週刊金曜日公式ブログ 週刊金曜日ニュース

『石原慎太郎への弔辞』の追伸(佐高信)

2012年2月24日号の『週刊金曜日』アンテナ欄に「瓦礫処理事業を受注する鹿島建設役員に石原知事元秘書」というニュースが載っている。その記事によれば、瓦礫処理について石原は会見で不思議なほど積極姿勢を示し、
「反対する人には黙れ、と言えばいい」
と豪語したとか。

瓦礫処理は鹿島を中心とする大手ゼネコン9社が約2000億円で受注したが、その鹿島には常務執行役員(現専務執行役員)で石原の元公設第一秘書である栗原俊記がいた。この名に覚えのある人も少なくないだろう。1983年の衆議院議員選挙で石原の対立候補の新井将敬の選挙ポスターに、「(昭和)41年北朝鮮から帰化」とシールを貼って公職選挙法違反に問われた事件を主導した人物である。

この時、石原は、
「秘書が勝手にやった」
と、いつもの手で逃げた。

日本一の無責任男である石原の責任転嫁の数々については、拙著『石原慎太郎への弔辞』(KKベストブック)で詳述したので、そちらを参照してほしいが、石原を批判すると、かつては、こんな手紙が舞い込んだ。2000年頃、石原の差別的な「三国人」発言が問題になった時である。当時、私は、作家の宮崎学や人材育成コンサルタントの辛淑玉と共に石原批判の運動を展開していた。

「佐高信 オマエは今すぐにくたばれ 石原知事を選んだ日本人をぶじょくしたな 三国人と言われて おこるのは朝鮮人か、シナ人だからな オマエのようなこの世に必要のねぇカスに 日本人をナメられて だまっていねぇからな
コラ、朝鮮人、いい子ちゃんぶってるんじゃねえよ
オマエの朝鮮顔見てるとヘドが出るんだよ 正義の味方か オマエは 知事にやめろと言う前に この世の中に必要のねぇ佐高、オマエが死ねや
にせ五〇〇円 貴金属荒し強盗 佐高 オマエが被害にあった事がねぇから言えるんだよな
パチンコ荒し 殺人 三国人の犯罪の多さにワシら人間はムカついているんだよ
佐高 オマエが被害者に保障してくれるのか 死んだ日本人を生き返らせてくれるのか
それができねぇんだったらとぼけた事いってるんじゃねぇよ
佐高は朝鮮人だろうが シナ人だろうが どうでもいいんだよ
ようするに 日本人は一日も早く佐高が地獄に行ってほしいとねがってるんだよ たのむから死んでくれや」

臆面もなくテレビに顔を出す猪瀬直樹

この人たちは、いま、ようやく明らかになりつつある“石原慎太郎の犯罪”にはどう思っているのか?

豊洲移転が問題になっている築地市場は、そもそも、銀座の隣の築地市場を移転させて跡地を利権にしようと考えた奴らのもくろみが出発点だった。それで、東京ガスが市場には無理だと拒否するのを強引に説き伏せて、知事の石原と、のちに副知事にまでなる腹心の浜渦武生が移転を強行決定する。

そこで、冒頭の鹿島と石原の関係がクローズアップされるのである。

ちなみに、森喜朗とべったり、いや、森がべったりなのが大成建設だとか。

拙著では石原の「橋下徹と組み、猪瀬直樹を後継指名した罪」も追及したが、不思議でならないのは、徳洲会からの5000万円問題で都知事をやめ、公民権停止となった猪瀬が臆面もなくテレビに顔を出していることである。

公の席に顔を出せる身かと私などは思うが、猪瀬も石原と似た体質なのだろう。
(さたか まこと・評論家、2月3日号)

獲物にみせる余裕な態度──カナダ=エスキモー4(本多勝一)

3人のエスキモーたちは、広大な雪面をはうようにしてカリブーたちに近づく。カメラを抱いて後を追うのは写真記者の藤木高嶺氏。

だがしかし、カリブーの一群を見つけたからと、すぐ追撃を始めるのは「エスキモー流」の態度ではない。獲物がリッパならリッパなほど、余裕のあるところを示さないと。まずはタバコ。次は雪をとかしてお茶だ。またタバコ。

