特集 東京スカイツリー異景  超巨大都市の夢  矢部 史郎

 日本の超高層建築は、通常の意味での建築ではない。地震国日本において超高層とは、最先端土木技術の結晶である。それはダムやトンネル、橋梁と並んで、日本経済がめざしてきた発展の夢を集約的に表現するものだ。地上634メートルの塔から地上を展望すれば、そこには鉄とガラスとコンクリートでくまなく埋め尽くされた都市の姿があらわれるだろう。これは世界でも稀な4000万人都市、未来の超巨大都市だ。 東京圏の雄大な都市の姿を、いま我々は複雑な感情とともに眺めている。ここから東北に220キロメートルの地点では、原子力発電所が崩壊し、放射能の蒸気を吐きだし、関東平野全域にセシウムの雨を降らせている。日本の発展を導く夢であり、希望であり、綱領であったものは、ある日あっけなく崩壊した。そうして一つの時代の終わりが告げられたとき、我々はその終わりを直視しないために、超高層タワーの夢にまどろんでいる。そこにもう未来がないことをわかりつつ、まだ夢から覚めたくないという気分が社会を覆っている。

●超高層タワーが町を活性化?「またそんな高いもの建てちゃって」 森 まゆみ五月二二日、開業を迎える東京スカイツリー。由緒ある地名にちなんだ「業平橋駅」は「とうきょうスカイツリー駅」に改名され、下町情緒も何もあったものじゃない。下町散策ブームのきっかけをつくった地域雑誌の元編集人が苦言を呈する。●散策地図”世界一” の電波塔、東京スカイツリーをもとめて、多くの人が訪れ、にぎわいを見せる新しい町の姿。一方、スカイツリーで変容する、もう一つの町の姿が、ある。隅田川沿いを歩いた。●”無用の長物”東京スカイツリーに想う高須基仁●『通天閣』が撃つ大阪の現在橋下は:ぼやき;を許さない対談 酒井隆史×平井玄東京スカイツリーは東京のシンボルをめざすが、大阪のシンボルと言えば、今も昔も通天閣。酒井隆史さんの『通天閣――新・日本資本主義発達史』(青土社)は、近代史において通天閣の周りで繰り広げられた大阪の多様性を明らかにするとともに、返す刀で「橋下徹現象」が何を「解体」しつつあるのかを逆に照射する。通天閣は(・・・・・・) 一番を争わない。(・・・・・・・)人をけ落とすことを人生の豊かさと勘違いしない。そういう在り方のシンボルだったと思います橋下の台頭には、大阪の衰退、大阪的な笑いの衰退を感じるんだよね。

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