週刊金曜日 編集後記

1209号

▼『新潮45』問題で「不買運動」も話題になったが、私は2013年から新潮社刊の本を新書店で買うことをやめている。きっかけは『週刊新潮』13年9月19日号の「骨肉の争いが美談に化けた『婚外子』最高裁判断の違和感」という記事。
 婚外子相続差別規定を撤廃へ導いた訴訟の原告側に対する事実ねじ曲げ(婚外子の母は父が前妻と離婚してから出会ったのに、夫妻の仲を引き裂いたかのような表現など)がひどくて名誉毀損にあたると思われたが、書かれた側は法的措置もとらず抗議もしなかった。ただ原告は「今後一生、私と母は新潮社の本は買いません」と静かに話した。そこに込められた深い悲しみと怒りに共感し、私も倣うことにした次第である。
 同記事は長谷川三千子氏の「"平等"という言葉。それを振り回すのはいい加減に止めたほうが良いと思います」というコメントを受け「社会のどこを切り取っても『完全な平等』などあり得ないのだから――」と結ばれている。差別を助長するような記事を放置しておいて『新潮45』のみ切り捨てても何の意味もない。(宮本有紀)

▼2014年8月の、日本軍「慰安婦」報道をめぐる『朝日』バッシングと共通する、マスメディアによる常軌を逸した集団的狂躁がまた始まった。違うのは、バッシングの対象が大法院の元徴用工に対する慰謝料請求訴訟判決に端を発した韓国であり、『朝日』が安倍と一緒にバッシングする側に回ったという点ぐらいか。前回の騒ぎは、「吉田証言」が日本軍「慰安婦」の事実究明においてどれほどの位置を占めていたのかについて初歩的知識もないメディア各社の社員の無知から生じた。今回は、07年の最高裁における西松建設中国人強制連行訴訟の判決も、国会での日韓請求権協定における個人請求権に関する外務省答弁も知らなげで、見当外れにも韓国政府に悪態をつく醜悪さだ。植民地支配に関連する責任問題になると、なぜこうした社員たちは猛々しくも事実を曲解したがるのか。元徴用工たちが流した涙がどういう意味を持っていたのかも知ろうとせず、平然と「解決済み」などというウソを広める彼らに、人間性の片鱗も感じられない。(成澤宗男)

▼我が家は、常備薬をほとんど置いていない。かつてテレビの報道番組で、スティーブンス・ジョンソン症候群(薬を飲んだり注射したりすることで生じる発疹で、薬の副作用の一種)の事を知り、以来、原則として薬(総合感冒薬など)は飲まないようにしている。
 先日、夜中に突然、歯が痛くなった。家に痛み止めの薬があればいいのだが、やはりなかった。夜中の2時ともなると、薬局も開いてないし、コンビニで痛み止めの薬を取り扱っているところをインターネットで調べたりもしたが家の近所にはないし、かなり焦った。このまま朝が来るまでガマンしなければならないのかと、絶望的な気持ちになったのだが、先日、足を捻挫したときにもらった痛み止めの薬を妻がたまたま持っていて、なんとか事なきを得た。
 朝一番にかかりつけの歯科に予約をいれて処置してもらったのだが、やはり薬だけではなく(地震や台風などの災害時も含め)緊急時に対応する「常備品」について、もう少しきちんと考えなければならないと、今回の歯痛から学んだのでした。(本田政昭)

▼8月31日号のこの欄で「どなたか『週刊金曜日』もしくは『金曜日』を題字風に書いたものを送っていただければ」と書かせていただいたところ、なんと送っていただけました。大垣市の少路恵美子さんありがとうございました。素敵な筆文字です。25周年記念集会の会場でご覧いただけなかった方も、公式サイトでご覧いただけます。Tシャツにと思っていたのですが、講演会用にはオリジナル9条Tシャツの作成が決定。うーん、なにか形にしたい。
 さて、10月からのドラマ「獣になれない私たち」松尾マスターの注ぐビールが美味しそうすぎ。なかなか進まないストーリーがさらにビールに向かわせます。ガッキーの上司の強烈パワハラ社長より「ハラスメントゲーム」の事例の方がありそうで背中がゾワゾワ。「獣...」と同じ野木亜紀子脚本の「フェイクニュース」は大騒動で暴露したスキャンダルにもかかわらず私腹を肥やす知事が再選した結末にかえって現実を感じてしまいました。「昭和元禄落語心中」岡田くんファイト!(志水邦江)