週刊金曜日 編集後記

1043号

▼戦争(安保関連)法案をめぐる動きが慌ただしい。自民党青年局が6月7日に全国で開いた街頭演説活動では、東京・JR新宿駅に立った谷垣禎一幹事長に対し、戦争法案に反対する聴衆から「帰れ」コールがおき、谷垣氏が「『帰れ』と叫ぶだけで平和は来ない」と反論する一幕があった。今の雰囲気がよくわかる。朝日新聞デジタルや時事通信などが伝えている。
 だが公式サイトでみると、NHKニュースは谷垣氏をアップにして戦争法案が「合憲」との演説を流しただけ。TBS系列が反対する聴衆も報道したのと対照的だ。『朝日』ですら8日朝刊(最終版)は、第二社会面で〈安保 街頭でも論戦〉と伝え、ヌルい“客観報道”にとどまった。
 4日の衆議院憲法審査会で、自民推薦を含めた3人の憲法学者全員が戦争法案は違憲との見解を示したことで“潮目”が変わってきているとも言われる。が、大メディアがこれでは批判の手を緩めるわけにはいかない。(伊田浩之)

▼周防正行監督は、法制審議会特別部会の一般有識者委員に選ばれた直後、親しくしている法曹関係者に委員会メンバーのリストを見せたところ、即座に「絶望的なメンバーですね」と言われたという。
 法制審議会に答申された最終案、そしてその最終案に賛成した周防監督たちに対する批判がある。では、どうしたらよかったのだろうか。
「警察の闇」シリーズを担当する編集部の成澤に尋ねてみた。すると、「自分だったら、理不尽な議論になったら、もちろん会議の途中で席を立つよ。そこで大暴れする」と答えた。あっ、でもそもそも成澤は委員には選ばれないな、と気付いたりもした。
 監督の葛藤の日々は『それでもボクは会議で闘う』に記録されている。インタビューでは今後も刑事司法が改革されるよう、提案していきたいと語っていた。理想はすぐには実現されない。それでも周防監督は闘いつづける。私も闘いたい。(赤岩友香)

▼漫画家の東村アキコになぜはまったかというと、『東京タラレバ娘』ではいつも酒を飲んでいて、なんかオレの30代の頃と似ているという理由以外に、新井見枝香(三省堂有楽町店)の「こじらせ系独身女子の新井ですが」という業界紙連載記事と、石坂啓・佐高信両氏が出た「金曜日文庫」の両方からこのコミックの話が出たということがある。
 この新井さんは業界では有名らしく、三省堂本店に行くと第2回新井賞なる手製のオビが『イノセント・デイズ』にまかれていたので、これもつい買ってしまった。東京堂に寄ると『映画横丁』という28ページの創刊雑誌に四方田犬彦が『血槍富士』を見たあとは酒を呑む気になれないと書いているので、では見たあと一番酒を飲んだのは何の映画だろうと思い巡らせ『最前線物語』に行き着いた。大塚名画座で『ガルシアの首』を見て、駅前の屋台で意を決し初めて日本酒をたのんだオレの「東京タラレバ息子」。(土井伸一郎)

▼朝、偶然、普段見ないテレビ番組で。最近話題の、子どもに迷子ヒモを付けるのはありかなしか討論。文化人?男性出演者が熱く、
「楽して子育てをしようとするな!うちは二人子どもがいるが妻はそんなもの使ってなかった」と全否定。肯定派の一人は独身・毒舌を売りにしている、私があまり好きではなかった女性タレントで、意外に思い一気に好感を持ってしまう。
 一分ぐらいしか見る時間はなかったので、討論がどうなったかを少し調べてみた。途中まで男性出演者三人が否定派だったが、一人が肯定派にかわったらしい(この人も、話を聞いて考えを変える柔軟性はいいなと思ってしまう)。
 手のあまりかからない子どもしか知らなければ、わからないのかもしれない。でも想像してほしい。いろんな子どもがいるんです。昔だって腰紐をつないでいた親子もいたというし、今は交通量も違う。安全のためなんです。(佐藤恵)