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日本で育ったクルド難民申請者、彼らの夢を誰がつぶしたのか
田中喜美子 日向史有|2021年9月9日11:58AM
日向 ラマザンについては、映画では、紆余曲折を経て専門学校に入学できたところまでを追っています。
実は、後日談ですが、最近、定住ビザを取れて、弟も留学ビザを取れたんです。「教育が自分たちの可能性を開く、ということをみんなに見せたい」とラマザンは考えてきたので、ラマザンがビザを取れたと聞いた時はとても嬉しかった。ただ、日本社会に受け入れられるには、どうしても日本人が思い描く「善良な外国人」であろうとしてしまう側面もあった。
たとえば映画の最初は、ラマザンとオザンがボウリングをするシーンですが、ラマザンは僕に、「遊んでていいんですかね、俺ら。撮ってもらうのが怖い」と言ってきた。「難民なのに遊んでいる」「遊ぶお金がある」と周りの日本人から見られてしまうかもしれないと。よき外国人の象徴でなければ日本社会に受け入れてもらえないという枷をラマザンは自分に課してしまっている。これは、結局は入管制度が彼に課した枷です。
田中 ラマザンと弟にビザが出たのは本当に良かった。ただ、両親と日本生まれの妹にはビザが出なかった。なぜ家族みんなでビザが取れないのかと、お母さんは悔しくて泣いたとお父さんに聞きました。法務省出入国在留管理庁(入管庁)にはガイドラインがあり(注2)、本来ならば家族全員に在留資格が出てもよかったんです。
日向 それでラマザンも手放しでは喜べていないようでした。ラマザンの家族は在留資格を求めて係争中でしたが、ビザは司法の力で得たものではなく、あくまでも裁判中に入管庁の裁量で出されたものなので(注3)、悔しい気持ちもあったのかもしれません。
(注2)2006年、「在留特別許可に係るガイドライン」。これは非正規滞在者や難民申請者に在留特別許可が付与される際に参考とされる基準として法務省がHPで公開しているものだ。しかし、法的拘束力がないということでその基準に縛られることはないと、法務省と出入国在留管理庁は主張し続けてきた。
(注3)難民不認定の取消や在留特別許可の不許可に対する異議申し立ての裁判の途中で、国が在留資格を与えるという措置をとるといったことは過去にも事例がある。