋の総裁選再選を確実にする」という思惑がミエミエ。つまり長く首相の座にとどまりたいという「自分のため」で、「この国の未来をこうする」「国内外の難題にこう対処する」というのが見えないから、支持を失うのは当然か。

「岸田さんは『首相になりたい』、ただそれだけの人。政策に中身がない」。昨年6月、経済学者の金子勝氏に取材した際、こう指摘していた。今、まさにその通りだと思う。その時の取材は、岸田首相が掲げた「新しい資本主義」についての評価を聞くことだった(昨年7月8日号に記事掲載)。「新しい資本主義」もほとんど聞かれなくなった。どうなったんでしょうか?岸田さん。(小川直樹)

▼国際平和監視団のボランティアをしている友人からメールがあった。ここの団員は毎年オリーブ収穫期にヨルダン川西岸パレスチナに行く。収穫の手伝いとイスラエル人入植者から農民が攻撃をされないよう監視を果たすためだ。が、今年は今回の事態で飛行機が飛ばないという。メールにはガザ市民を案ずる思いが綴られていた。

 この国際平和監視団の設立者、アンジー・ゼルターさんの記録『非暴力で世界を変える 活動家という生き方』(仮題)を、日本で訳出するクラウドファンディングが進んでいるという。非暴力でよりよい世界をめざすゼルターさんは、戦闘機や原子力潜水艦を非暴力で非武器化し、国際法と国際人道法を駆使して無罪判決を勝ち取ったことで知られる。私もKindleで原書を購入したが邦訳がほしい。あっ、今週号「アンテナ」9ページに訳本出版の詳しい話が!

 ゼルターさんの本誌インタビューも実現させたい。(小林和子)

▼11月3日号の鈴木宗男氏インタビューに対し、先週号の「金曜日から」で本田雅和が〈大国が小国を侵略し、抵抗されると「ウクライナの勝利がありえますか」などと既成事実にした占領の承認を力で迫る。ロシアのプロパガンダそのものだ〉と書いています。

 違います。鈴木氏は〈停戦とは、侵略者であるロシアを認めることや、国境画定ではありません。ロシアが併合した4州の国境をどうするかは話し合いで決まることです〉と話しています。〈占領の承認を力で迫〉ってはいません。〈命は失われたら戻ってこない〉として早い停戦を求めているのです。

 本田は〈新たな知見ではな〉いとも書いていますが、ロシアの内在論理はあまり報道されてきませんでした。国際紛争を解決するには当事者の内在論理の把握が必要です。その上でその是非を判断し、解決策を探る必要があります。弊誌読者には、その読解能力があると信じています。(伊田浩之)