週刊金曜日 編集後記

736号

▼長年のテレビドラマファンだ。1クール終了し、新ドラマが始まると、ひと通り一回目は見てしまう。前クールでは「風のガーデン」が言うことなかった。でも、「これまで見てきたおれの時間返せこのやろー」となる作品も多い。

 この一月にスタートしたドラマの中では、「トライアングル」が早くも心配だ。これでもかとばかりにストーリーを複雑に錯綜させ、思わせブリブリなシーン満載。こんなに大風呂敷広げて、大丈夫なのか? 収拾つくのか? じゃあ見なきゃいいんだが、怖いもの見たさでまだ見ている。ここまでやるなら、最終回、見終わったあとにカンドーでしばらく立ち上がれないくらいの結末じゃないと承知しないぞこのやろー。

 それにしても山田太一さんの新ドラマ。脚本を何冊か持ってるくらい、その独特の世界が大好きだったけど、いま見ると……登場人物の台詞回しに「違和感」が拭えないのはなぜだろう。僕が変わったのか。それとも山田ワールドが「時代の空気とずれてしまった」のか。淋しいけど。(小長光哲郎)

▼フリーターユニオンふくおかの小野俊彦さんと、雨宮処凛本誌編集委員の対談収録のために福岡へ。小野さんとは「反戦と抵抗のフェスタ」でお会いしていたけど、事務所にうかがうのは初めてなのでドキドキ。知らないところに出かけるのは好きだけど、地図を回さないと読めない口なのでなにかとトラブルがあるのだ。事務所は、繁華街にある最寄り駅から七、八分という願ってもないロケーション。楽勝のはずが、近くまで来たところで、固く握りしめていたはずの地図が突然の強風でふわりと工事現場の柵の中に。柵は三メートルほどの高さで四方を厳重に取り囲んでいる。地図はみるみる間に穴の中に消えていった。ああ。

 対談は(私のへまとはかかわりなく!)想像通りスリリングで興味深いものだった。ユニオンのメンバーの方も集まってくれたので、いろんなエピソードも聞けた。

 撮影は、創刊直後にお世話になった福岡在住の写真家の方にお願いしたのだが、奇遇にも小野さんのドキュメンタリー番組を手がけていたことが判明。詳細は後日誌面で!(小林和子)

▼知人の子の隣のクラスがインフルエンザで学級閉鎖になったという。学級閉鎖になったクラスの子は学童保育に来てはいけないから、働く母親たちが慌てていると知人は言っていた。本人がかかってなくて元気でも、突然学校にも学童にも行ってはいけなくなったら、なかなか仕事を休みにくい親は困るだろう。学級閉鎖は急に決まるもの。そして何日も続く。

 聞いたところによると、学童によってそれはまちまちらしい。学級閉鎖になったから朝から開けなくては、という学童で働く方もいた。公立(最近は放課後児童クラブなどの名称らしい)の場合は自治体によって決まりが違うとのこと。ある市は行ってはいけなくて、ある市では行ってもいい。

 自宅待機になる学童でも、学級閉鎖になってないクラスの子は放課後行っていいわけで(毎朝一緒に登校する子だとか、兄弟がたとえインフルエンザにかかっていても)、そんなに感染性に違いがありますかねえ。学級閉鎖でも利用できる学童が隣の学区にあったら、疑問感じますよねえ。(佐藤恵)

▼誰かは待っていた(と思う)、恒例! 映画ベストテンの週がやってきました。ビデオ、DVDは除いて劇場のみ。今年も四七本と少なく一〇本はおこがましいのでベストファイブにしました。

 アメリカンニューシネマ育ちの私としては、去年は、なんといってもポール・ニューマンの死が思い出される。ポール兄さんは、高校の視聴覚教室の一環で観た『暴力脱獄』(小林悟先生、よくぞ見せてくれました)の衝撃的な出合い以来、僕を映画館通いにさせてしまったのだ。

 では順不同で、『アクロス・ザ・ユニバース』『女工哀歌』『ダークナイト』『その土曜日、7時58分』『トウキョウソナタ』。番外で、スコセッシはやはり撮ってくれるぜ『シャイン・ア・ライト』。

 そういえば『ノー・ディレクション・ホーム』で一九六五年のピート・シーガーが歌っていた「欲しいものは三カ月の仕事と九回の休み。昼は親方のもの、けど夜は俺のもの」。四五年後も変わらない。

 いまおすすめは、『チェ』(パート2のボリビア編がいい)と『小三治』。(土井伸一郎)