3台のソリが追跡を始めたのは1時間あとだった。小高い丘から盆地状の低地へと、エスキモーたちは声をひそめるわけでもなく、いつものように犬をりつける。

突然、先頭のイスマタの犬ゾリが視野から消えてしまった。驚いて近づくと、10メートルほどの崖から墜落して、ソリが逆立ちしている。空と地平とが白一色で区別できないから、こんなことも起きる。イスマタは大笑いしながらソリを直し、そのまま走りだす。つづく2台は遠まわりして崖を避ける。崖のふちに、カリブーの足跡が点々と続く。

いったい、どの方角へ走っているのか。もはや磁針は北をささない。北磁極(磁石の示す北極)が、ここから僅か800キロメートルほど北西にあるためだ。その角度からすると、およそ東北東に進んでいる。

北磁極は、1831年にJ=C=ロスが発見した当時、ブーシア半島南西部の陸上にあったが、現在(1963年)は実際の北極から1600キロメートル南だ。年に8キロメートル(当時)ほど移動する。(敬称略)

(ほんだ かついち・『週刊金曜日』編集委員)

※この記事は現在、本多編集委員がかつての取材をもとに『週刊金曜日』に毎週連載しているものです。カナダ=エスキモーの連載は1963年に『朝日新聞』に掲載され、後に単行本や文庫本にまとめられています。

日本政府・社会の異様しめす山城博治さんの長期勾留(黒島美奈子)

1月16日朝、山田親幸さん(83歳)から予期せぬ電話があった。「正午に那覇地裁前に行くから君も来ないか」と言う。名護市辺野古や東村高江での新基地建設・ヘリパッド建設への抗議活動を巡り逮捕された沖縄平和運動センター議長・山城博治さんが勾留されて3カ月を迎える。異議を示すため、何人かが声を掛け合い、裁判所前に集まるという。

沖縄県視覚障害者福祉協会会長の山田さんは、先天性の強度弱視で高校卒業ごろに視力を失った。県立盲学校の教師を務め、沖縄がまだ米軍統治下だった1960年代、沖縄県高等学校障害児学校教職員組合(高教組)の創立(67年7月)にかかわった。同じく創立メンバーの1人、元参院議員の山内徳信さん(81歳)からの連絡で、裁判所前に駆け付けたのだった。

山城さんは、山内さんの出身校の後輩だ。「勾留はあまりに理不尽。かつての同級生たちと何かできないか話した」という。それが釈放を求める署名活動だった。新年と同時に始まった署名はあっという間に広がり、この時点で約3万人分が寄せられた。

山城さんは昨年10月17日、米軍北部訓練場の侵入防止のために沖縄防衛局が設置した有刺鉄線をペンチのようなもので切断したとして、器物損壊の疑いで現行犯逮捕された。その後、昨年8月の防衛局職員への傷害・公務執行妨害容疑、昨年1月の防衛局に対する威力業務妨害容疑が付け加えられた。

「被害者」はいずれも国または国の職員であり、どれも抗議活動の中で「発生した」とされる。三つの容疑の中で一般に重いのは傷害容疑だが、防衛局も県警も連日のように抗議活動を録画しているにもかかわらず、逮捕は発生から2カ月後だった。3番目に容疑に加えられた威力業務妨害は、発生から1年近く経過している。

現行犯は器物損壊だけという状況で、勾留が長引くにつれ、山城さんの逮捕は「政治的な意図によるものではないか」との不審が県民の間に広がっている。

「こんな内容の容疑による長期勾留は米軍統治下でも記憶にない。日本の人権問題や表現の自由は今、あの時代の沖縄より悪い」

裁判所前で山田さんと山内さんが声をそろえた。

復帰運動の盛り上がりと並行して立ち上がった高教組は、社会の問題に敏感に反応した。2人は米軍の圧政への抗議活動の最中、琉球警察や米軍との衝突を何度も経験したという。その2人をして「今の警察や司法より、米軍の方が物わかりが良かった」と言わしめる。黒人奴隷の解放の歴史やリンカーン大統領の名前を持ち出すと、米兵たちは「わかった」というように抗議活動への手を緩めたという。山内さんは「民主主義が何たるものか、米兵たちには実感があったんじゃないか」と振り返る。

