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イタリアの環境保護活動家 モニカ・ゾッペさんインタビュー――脱原発、日本もできるはず

モニカ・ゾッペさん。イタリア国立研究機構の臨床生物学研究員。伊環境保護NGOレーガンビエンテやパグウォッシュ会議のメンバー。(撮影/齋藤ゆかり)

 昨年六月、脱原発派が圧勝したイタリアの国民投票は日本でも大きく報道された。「私たちにできたことが、広島、長崎、福島を経験した日本の人たちにできないはずはない」。そういう声もしばしば聞かれるイタリアから、一五日からの「脱原発世界会議2」で来日する環境保護活動家で生物学者のモニカ・ゾッペさんに話を聞いた。

――日本でも昨年から注目を集め始めた国民・住民投票だが、署名を多数集めても地方議会で却下にされる例が相次いでいる。イタリアのシステムはどんなもの?

 イタリアの国民投票は、既存の法律の廃止の是非を問うもの。まず有権者の署名を四〇万集めて申請し憲法裁判所の判断を仰ぐ。複雑な長いプロセスで、近年は投票率が五〇%を超えず無効になることが多かった。昨年は原発や水道サービス民営化などを対象に投票率は六〇%弱で、うち九四%が脱原発を求めた。

――福島の事故の影響は?

 確かにあったと思うけれど、脱原発自体は一九八七年の国民投票で決まっていたこと。今回はそれを反故にしようとする政治の動きに国民がノーと言った。

――一九八七年と言えば、チェルノブイリの事故の翌年?

 そう。前回も、国民投票への動きは事故以前からあった。日本ほどではないにせよ、イタリアは地震国で原発は危険すぎるから。チェルノブイリからの放射能で北伊にも農産物の出荷制限が出て、一般市民の関心と危機感が急速に高まった。折しも環境保護運動の開花期で、国民投票では八割が原発に反対した。

――この国民投票がイタリア社会にもたらした変化は?

 環境団体や市民グループによるキャンペーンが各地で大々的に繰り広げられ、人々の意識覚醒や情報拡散に著しく貢献した。今思えば、あそこで原発依存への道を断たれたおかげで、当時はまだ実用化されていなかった太陽光や地熱の開発が大いに加速したと言える。今の世界も、原子力推進に携わる優秀な頭脳が再生可能エネルギー開発のほうに捧げられていれば、もっと飛躍的な進歩が遂げられるのにと思わずにはいられない。

――以後、脱原発は順調に?

 順調という言葉は、残念ながら、いったん原子力を採用した国には使えない。イタリアも然り。二〇〇三年には、南伊のスカンツァーノ・イオニコに核廃棄物保管所の建設計画が浮上、女たちを中心に激しい住民反対運動が起こって中止に追い込んだ。でも、廃炉から二五年たつのに恒久的保管場所は未定のまま。原発が四基しかなかったイタリアでさえ、このように問題はきわめて深刻である。

――イタリアが脱原発できたのは、原発大国フランスから安価な電力が買えるからという主張もあるが。

 イタリアが買っているのは、フランスが叩き売りせずにはいられない余剰電力。電力が足りないから買うのではなくて、原発で作りすぎになるから消費せざるを得ない本末転倒の構造だ。

――脱原発を選んだイタリアと原発依存度世界一のフランスは、隣国なのに、かなり違う?

 フランスは、原発国民投票の経験がないのでは? どの程度情報が国民に公開されているのかも疑問だ。半世紀以上も解決できる、できると言いながら、まだ安全な保管方法が見つかっていない核廃棄物や、放射能被害がもたらす経済的損失を考えればなおさら、原子力がもはや何の利点もない選択であることは明らか。加えて、原発には軍事利用の意図がつきまとう。広島、長崎の悲惨な体験をもつ日本は、この点でも脱原発を切望して当然だと思う。

 フランス人と国民性が違うのかどうかはわからないが、私たちイタリア人は、あるもので満足する傾向が強いのかもしれない。でも、それでイタリアの生活水準が低いかというと、そんなことはない。

 たった一つしかない地球の有限な資源をいかに平等、有効に利用し将来に残していくか、一人ひとりが、そして人類全体が真剣に模索していく以外に道はないと思う。

(聞き手/齋藤ゆかり・在イタリア翻訳家、12月14日号)

再開発推進に転じた明石市長――住民投票求め署名

 橋下徹大阪市長と司法修習同期という弁護士出身の泉房穂氏(元衆議院議員)が市長の兵庫県明石市で、駅前再開発をめぐって「市の独走を許さず、大事なことはみんなで決めよう」と、住民投票条例の制定を求める署名運動が熱を帯びている。

 同市長は、昨年四月の統一地方選挙で、市民団体が掲げる「再開発見直し」などの“市民マニフェスト”を支持。「税金の無駄遣いの象徴」と訴えて、六九票の僅差で当選したが、その後、若干の修正を加えて開発推進に転じたことから、「街の活性化に逆行し、住民自治にも反する」として、市民の反発を招いていた。

