週刊金曜日 編集後記

1379号

▼玉ネギがとにかく高い。3個入りを買おうとすると400円以上することもあるので、手出しできない食材になってしまっている。原油や小麦粉、半導体製品など、さまざまなものが高騰していて、生活は圧迫されている。総務省が発表した4月の消費者物価指数は、約7年ぶりに2%を超えた。

 そんな状況をまったくお構いなしに、身勝手な「提言」をしているのが経団連だ。経団連は、2025年までに、消費税率を現在の10%から19%まで引き上げる一方で、法人実効税率は現行の約38%から25%にまで引き下げることを求める「提言」を出した。これまでも消費税は大企業減税などの穴埋めに使われてきたのにふざけるな、などという怒りの声が噴出し、雇用を破壊してきた経団連や自民党という支配構造を変えるために選挙に行こう、という動きもネットで広がっている。

 経団連といえば、特別会計がらみで利益を得ている問題もあるが、特別会計の問題などを追及する中で約20年前に殺害された当時の民主党の石井紘基氏が残した資料を、このたび鳩山友紀夫氏が入手し、精査が進められているという。注目の動きだ。(渡部睦美)

▼その週は、なぜかやたらと忙しかった。

 5月9日月曜日。午前10時から沖縄の問題をめぐりハンガーストライキを始めた元山仁士郎さんの取材で、首相官邸前へ。

 11日水曜日。岸田政権に関する内輪の勉強会に出た後、原発事故で東京電力旧経営陣の刑事責任を問う裁判控訴審に関する記者会見へ。昼メシ抜き。

 13日金曜日。福島第一原発事故の汚染水の海洋放出に向けた本格工事を阻止するため、福島県の市民団体が原子力規制委員会に申し入れるというので、衆議院第一議員会館の会議室へ。大手メディアは、見当たらない。申し入れ前の時間帯に参加者が自己紹介することになり、私も「えー、『週刊金曜日』の......」とご挨拶。

 それが終わるとそのまま小雨降る中、東京電力本社前でのスタンディングの取材。引き続き東電幹部への申し入れ。要請文を手渡す場面をカメラに収めたら、「報道の方はここまで」と部屋の外に。

 慌ただしかったが、人の切実な思いを感じた日々だった。それに応える記事を書くことができたかどうか。(佐藤和雄)

▼NATOに加盟申請したフィンランド。幸福度、教育、ジェンダー平等などトップクラスの国として有名だが、フィンランドと言えば「ムーミン」と思うのは、1969年から放映されたアニメで育った世代ゆえか。故・岸田今日子が主人公の声を演じたこともあって強く記憶に残る作品だが、原作者トーベ・ヤンソンに批判され、現在は、再放送もされないとか。

 理由は、戦争や暴力的場面などがあることで、平和を深く願うトーベらしい。第2次世界大戦下、フィンランドがソ連の侵攻で戦争に巻き込まれ、トーベは風刺画を通じて「男たちの戦争」への反対を表明。ムーミンの原型はその頃誕生したという(公式サイト、伝記より)。存命だったら軍事的中立からの転換をどう見ただろうか。

 好きなキャラクター、トゥーティッキ(おしゃまさん)に「ものごとって(......)あいまいなものよ。まさにそのことが、わたしを安心させるんだ」(『ムーミン谷の冬』)という言葉がある。敵・味方を峻別して軍事力拡大を図る今の自民党のような、物事を単純化する二分法は常に警戒し、優柔不断にみえる曖昧さにこそ、平和へのヒントを見出したい。(山村清二)

▼富士五湖の一つ、山中湖の桟橋でハクチョウに遭遇した。人に慣れているのか、自分から近寄ってくる。しまいには餌と間違え、靴をパクリ。つがいと思われるもう1羽は湖畔のボートの陰でタマゴを抱いて緊張した面持ちだ。この時期に毎年来るそうだが、ヘビなどがタマゴを狙う。うまくいけば夏前には雛が生まれるという。

 休みをとって、久しぶりに自然を満喫しに出かけた。と言っても1泊、しかもカバンのパソコンが重たい。気を取り直して夕食の準備をしていると、コテージのすぐ横に今度はシカが出没。薄暗いなか目をこらすと、4~5頭であちらも夕食のようだった。リスやイノシシもいるらしいが、イノシシにはあまり会いたくないな~。

 朝になると木々の間から、鳥の声。こんなところなら仕事も気持ちがいい。それならいっそのこと......、などとぼんやりしていたら桑田佳祐が同級生らに声をかけ、「次世代へのエールや平和のメッセージを届けたい」とチャリティー・ソングをリリースしたニュース。大好きな桑田さんの活躍に、私もそろそろ戻って、お仕事ガンバリマ~ス。(吉田亮子)