週刊金曜日 編集後記

1251号

▼今週から小林エリコさんの新連載「ロスジェネ 死線からの生還」が始まりました。小林さんは1977年生まれ、就職氷河期に就活を経験したロスジェネ世代です。
 2017年に刊行の『この地獄を生きるのだ』(イースト・プレス)では、ブラック企業に勤めたことから自殺を図り未遂、精神病院に入院、うつ病を患いながらも、生活保護を脱出した体験を心に迫る文章で綴り注目を集めました。
 現在の日本で、多くの人は断崖の横の狭い道を歩いており、一歩踏み外せば崖下に垂直落下する恐怖と隣り合わせです。小林さんの体験は他人ごとではないと感じます。今回の連載では小林さんの人生をグラフで表して頂いています。何度も落ち込みながらも最後は右肩上がりですのでご安心を。
 11月17日には小林さんの新刊『生きながら十代に葬られ』がイースト・プレス社から刊行されます。クラスメイトからのいじめ、親との衝突など、本誌連載のスタート地点である短大時代より前の"満たされない十代"のことが書かれた1冊とのこと、またきっと引き込まれて一気に読んでしまうだろうと、楽しみです。(志水邦江)

▼今週号から月に1回(月初号)「編集委員から」として、編集委員による編集後記、のようなものを掲載することになった。近況や今後の予定なども入れていただこうと思うので、直接会いたい読者はお出かけになってはいかが? と同時に、4月5日号で掲載した「編集委員制度について」を確認のために毎回載せていきます。
 先日は金沢21世紀美術館で9月23日まで行なわれていた「粟津潔 デザインになにができるか」展のプログラムで、崔善愛編集委員と本展企画監修者の粟津ケンさんによる「ピアノと言葉とデザインになにができるか」があった。粟津さんの作品を背景にした崔さんのピアノ演奏とケンさんによる粟津さんの言葉の朗読を聞いていると、作品がさらに迫力をもって訴えてきて、贅沢な時間だった。30年来の友人である崔さんとケンさんによるトークは、あらためて行ない、紹介したいと思う。
 私の次のたのしみと言えば、10月11日(金)~20日(日)まで東京・本多劇場(下北沢駅)で行なわれる「パパ、I LOVE YOU!」(加藤健一事務所、TEL・03・3557・0789)である。大爆笑間違いなし、です。(吉田亮子)

▼第1次夫婦別姓訴訟の原告団長だった塚本協子さんが9月14日に亡くなった。享年84。「私は塚本協子として逝きたい」と何度もおっしゃっていた塚本さん。2015年の最高裁判決後もお元気な姿を時折拝見していたので、突然のことに驚き、彼女が長年求め続けた選択的夫婦別姓制度が実現しないまま逝かれたことを残念に思う。ただ、塚本さんの思いは引き継がれ、現在、第2次夫婦別姓訴訟が東京や広島で数件起こされている。10月2日には東京地裁で判決があり、11月には東京地裁立川支部や広島地裁での判決が続く。本誌編集委員の想田和弘さんも原告の1人だが、想田さんは米国で結婚し別姓での法律婚が現地で認められているので、他の別姓訴訟とは別の「別姓確認訴訟」で、日本の選択的夫婦別姓を求めている。
 提訴には勇気がいる。お金も時間もかかる。それでも問題を提起する原告たちのおかげで社会は少しずつ変わっていく。今週号ではマタニティハラスメント訴訟を闘う原告が登場する。彼女も理不尽な扱いに声をあげた勇気ある1人だ。こちらも10月10日に判決予定。「判決の秋」である。(宮本有紀)

▼「上げるな」「上げなきゃダメだ」――。両論ある中での消費税増税、事前のご準備はバッチリでしたか? わが家はほしいもの、買わなければいけないものも特になく、増税対策として買ったのはトイレットペーパーと洗剤くらいですかね? あ、あとペットフード。
 大手スーパーやホームセンターなどにはキャッシュレス決済によるポイント還元がないかわりに、○○ペイや○○ポイントと連携した各種還元キャンペーンがさかんなので、そちらを利用したほうが得かなという判断もあります。
 ただ大手のチェーン店は大盤振る舞いのポイント還元ができますが、中小のお店はどうなるのでしょうか。わが家地方の商店街にも、今やどこでも目にする「PayPay使えます」のぼりがはたはたとはためいております。しかし、シャッター(目前)商店街でPayPay使う人がどれくらいいるのか、そもそもPayPayの意味がわかっているのか?
 消費税とペイとポイントはまったく別もの。切り離して考えなければいけないと思うのですが、そういう意見も出ず、ペイ合戦に巻き込まれつつある今日この頃かもしれません。(渡辺妙子)