米紙『ワシントン・ポスト』電子版は山城さんの長期勾留を「県民に沈黙を強いる異常事態」と報じた。国際人権団体アムネスティ・インターナショナル日本は、釈放を求める緊急行動を始めた。2人をはじめこの日裁判所に集まった100人近くが感じる異様さは、世界の感覚と通じるのだ。

それに対し気になるのが日本社会の沈黙だ。「政治はよく間違える。でも一番怖いのは、それをただす力がないこと」。2人の言葉が胸にささった。
(くろしま みなこ・『沖縄タイムス』記者、2月3日号)

沖縄の宮古島市長選挙で示された「民意」──“再選市長”の疑惑は多々(内原英聡)

任期満了に伴う沖縄県宮古島市の市長選挙は1月22日投開票を迎え、現職の下地敏彦氏(自民党推薦)が9588票で再選された。当日有権者数は4万3401人(女性2万1956人、男性2万1445人)で投票率は68・23%。投票総数は2万9614人だった。

いわゆる”保守系”の支持者が多いとされる宮古島市で下地氏は2009年に初当選し、13年は無投票(対立候補なし)で再選。昨年6月市議会では陸上自衛隊の配備受け入れを表明し、今回で争点の「民意が示された」「陸自配備に弾みがつく」といった声があがる。大手メディアも軒並みこの論調だが、「民意」は現職に厳しい視線を向けている、というのが実態だ。

今回、第一声で「大変厳しい選挙」としながら“陸自配備反対”を明言した奥平一夫氏(前県議、民進推薦)は9212票で第2位につけた。現職との得票差も376票まで迫る勢いだ。第3位の真栄城徳彦氏は6545票を獲得。現職市政の相次ぐ不祥事や情報隠蔽体質を批判。陸自配備計画も全容開示がされないかぎりは「反対」との立場を示した。第4位の下地晃氏(医師、社民党と沖縄社会大衆党が推薦)は4020票を獲得。関係者によれば下地氏は自衛隊の任務(島嶼における急患搬送など)を一部認める半面、配備計画は依然危険性が高いとし、中盤からは「断固反対」を強調した。

現職市政では数々の不正が判明、疑惑浮上も相次いでいる。14年度の観光プロモーション事業では行政手続きの不透明性をめぐり、市議会で調査特別委員会(百条委)が設置され現在審議中だ。

22日は市議補欠選挙(欠員2)も同時に投開票され、会社員の前里光健氏(8374票)に次いで陸自配備反対を貫く石嶺香織氏(「てぃだぬふぁ 島の子の平和な未来をつくる会」共同代表)が、7637票で初当選を果たした。宮古島市の今後が注目される。

(うちはら ひでとし・編集部、2017年1月27日号)

国が結婚・出産を強要?
「だから結婚できない」「お持ち帰り」指導……
「官製婚活」の現場はセクハラ三昧(斉藤正美)

地縁を活かした縁結びの取り組みに賛同する企業を、「縁結び企業さん」として展示する福井県庁。(撮影/斉藤正美)

地縁を活かした縁結びの取り組みに賛同する企業を、「縁結び企業さん」として展示する福井県庁。(撮影/斉藤正美)

近年、安倍政権が膨大な国家予算を投入し、お見合いや婚活セミナー、婚活パーティーなどの「官製婚活」を全国で繰り広げている。「官製婚活」の現場で何が起きているのか、取材した。

「プロポーズ。イイエと答えちゃいけないの?」

「プロポーズ。ハイかYESで、答えてね」。福井県庁を訪れると、1階の入り口には、ブーケを持って微笑む女性の横にこのフレーズが書かれたポスターが、パネルになって飾られていた。「ふくい結婚応援企業が100社到達!」という言葉とともに、ポスターの周りを企業名が取り囲み、ハートの折り紙も散りばめられている。

福井県は、安倍政権が2013年度以降から毎年全国の県や市町村にばらまいてきた「地域少子化対策強化交付金」(以下、「交付金」)の“恩恵”を受け、「職場の縁結びさん」と称する「婚活メンター」(サポーター)の企業・団体内への設置を15年度から推進してきた。全国に先駆けて、10年度から自治体主導の「地域縁結び」を導入してきた県なのだ。

