週刊金曜日 編集後記

1391号

▼岸田文雄首相は自身の後援会長が、統一教会関連団体の議長であるという『週刊文春』の報道を受け、「私自身は知り得る限り、旧統一教会との関係はない」と釈明したが、自身が知り得なくとも、結果的に統一教会と繋がっていたのは事実だ。無関係は通じない。さらに「旧統一教会に関連しているという認識が(後援会長に)なかった。すでにやめられたと聞いている」と説明したが、議長という立場で母体団体の実態を知らなかったという説明には無理がある。

 自ら個々の自民党議員には丁寧な説明を求めておきながら、当の本人がこれでは示しがつかない。

 自民党議員と統一教会、関わり方には濃淡あるが、議員は組織票ほしさに教団の関連イベントに出席し、祝電などの要請に応じる。そして教団は政治家の名前を免罪符に社会的な信用を獲得する。

 そしてこのようなズブズブの関係のうえに、霊感商法や高額献金などの被害者が生まれてきた。

 野党は統一教会問題を踏まえ、臨時国会の召集を要求した。首相は「安倍国葬」ではなく、早期の国会召集に応じ、関係性検証の議論を尽くすべきだ。(尹史承)

▼本誌に以前、「ハイエクから見る日本国憲法改正議論」などの記事執筆をされた金沢大学教授の仲正昌樹さんが統一教会の信者を11年半やっていたことは、今回の騒動で知った。自身の体験を『統一教会と私』(論創社)で書かれているというので遅ればせながら読んでみた。本をまとめたのは双風舎という出版社で12年の間、良書を多数送り出した谷川茂さんだった。

 左翼への嫌悪感は別にして、強い印象を抱いたのは、信者になる前も、信者の時代も、信者でなくなってからも、著者はなにひとつ変わっていないということ。共感力の欠如を疑うほどに冷めていて実利的、一方で自由を尊ぶところは終始一貫しているのだ。そういう人物が統一教会に居場所を求めるところがなんとも不思議なのだが、そこには格別のドラマはなく、淡々と入信し、淡々と脱会へと進む。これは特別なケースなのか、それとも人による濃淡の差の範囲内か。

 溜息が出たのは、自民党との癒着が批判された1992年の出来事が現在、再現されているかのように感じられたことだ。ほとぼりが冷めればまた......。(小林和子)

▼矢崎泰久さん、お元気でした! えっ、もう忘れた? 3カ月ほど前に「話の特集」を卒業された、ジャーナリストの矢崎泰久さんのことだ。入院の顛末は誌面で報告のとおりだが、退院後も一人暮らしに戻ったので案じていた。しかし、この日は歌が出るほどのお元気さ。8月18日に弁護士の山根二郎さんと「対論 言いたいことを言ってしまう!」が行なわれ、「合計174歳」の2人が世の中のおかしなことを言いまくった。

 そこで明かされた、おかしなことの一つに、矢崎さんの出生の秘密がある。矢崎さんは戸籍が二つあるそうで......。一つは1933年1月30日、ヒトラーが政権を握ったその日に生まれた矢崎さんの出生が届けられたもの。もう一つは2年後、母方の家を継ぐために別の名前で届けられたもの。しかし、その後弟が母方の家を継ぐことになり、......現在の矢崎さんになったという。しかも、美輪明宏さんが付けた名前もあるそうで、聞いてるこちらはもうよくわからない。とにかく「国葬」をはじめ、世の中をただしたい!のだ。(吉田亮子)

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