週刊金曜日 編集後記

1081号

▼今週号の対談でいとうせいこうさんは、「バンクシーの場合、『これはダサかったな』ってのがないんですよ。今までずっと」とも語っていた。同感。強烈な反権力の姿勢にユーモアをまぶすそのセンスもカッコいいが、大前提として「絵自体」が溜息出るほどカッコいい。かといって「アートだぞ」なんてお高くも止まらない。作品に上からスプレーされて「台無し」になっても、気にしない。「作品とはそれが社会に手渡されたときに他の人間がどういう風に反応するのかを含めて作品」で、バンクシーはその基本にも忠実だ、といとうさんは言う。「そんなのどっちでもかまわないっていうアートのあり方が、まさに壁画っぽい」とも。そこもまたカッコいい。
 今回は記事中の他、表紙にも作品を撮影した写真を使わせていただけた。異例だが、鈴木沓子さんの尽力あってのこと(なんせバンクシーにインタビューしたことがある方なのです)。あらためてお礼を申し上げます。(小長光哲郎)

▼高校時代、赤い布を目にした牛のように、「高校生のセイジカツドウ」と聞いただけでむやみに興奮し出す教員がいた。中にはデモに参加した生徒名を公安に通報していた猛者もいたが、あれから何十年経っても連中や役人の意識は変わっていないようだ。18歳に選挙権が与えられたと思ったら、教員のさじ加減で「セイジカツドウ」を禁止したり、届け出制にできるのだとか。どうせ名目は僕らの時代と同様、「教育」なのだろうが、「問題」行動の有無と、ペーパーテストの点数でしか人間を「評価」できない精神的に薄っぺらな公務員が、何の資格あって市民的権利の行使に口を挟めるのか。
 パリで仕事をしていた時分、「反極右」のデモにリセの若者たちが大挙して繰り出していたが、彼らが「セイジカツドウ」がどうのこうのと言われたという話題を知らない。本当に「教育」が必要なのは、「学校」を生業にしている大人たちなのだろう。(成澤宗男)

▼3月末、NHK「クローズアップ現代」の国谷裕子さん、TBS系「NEWS23」の岸井成格さん、テレビ朝日系「報道ステーション」の古館伊知郎さんが揃って降板。「報ステ」に至っては、中島岳志・東京工業大学教授、立野純二・『朝日新聞』論説副主幹、木村草太・首都大学東京准教授もコメンテーターを辞める。夏の参議院選挙に向け、テレビの"統制"ができたと安倍晋三首相は小躍りしているかもしれない。
 もちろん現役のテレビ局社員たちも黙ってはいない。覚悟の告発記事を収録した単行本『安倍政治と言論統制』を3月下旬に弊社から刊行した。『放送レポート』岩崎貞明編集長や本誌連載でおなじみのマイケル・ペンさんも寄稿。今週号の「新・政経外科」(38ページ)で紹介している通り、池上彰さんと佐高信の対談も必読だ。
 中野晃一・上智大学教授のお言葉を借りれば、テレビをはじめ日本社会全体が今、「すーっと静かに右にずれていく」。(赤岩友香)

▼今年も「インフルエンザについてのアンケート」の回答を保育園で求められた。市から(このアンケートを根拠に毎年)予防接種を勧められることには抵抗を感じる。エネルギーを他に使ってほしい。
 相変わらずインフルエンザワクチンの効果に関する質問の選択肢には、効果があると考える前提のもののみ。該当なしと記入。そして今季に罹患した子には、感染した経路として考えられるものは? という質問。家族からか、保育園内からか、外からか。園内感染が多いから予防接種し迷惑をかけないようにしようと誘導したいのか。
 昨年と同じくこのアンケートの話を書いてしまった。上の子の小学校の卒業式が素晴らしかった(校歌と卒業生作成の歌と自分たちが選んだ歌しか歌わず、壇上では旗などなく6年生全員がこちらを向き着席)話でもと思ったのに、今朝保育園で、「アンケート出してませんよ今書いて」と求められ、ふっとんでしまった。(佐藤恵)