週刊金曜日 編集後記

1051号

▼本誌7月17日号に掲載された岩本太郎氏のコラム「SEALDsの見解めぐりウェブ上で起きた批判と反論の応酬」について投書3件と電話1件、抗議文2通が届きました(8月3日現在)。批判の概略は「SEALDsが公式サイトに掲げた見解について問題点を指摘したことから起こった経過を誤って伝えている」「反論ではなく言葉の暴力的な使用による人権侵害であり、それを『応酬』と捉えると、人権侵害を助長しかねない」との内容です。一方、「ネット上での『週刊金曜日』批判には違和感がある」という指摘もありました。
[見解]日本が過去に犯した植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えたにもかかわらず、十分な清算を行なっていないことについて、本誌は具体的な問題に即して記事を掲載してきました。今後も戦争責任を追及する姿勢にいささかも変化はありません。
 筆者の岩本太郎氏は本誌の姿勢をよく理解しており、そのうえで最後はSEALDsメンバーの反省的なコメントと「建設的な議論が出てくることを望みます」という言葉で締めています。
 バッシングを受けられた方にとって「応酬」という表現に違和感があることは理解できますが、コラムでは「人権侵害」だとの批判があることも紹介しています。小誌はもとよりあらゆる差別に反対しており、それを助長する意図はありません。
 誌面上の制約からすべての記事について十分な分量を取れないこともありますが、誤読されにくい表現をより追求していきたいと考えております。

▼『この国の空』は戦争という時代を市民の視点から描いた映画だ。主演のお二人にインタビューをした日は奇しくも戦争法案が衆議院特別委員会で強行採決された翌日。今また市民が戦争に巻き込まれる危険性が高まっている。そのことを主演のお二人はどう思っているのか。沖縄県出身の二階堂ふみさんには基地問題についても尋ねた。
 二人が写真撮影で席を外したときに、スタッフが中村富美子さんと私のところにドッと駆け寄ってきた。「思想を問うような質問はしないでほしい。運動家ではないので」「二人には背負っているものがある」「デモをしてる人とは違う」「これ以上、インタビューを続けることは難しい」などと言われた。運動家でなければ思想は持っていないのか。デモをしている人たちには背負っているものはないのか。むしろその逆だ。
 意見がなければそれで構わない。「この質問はしてはいけない」と周りが決めることが、彼ら彼女らが自由に発言する機会を奪い、「思考停止」に陥らせてしまうのではないか。 (赤岩友香)

▼真夏の満員電車で幼子が泣いている。冷房は効かず、密集度は容赦ない。大事な約束や予定があり時間に追われている人。今、この場の圧迫状態が堪えがたく一秒でも早く解放されたいと願う人。幼子はそうした "切望"など意に介さず、ますます、声をあげて泣く。
「泣き声は単純に不快でしょ?」「舌打ちくらいいいんじゃないか」、(舌打ちによって幼子も)「泣いちゃ駄目ってこと身に沁みてわかる」、(親は子を)「甘やかしすぎ」。
 ホリエモンこと堀江貴文は以前、ツイッターでこう発言した。利用者との間で交わされた公共交通機関における「赤ちゃんの、泣き声対策の話」でのことだ。議論では、幼子に睡眠薬や睡眠導入剤を投与するという"対策" も提案された。
 一方で、「泣け泣け」「今はもう、泣いてもいい時代なんだから」と語るのはBEGINのボーカル、比嘉栄昇(『朝日新聞』14年6月17日の記事)だ。彼らのライブは、赤ちゃんも歓迎という。沖縄戦では敵にばれると大人たちが恐れ、ガマ(壕)で圧殺された子らもいた。比嘉の柔らかい言葉ひとつにも非戦への想いが宿る。 (内原英聡)