 市民みんなで決める住民投票を実現する会(略称=駅前再開発・住民投票の会)によると、この計画は、ダイエー明石店の閉鎖に代わる商業施設の再開を目指して構想されたが、「民間再開発事業」とはいえ、総事業費二六六億円のうち約八三%の二二〇億円が税金。国や県・市の補助金に加えて、買い手のつかない保留床を市が買い取るなど、計画づくりから資金・人も含めて事実上、行政丸抱えの“公共事業”だ。

 三四階建ての超高層マンション(約二〇〇戸)と六階建ての再開発ビルが売りだが、市が買い取って上層階(四~六階)に入る行政施設や図書館が、「集客につながらないのは明らか」と商業関係者は怒る。

 剣豪・宮本武蔵が設計したといわれ、戦災でも生き残った城下町・明石だけに、「歴史と文化にマッチし、明石らしい環境を活かした生活産業都市」「市民の声が生きる分権・自治のまちづくり」が市民団体の主張だ。

 明石市の人口は約二九万人。住民投票条例の直接請求は有権者二三万人の五〇分の一で可能だが、駅前再開発・住民投票の会では「市議二〇人が当選可能な五万筆以上」を目指す。九月一〇日の中間集約で、署名を集める受任者一二二六人。すでに署名は法定数を大きく超え、「明石燃ゆ。最終日の二四日に五万筆達成は確実」(松本誠筆頭代表)で、選挙管理委員会を経て市長、市議会へと提出され、可決されれば来年一月~二月ごろ、投票実施の見通しだ。

(たどころあきはる・ジャーナリスト、9月21日号)

【田中優子の風速計】 猿の惑星を作ろう

 原発稼働の是非を問う住民投票を行なうための条例案が、東京都議会に提出される可能性が出てきた。必要な数の署名が集まる見通しになったからだ。そこで二月一〇日の知事会見で出た石原慎太郎の「サル」発言が俄然注目を浴びている。「そんなもん条例作れるわけないでしょ。作るつもりもないよね」から始まって、「原発に反対するのはサルと同じだ……これは結局人間の進歩というのを認めないまま、人間がサルに戻る事です」と。この……の間では、ストーカー殺人の事例を挙げて意味不明の事を言い、つまり「人間はセンチメントであってはいけない」と主張しているようなのだが、論理が破綻していて要約できない。

 このサル発言に対し「俺たちはサルじゃない」という反発もある。しかし私はサルで結構。「抜群にセンチメント(情緒豊か)な猿の惑星を作ろうぜ!」と呼びかけたい。ところでサルの件は石原の言葉ではない。この人は、責任はそちらに行くように他人の言葉を利用してコメントする人なのだ。今度は吉本隆明が利用された。

『週刊新潮』二〇一二年一月五・一二日号に出たインタビューで、要約すると「文明の発達とは失敗と再挑戦の繰り返し」「我々が今すべきは原発を止めることではなく完璧に近いほどの放射線防御策を講じること」という意味のことを吉本隆明は言った。その中で、脱原発は「人間が猿から別れて発達し今日まで行なってきた営みを否定すること」というサル発言が出てき、これが石原の気に入ったようだ。これで脱原発を主張する人は全員サル、ということになった。めでたい。「猿の革命」はもうすぐだ。

 しかし年をとるとはこういうことなのかと、私はそちらが怖くなった。覚え込んだいくつかの言葉、たとえば「科学」「進歩」「文明」に固執しそれを繰り返すのは、思考力が無くなっているからだ。起こった事態に面と向かい新しい対応を模索する、という頭脳の弾力が無い。「バカの一つ覚え」とはこのことである。昔のことは覚えているが最近のことは忘れる、という高齢者の病も疑われる。

 原発賛成派は、新しい現実を受け容れられず発想の転換ができない立派な「人間」である。今回のサル事件は、還暦を迎えた私への、そういう年の取り方をするな、という警告と受け取った。せっかく還暦なのだから、サルまで戻ることにする。

(3月2日号)

東京都、大阪市などで署名活動開始――目標は原発賛否問う住民投票

 原発行政の是非を国民投票で決めようと活動してきた市民グループ「みんなで決めよう『原発』国民投票」が、電力の大消費地である都心部のうち、東京都、大阪市、静岡県で、原発の賛否を問う住民投票条例制定に向けた直接請求の準備を始めた。

 これまで原発問題は、主に立地候補に挙げられた自治体で受け入れ賛成か反対か、という議論がされてきた。しかし、「原発問題は電力を消費する側の問題でもある」という、同グループ事務局長の_井一さんが中心になり、人口が多く経済活動が活発な場所で原発行政の是非を問おうとなった。

 ちなみに東京都は東京電力の、大阪市は関西電力の大株主だ。

 地方自治法は、有権者の五〇分の一以上の署名で代表者から長に対し条例の制定の請求をし、これを受けて首長は議会に条例案を提出しなければならないと定めている。この数字は、東京都でいえば約二一万四〇〇〇人分の署名で、石原慎太郎都知事が議会に条例案を提出しなければならなくなるが、議会の可決も必要になるので、実現への壁は高い。

