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ハンセン病回復者と地域で住まう選択(下) 「隠さなければ生きられない」社会の壁は今も

大月えり奈・ルポライター、カメラマン、社会福祉士|2025年12月16日4:23PM

医療や介護で対応の遅れが

 社会復帰をした人が最も多いのが沖縄県だ。25年5月1日時点で全国の給与金受給者のうち、約半数(403人)を占める。地上戦があった沖縄では栄養面や衛生面の改善が遅れ、発症者が療養所の定員を大幅に超えたことから、軽快退所と在宅治療が進められた経緯がある。

 沖縄愛楽園では過去10年間(25年3月末まで)で13人が再入所をした。「高齢化で身体機能に支障をきたし、介助が必要になり再入所をする人が多い」(沖縄愛楽園福祉課)

 地域の支援機関として、診療所を備えた「沖縄県ゆうな協会」(協会)があるが、回復者らは対応の遅れについて改善を求めてきた。近年ソーシャルワーカーが配置され、生活支援事業を開始するなどの対策が始まった。

 医療や介護をはじめ、課題は山積みだ。たとえばハンセン病特有の後遺症(末梢神経障害による知覚麻痺など)に伴う生活のしづらさが要介護度に反映されにくいという問題がある。要介護認定の際の主治医意見書を、回復者の生活実態を踏まえ、専門知識に基づき記載できる医師が求められてきた。協会の要請を受け、8月から月に一度、沖縄まで邑久光明園の青木園長が通って診療する体制が始まった。

 その中で見えたのは、ほとんどの人が病歴を周囲に伏せていることだという。

「後遺症を協会の診療所以外のどこで診てもらえば良いか分からないという声がある。沖縄愛楽園でも受診ができるが、身内から通うことを止められる人もいる。内科や外科など他の疾患も含め、どこでも不安なくかかれるのが一番だ。だがそこに至るまでの道のりは長い。医療機関側から〝安心して来てほしい〟と働きかけることが大切だ」

 こうした姿勢は特別養護老人ホームなどにも言えるという。滞在中に医療機関や介護施設を訪ねて協力を呼びかけている。

 また協会でソーシャルワーカーを務める樋口美智子さんはこう語る。「地域のどこにどのようなニーズを持つ人がいるか把握をし、意思決定支援を必要とする人が話をできる場を設けなければならない。地域には回復者同士のネットワークもあると聞くので、協⼒を得ながら個別の相談につなげたい」

「らい予防法」違憲国家賠償訴訟勝訴記念の碑。2001年の熊本地裁での原告勝訴の翌年、邑久光明園の入所者有志により建立された。(撮影/大月えり奈)

「気付くこと」が共生への一歩に

 回復者が抱える苦しみは表れにくいが、支援者の言葉を通して見える姿がある。〝ハンセン病問題はもう終わった〟という言葉を耳にするたびに、今この瞬間も葛藤の中にいる人たちを思わずにはいられない。地域で暮らす一人ひとりが「何か気付けることがあるかもしれない」と考えることが、誰もが安心して生きられる世の中への一歩ではないか。

(『週刊金曜日』2025年10月17日号)

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