週刊金曜日 編集後記

1054号

▼小雨を避けるためにデモでかぶっていた帽子を、国会近隣で落としてしまった。連れ合いが作ってくれたオリジナルバッジもつけていたのに。この人混みの中を戻る気にはなれない。途中知っている顔を見かけて、何人かに挨拶した。
 疲れて家に帰り着くと、友達の家に遊びに行っていた中学生の娘が戻っていて、宿題のラストスパート中。「へーえ、デモに行ってたの? ぼくも行きたかったな。屋台、たくさん出てた?」。
 イカ焼きを食べながら練り歩いているとでも思っているのか。脱原発デモに一緒に行ったとき、途中通りかかったお店でシュークリームを買って、食べながら歩いたからか。今回はそんなんじゃないよ、と苦笑すると。「あっそうか」「横断幕を下ろしなさい!」。
 今度は声の調子をさげて警察官のマネをする。「麻生邸リアリティツアー」(無許可デモ)に娘を連れて行ってたんだっけ。「ははは」と笑うしかない。
 抗議の声は届いていますか? 安倍さん! (小林和子) 

▼「写日記」連載中、松元ヒロさんソロライブ「ひとり立ち」のご案内を。
 9月21日から24日までの4日間4回公演です。各回15時開演(21日のみ17時)。場所は東京・新宿紀伊國屋ホール。チケットは、ぴあ・ローソンで発売中(3400円=全席指定)。問合せはサンライズプロモーション東京(0570・00・3337)まで。売り切れ間近ですが当日券も少し用意されます。
 本誌がヒロさんに独自取材した結果わかったことは、安倍首相の戦後70年談話に対しての鋭い突っ込みがあり、それにチャップリンの『独裁者』、さらにはヒトラーのちょび髭がからむという怪しい情報ですがそれだけに期待も膨らみます。「写日記59」で登場の洪成潭氏との出会いもネタ作りのエネルギーになったようです。
 佐高信さんと対話『安倍政権を笑い倒す』によるとヒロさんのような芸をドイツではカバレットと呼ぶらしい。日本にはない笑いのジャンルだ。カバレッティストの本領発揮である。 (土井伸一郎)

▼希望的願望?と言えなくもない「安倍首相の健康不安」報道。本当?と複雑な気持ちでそれを「喜ぶ」自分がいる。もし、それが連日の安保法制国会審議からくるストレスの蓄積結果だとしたら、自衛隊員の抱えている不安も今なら、誰よりも理解できるのではないかと思いたいのだ。
 今国会で明らかにされた、イラク戦争時、イラク特措法に基づいて派遣された自衛隊員のうち、在職中に29人が自殺した、という信じられない数字。「自衛隊の海外活動拡大に伴いPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する可能性はある」と認めた防衛相。首相は「国民の命と平和な暮らしを守り抜くため自衛隊員に負ってもらうもので、自衛隊員のリスクは残る」などと嘯いている場合ではない。いますぐ戦争法案を廃案にし、自衛隊員を不安から救い出す使命が首相にはある。PTSDという言葉はベトナム戦争を契機に生まれた。毎年250人以上のイラク・アフガン帰還兵が自殺している。 (柳百合子)

▼中堅取次会社である「栗田出版販売」が民事再生手続きを申請し、事実上の倒産をしたことは本誌7月10日号の「メディア一撃」で触れた。当社も小さい商いながら債権者となり、諸々の慣れない手続きに追われている。
 こうしたなか、個人的に懇意にしていた出版社がお盆前にひっそりと廃業していた。創業60年超の歴史をきざむ老舗だが、ベストセラーを出す訳でもない、ただコツコツと良書を出版することに意義を見いだす社員3人の版元が消えることなど最早日常だ。業界誌は取り上げず、ネット上でもまったく話題にならない。同社の営業担当者とは四半世紀に及ぶ付き合いの腐れ縁。彼と7月最後の週末に酒を酌み交わす機会があり、不況にあえぐ出版業界の行く末を憂い、輝いていた昔話で妙に盛り上がった。宴が終わり酒の勢いを借りてもう一軒のはしご酒に誘うが、少し悩んだ後、「明日も仕事だから」とまた会社に戻っていく。不覚にも私はいつもより饒舌な彼の胸の内を見抜けなかった 。(町田明穂)