しかし、自治体主導のもとで職場を挙げて結婚を後押しするような環境が醸成されれば、結婚したくない人や、子どもをほしくない人、子どもができない人、LGBTなどの性的少数者は追い詰められるだろう。「個人の自由」の侵害にもつながる。だが福井県庁女性活躍推進課の担当者は、そうした点には頓着せず、「合コンによって、社員のコミュニケーション力を上げることになる。結婚すると会社に対する忠誠心というか、真剣度が上がる。人口減少に歯止めをかけることで社会貢献ができる」ことをメリットだとして語った。

セクハラ的指導の実態

これは福井県に限ったことではない。現在、高知県、愛媛県などをはじめ全国で「官製婚活」事業は進められている。たとえば富山県は「交付金」を受けて、14年10月から「とやまマリッジサポートセンター」(以下、「センター」)という結婚支援事業をスタートさせた。「センター」は、富山県庁の地方創生推進室が富山県法人会連合会に運営を委託。コンピュータによるマッチングシステムを導入し、会員制のお見合いや婚活セミナーを実施している。この事業には15年10月から総計4000万円の税金が投入されているが、今年1月現在、成婚数は総計でたったの19組である。

さらに、複数のセンター利用者に取材すると、利用者がセンターの運営に改善を要求した際に「そんなことだから、あなたは結婚できない」と言われたり、婚活セミナーで(女性を)お持ち帰りしてください」とセクハラ的指導をされたという証言が出てきた。行政の関わる事業として疑問を持たざるを得ない実態が浮かび上がってくる。

また、民間の婚活業者では考えられないような、個人情報の杜撰な扱いがうかがわれる証言もあり、センター側もその事実を認めた。

算出法不明の不可解な「企業子宝率」

福井県や富山県は、全国に先駆けて「企業子宝率」調査を導入したことでも知られる。企業子宝率は、従業員(男女問わず)が企業在職中にもつことが見込まれる子どもの数で、少子化対策やワークライフバランスの研究者、渥美由喜(あつみ なおき)氏が04年に考案した。 現在、福井や富山をはじめ、静岡や山形、佐賀、鳥取など10以上の自治体が企業子宝率を利用している。

しかし、この指標は従業員のプライバシーの侵害の恐れが指摘されており、肝心の算出方法の核心部分もわかっていない。外部からの専門的な検証ができないのであれば、数値の再現性は担保できず、これほど広範囲の自治体が使う指標としては、信頼性を損なう。

渥美氏や自治体は「知的財産」だとしてこの算出方法を開示しないが、筆者が調査したところ、「知的財産」に登録されていなかったことが判明した。
(さいとう まさみ・富山大学非常勤講師。専門は、社会学、社会運動研究、メディア研究)

※その驚くべき実態の詳細は、『週刊金曜日』2017年1月27日号に掲載されています。電子版ご希望の場合は、下記のアプリ

週刊金曜日(しゅうかんきんようび)

週刊金曜日(しゅうかんきんようび)
開発元:Ractive Corp.
無料
posted with アプリーチ

でご購入ください。

結論ありきの司法判断に疑問――高江住民の訴え却下

沖縄本島北部の米軍北部訓練場のヘリパッド建設が進む中、東村高江の住民31人らが国を相手どり工事の差し止め仮処分の申し立てをしていたことに対し、那覇地裁は12月6日、住民の申し立てを却下した。理由は「航空機騒音、低周波音で重大な健康被害が及ぼされる恐れがあると十分に疎明されているとは言い難い」。住民側は決定を不服として福岡高裁那覇支部に即時抗告を行なう方針だ。

住民らが申し立てを行なったのは2016年9月21日。オスプレイの騒音による、平穏な日常を営む人格権の侵害を訴えた。

「なんとかヘリパッド建設を止めたい、やんばるの自然と私たちの平穏な暮らしを守りたい一心でした」と原告の1人、伊佐育子さんは語る。「実際に、オスプレイの騒音で、子どもが眠れない。気分が悪くなった人が現にいる。一人ひとりの証言を提出したのに一顧だにされなかった。残念です」。

