週刊金曜日 編集後記

1523号

▼5月16日号の「映画『摩文仁 mabuni』新田義貴監督に聞く もっと小さな主語で語ろう」は、沖縄の方々と旧日本軍関係者との対立を乗り越え、相互理解につなげたいという監督の思いを聞き手・松村洋さんが引き出しました。市民同士の分断は為政者に都合がよく、安倍やトランプは分断をあおりました。その手に乗ってはいけません。

 今週号は「失われた『暇』を求めて 哲学の冒険 『手段からの解放』著者・國分功一郎さんに聞く」を担当しました。コスパ、タイパ、AI、安倍、トランプ、ウクライナ、台湾有事といったトピックを果敢に語り合う哲学者・國分さんと聞き手・高原到さん。気になる話題ばかり。終始、前のめりでお二人の話を聞いていました。

 入社から3カ月。編集部のある日本橋浜町と隣の人形町は、タワーマンションや高層オフィスビルが少なく、そのことがこんなにも心地良いのかと日々感じています。隅田川は、編集部から歩いて2分。通過する舟を眺めながら、土手の上で趣味の鍵盤ハーモニカを練習しています。頭上の首都高速に反響し、音色は少しだけ柔らかくなります。岸の向こうには東京スカイツリーが現れます。多くの人やものから力をもらい、良い誌面を作るよう尽力します。(鎌田浩昭)

▼俳優の山谷初男(はっぽん)さんは、85歳で亡くなるまで健啖家でした。コメどころ秋田(角館)出身なだけに、おにぎりが大好きでしたが、肉や魚もよく食べました。

 金守珍さんが代表を務める劇団・新宿梁山泊の舞台に数十年ぶりに客演したとき、近いからと妻の伯父夫妻がやっている町中華店に連れ出しました。餃子、から揚げ、炒め物などの料理を一通り堪能したあと、はっぽんさんが締めで頼んだのが野菜たっぷりのタンメン。それも一人でペロリと平らげました。池袋の劇場でたまたまバッタリ出会ったときも、伯父の中華店にお連れしました。その日も、最後はタンメンでした。

 実家の角館はっぽん館に帰るとき、「なかなか会えなくなるから、中華をごちそうするね」と言われ、最寄り駅で待ち合わせしました。大俳優ですから、高級中華かなと想像していたのですが、連れて行ってもらったのがチェーン店の中華食堂。店の常連らしく、店員さんが「あらっ」と迎えてくれました。こちらでもタンメンを美味しそうに食べていました。

 いま、私も中華店に入ると、はっぽんさんを偲びながらタンメンを注文するようになりました。「言葉の広場」7月のテーマは「『麺』考」です。(秋山晴康)

▼はじめまして。今年4月から、編集部でひっそりと働いています。渡部翔太です。『週刊金曜日』の魅力は、読者会だと思います。大学時代、演劇サークルに入っていたのですが、その時の熱量と似たものを読者会に感じます。

 担当者に聞くと、北海道から九州まで約40もの読者会があるようです。今号の「読者会から」を読むと関門・北九州読者会では今話題の「コメ問題」をテーマに農業から交通の問題まで話し合われ、あいち読者会では介護問題をめぐる議論から生存権の保障まで幅広く意見が交わされたようです。

 私は1991年生まれ。ネットで気軽につながれる人間関係に疲れ果てている私たちの世代では、あまり見られない活動です。4月4日号で「読者会から」の欄から本誌を読むという方がいました。全国の読者会でどんな話がされているのか、関心があるとのこと。一度全国版の読者会を開いてもよいかもしれません。

 厳しくも優しい皆様と一緒に私も頑張ります。それでは、また。(渡部翔太)