 原発をめぐる住民投票は、原発設置のための町有地売却の是非を問う投票が新潟県巻町(現新潟市)で、東京電力プルサーマル導入の是非を問う投票が同県刈羽村などで実施されてきた。

 同グループは一〇、一一月の二カ月の間に十数人の請求代表人を固め、三地域とも一二月一日に署名収集をスタートする方針だ。

 都民投票の代表者には俳優の山本太郎さんや映画監督の小林聖太郎さん、カタログハウス社の斎藤駿さんらが就任の意思を固めた。

 山本さんは、「福島で作ったエネルギーは東京で消費していた。その意味で、東京都民には責任がある。住民投票をやれたとしても勝てるかどうかは分からない。でも住民投票によって、これまで関心がなかった人に原発被災者への思いが出てくるかもしれない」と、東京都でやる意義を語った。 

 _井事務局長は「東京、大阪の有権者はもちろん、他府県の人でも“サポーター”として、さまざまな形で署名収集の手伝いをしていただけます。みなさん、ぜひ一緒にスクラムを組みましょう」と呼びかけている。同グループ問合せ先403・3200・9115

(野中大樹・編集部、10月7日号)

制度の根幹を揺さぶる国立市――住基ネット問う住民投票

 住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)への再接続の可否をめぐり、住民投票の実施を定める条例制定を求めるシンポジウムが九月二日、東京都国立市で開かれた。

 国立市は、二〇〇二年八月に稼働した住基ネットにいったんは参加したが、個人情報保護とセキュリティ上の懸念から同年一二月に離脱。現在、福島県矢祭町とともに住基ネットに参加していない。

 今年四月の市長選挙では、住基ネットの再接続を訴えた佐藤一夫氏が初当選。〇九年には、住基ネットに接続していないのは違法として市を被告として住民訴訟が起こされている。

 今年二月には東京地裁が、住基ネットのサポート委託料についての支出差し止め、並びに当時の関口博市長に対し三九万八〇四〇円の賠償金支払いを命じた。佐藤市長はこの裁判の控訴を取り下げた上で、来年二月を目処に接続することを表明している。

 政府は今年六月に、「社会保障と税の一体改革」を名目とした共通番号制度の大綱を決定し、秋の国会提出を目指している。社会保障情報や納税者情報などが、共通番号にリンクされ、全国民・外国人の所在を特定できる住基番号が想定されている。

 シンポでは、関口氏が共通番号制度の下での民間開放で、預金通帳や個人情報が第三者にもれ、収入や病歴がデジタルデータとして残ることで、「やり直しのきかない社会」に陥る危険性を指摘した。

 国立市は、東京都から地方自治法に基づく勧告と二度の是正要求を受けていたが、関口前市長は切断の継続を表明してきた。

 共通番号制度では、水も漏らさぬ住民把握を運用の前提としているため、離脱自治体の存在は住基ネット以上に制度の帰趨を左右する。住民投票の運動は一一月に一カ月で一二〇〇人以上の有権者の署名を集め一二月に提出、来年一月の臨時議会で議員の過半数を得ることを目指す。国立市の住民投票で住基ネット切断が支持されれば、共通番号制度の運用はいっそう困難になる。

(宗像充・ジャーナリスト、9月16日号)

「原発」国民投票へ向けセミナー始まる

「原発」国民投票に賛同する声が徐々に増えている。そんな中、東京都千代田区のYMCAアジア青少年センターで8月20日、「みんなで決めよう『原発』国民投票」セミナーが開かれ、事務局長の今井一氏が講演、参加者と議論を交えた。

「主権者の議論が生命線」と話す今井氏(写真/野中大樹)

 今井氏は最近上梓した著書『「原発」国民投票』(集英社)で「原発」住民投票が実際に行なわれた新潟県巻町や刈羽村、三重県海山町の例を紹介。セミナーではこうした前例を参考に、国民投票の意義や課題について話し合われた。

 国民投票の前に情報公開や国民的議論が必要だという意見が上がっていることについて今井氏は、「順番が逆。3・11以後、政府や東京電力は情報を隠し続けている」とした上で、「巻町でも刈羽村でも海山町でも、住民投票前は多くの人が確かな情報を掴めずにいた。住民投票を実施することで情報公開が進み、嘘が暴かれ、議論が深まった。関心がなかった人たちが関心を持ち、勉強をするようになった」と、現地取材の体験談を語った。

 総選挙で決めるべき、という意見については、「次の民主党代表(首相)候補にあがる人物に脱原発派はゼロ」とぶち上げ、「総選挙において、原発政策への態度を明確にする候補者は少数」と、問題点を指摘した。

 今後のセミナーや会議の詳細は http://kokumintohyo.com/

(野中大樹・編集部、8月26日号)