「ヘリパッド工事を続けるという、結論ありきの判断。きわめて不規則に騒音が発生するという演習場の特性を考慮にいれていない」と弁護団の1人、小口幸人弁護士は批判する。

2016年6月、すでに完成している「N4地区」で連日オスプレイが離発着し、琉球大学の渡嘉敷健准教授の測定によれば、6月20日からの3日間には、100デシベル近い騒音が複数回計測された。

那覇地裁は、渡嘉敷教授の騒音実測データに基づいた、違法な航空機騒音や基準値を超えた低周波音が発生する恐れがあるという住民側の主張を退け、沖縄防衛局が自主的に行なった環境アセスメントには、「一定の合理性がある」とした。しかし、この自主アセスはオスプレイ飛行を前提としたものとはなっておらず、測定・予測の手法も問題が多い。

住民たちはもう9年も工事に反対して座り込みを続けている。国家の暴走を止め、住民の人権を守るのが司法の役割ではないのか。

(満田夏花・FoE Japan、12月16日号)

山崎博昭さん命日に講演会――運動を継続させるには

山崎博昭さんの命日に東京・弁天橋で行なわれた献花と黙祷。(撮影/赤岩友香)

山崎博昭さんの命日に東京・弁天橋で行なわれた献花と黙祷。(撮影/赤岩友香)

ベトナム戦争に反対する第1次羽田闘争で亡くなった山崎博昭さん。彼を追悼する「10・8山崎博昭プロジェクト」が山崎さんの命日である10月8日、講演会「羽田闘争とベトナム反戦から考える この国家どうする」を東京・四谷で開催した。

まず、翻訳家で元ベ平連の高橋武智さんが「ジャテック活動を今振り返って」というタイトルで講演した。ベトナム反戦運動において、脱走兵の支援から米軍基地内での米兵自身が行なう米軍解体運動へ移行していった過程を解説。その運動が「決定的に米国を敗北に追い込んだ要素だ」と語った。今年5月に広島を訪問したオバマ大統領についても、核兵器が持ち込まれた疑惑のあった岩国で日米同盟をより強固にするという趣旨の演説をしたあとに広島へ向かったことの欺瞞を追及した。

次に「さらにひどい国家 どうする?」というタイトルで講演したのは作家の中山千夏さん。自身が社会運動にかかわるようになった経緯を振り返り、沖縄米軍基地問題をはじめ、市民運動はまず「当事者が主導権を持つこと」が大切だと説いた。運動が大きくなると、必ず分断させようとする動きが出てくる。中山さんは、その一つが運動をする人を揶揄する「プロ市民」という言葉だと指摘。運動を広く継続させていくためには「団体の力には頼らず、個人が関心を持つことについて誘い合って解決していくこと。そのときどきで離散していい」とした。

また、同日は講演会に先立ち、山崎さんが命を落とした弁天橋近くで献花と黙祷が行なわれた

山崎さんが亡くなってから50年となる2017年には、ベトナム・ホーチミン市にある「戦争証跡博物館」で展覧会が開かれる予定だ。実現のための費用をクラウドファンディングで集めている。
詳細は URL readyfor.jp/projects/AntiVietnamWarMovementまで。

(赤岩友香・編集部、10月14日号)

民進党代表選で圧勝も野党共闘には慎重――切れ味鈍い蓮舫新代表の船出

岡田克也氏(右)から民進党代表を引き継ぐ蓮舫氏だが、野党共闘は継承するのか?(撮影/横田一)

岡田克也氏(右)から民進党代表を引き継ぐ蓮舫氏だが、野党共闘は継承するのか?(撮影/横田一)

9月15日、民進党は東京都内で臨時党大会を開き、新代表に蓮舫代表代行を選出、初の女性代表が誕生した。直後の挨拶で「私たちが向かうべきは巨大与党だ。批判ではなく提案力をもって戦い、選択してもらえる政党にしたい」と抱負を語ったが、衆院補選や新潟県知事選での野党共闘については曖昧なままだった。

