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東海第二原発再稼働に反対集会 
住民投票で問う動きも 茨城県

崎山勝功|2018年10月17日10:57AM

9月30日、茨城県東海村での「東海第二原発の再稼働反対」デモ行進。(撮影/崎山勝功)

1999年9月30日に茨城県東海村の核燃料加工会社「JCO」で発生した臨界事故から19年を迎えた9月29・30両日、同村内では脱原発を掲げる市民団体の集会が相次いで催され、同村にある日本原子力発電(日本原電)東海第二原発の再稼働に反対する訴えが相次いだ。

このうち、30日に同村の真崎コミュニティセンターで開かれた「JCO臨界事故19周年集会」(茨城平和擁護県民会議など6団体主催)では、被曝した故・大泉昭一さん(11年2月死去)・恵子さん(18年1月死去)夫妻の長男、大泉実成さんが、約250人の参加者を前に「東海第二を再稼働させることは非常にむちゃくちゃ。(東海第二原発の)廃炉を願わずにはいられない」と訴えた。

事故現場近くで被曝した故・大泉夫妻は、JCOと親会社の住友金属鉱山を相手取り02年9月に訴訟を起こしたが、10年5月に最高裁が上告を棄却し敗訴した。同事故ではJCO社員2人が死亡、市民ら667人が被曝するなど、東京電力福島第一原発事故発生前では「国内最悪の原子力事故」だった。

集会では、「日本原電は危険な東海第二原発の再稼働をするな」などのアピールを採択し、同センターからJR東海駅東口入口交差点までの約2・6キロの村内を雨の中デモ行進した。

集会に参加した茨城県原爆被爆者協議会(茨被協)の茂木貞夫副会長兼事務局長(85歳)=水戸市=は「小学校6年生のときに広島で被爆した。放射能の事故で犠牲になることはなくしてほしい」と語った。デモ行進に参加した茂木さんは「歩けるうち、声が出るうちに頑張りたい」と強い意志を見せた。

29日には同村の東海村産業・情報プラザでも「JCO臨界事故を忘れない『9・30茨城集会』」(同実行委員会主催)が開かれ、集会参加者によると約160人が集まった。

くしくも26日には原子力規制委員会が同原発への新規制基準適合を決めたが、実際に再稼働させるためには同原発の可燃性ケーブルの防火対策を含む大規模な補修工事が必要。原電側は再稼働を工事終了後の21年頃に見込んでいる。

【県民投票条例の学習会】

30日の集会には県内44市町村のうち東海村や水戸市など31市町村長がメッセージや祝電を寄せた。集会で講演した海渡雄一弁護士は「この地方(茨城県)の地方自治体の取り組みが素晴らしい」と高く評価した。「脱原発をめざす首長会議」会員の県内の現職首長は中島栄・美浦村長など計5人だが、それを上回る数の首長がメッセージを寄せた背景には「福島第一原発事故で都市計画がめちゃくちゃになった」との思いがある。牛久市など県南6市町村は「稲敷地区6市町村放射能対策協議会」を組織し、東京電力に対して福島第一原発事故の損害賠償請求を11年から毎年行なっている。

また県南地域にはホットスポットが点在することから、住民の脱原発への意識も高く、9月16日につくば市内で開かれた県民投票の学習会「原発県民投票について考えよう」(原発県民投票を考える会@茨城主催)には約40人が参加。同会の代表世話人を務める宇野信子・つくば市議によると、今年7月に結城市で初開催以来、県内6カ所で学習会を開いたが、参加者数が一番多かったという。

学習会では、茨城県ではまだ制定されていない住民投票条例を市民の手で制定させる「条例制定の直接請求」の説明が行なわれた。

同会では「茨城県で原発住民投票の直接請求を行なうことは、お任せ民主主義を脱出し、自分たちの社会に対し責任を持って考え、行動する茨城県民になるための最大のチャンス」と説き、住民投票を通じて東海第二原発の再稼働の是非を市民に問いかける。

(崎山勝功・「NEWSつくば」ライター、2018年10月5日号)

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