新代表初の記者会見で蓮舫氏は、東京10区と福岡6区の衆院補選(10月23日投開票)について「我々は(東京10区の)鈴木庸介候補予定者、(福岡6区の)新井富美子候補予定者という素晴らしい候補予定者を立てています。しっかりと勝っていける、議員全員で応援していく体制を早々に整えたい」と意気込んだものの、すでに出馬表明をした候補者の取下げを示唆する共産党との選挙協力については、全く触れることはなかった。

「福島原発事故の検証と総括なき再稼働はありえない」が持論の泉田裕彦知事が出馬撤回をした新潟県知事選についても、蓮舫氏から野党共闘(野党統一候補擁立)への意欲は伝わってこなかった。民進党新潟県連が候補者擁立を断念したことが報道されたのにもかかわらず、党本部主導で積極的に動く姿勢は感じられなかったのだ。

蓮舫氏の“売り”は、国会審議などでの切れ味鋭い弁舌(発信力)、攻めの強さだ。当然、「新潟県知事選で野党統一候補を擁して原発再稼働に突き進む自民党(安倍政権)と対決する」という好戦的な回答が返ってくると予測したのだが、実際は慎重な言い回しに終始した。

【新潟県知事選も消極姿勢】

代表選終盤の11日、蓮舫氏を含む3候補に「新代表になった場合、新潟県知事選にどう取り組むのか」と質問した。「原子力防災、避難計画のズサンさを指摘して再稼働に慎重な泉田知事が『新潟日報』の一方的報道を理由に出馬を撤回して、東電の株価が上がった」「このままだと自民党推薦内定の森民夫さん(前・長岡市長)が当選してしまう」と指摘した上で、野党共闘への意気込みについて聞いたのだが、3人とも「新潟県連の意向が第一」と回答した(本誌9月16日号)。ちなみに蓮舫氏は「どの組長選挙もそうなのですが、党中央主導ではなくて、地元の県連が考え方をまず決めて候補者を選定していくという作業がありますので、今回もそこを重んじたいと思います」と答えていた。

その3日後の14日、『朝日新聞』に「新潟知事選、民進が擁立断念」と銘打った次のような記事が出た。「民進党新潟県連は13日、新潟市内で会合を開き、29日告示の知事選に独自候補を擁立しないことを決めた。(中略)関係者によると、県連と党本部は現職官僚らに立候補を要請していたが、固辞されたという」。

この「新潟県連の擁立断念」という状況の変化を受けて、蓮舫氏から踏み込んだ発言が出るのではないかと予測、新代表就任直後の会見で再質問をした。「昨日(14日)の『朝日新聞』の記事に『民進党県連と党本部が候補擁立を断念した』とあった」と紹介した上で、「泉田知事路線を引き継ぐ再稼働に慎重な候補を擁立する考えはないのか」と再び聞いたのだが、蓮舫氏の言い回しは代表選中と変わりはなかった。「まず岡田(克也)前代表から経緯を聞いて、話をしっかり引き継ぎます。さらに新潟県連から話を聞いてから、考えを決めさせてください」。

新潟県知事選の結果は、東京電力の柏崎刈羽原発再稼働に直結する。ここで事故が起きれば、関東圏が住めなくなる恐れも出てくるため、大きな注目を集めるのは確実だ。民進党が「関東圏を含めた“被害地元”に住む国民の安全を守る」を旗印に掲げて野党共闘を呼び掛け、原発再稼働ありきの自民党(安倍政権)との与野党激突の構図を作ることができる。この絶好のチャンスを活かさないようでは「(森氏支持を決定した)連合新潟に気がねしている」「威勢のいいのは口先だけ」「国籍問題で守りの姿勢に入った」と批判されても仕方がない。

(横田一・ジャーナリスト、9月23日号)

「だれもが週3日労働で生きられる社会に」――思考実験から描く女性の未来

働く女性の全国センター代表の栗田隆子さん。8月28日、埼玉県嵐山町。(撮影/小林蓮実)

働く女性の全国センター代表の栗田隆子さん。8月28日、埼玉県嵐山町。(撮影/小林蓮実)

女性は生き方や働き方、背景や環境などによって、「引き裂かれ」ている。分断を乗り越え「だれもが」希望を抱いて生きられる未来を実現しなければならない。8月26~28日、独立行政法人・国立女性教育会館主催・会場(埼玉県嵐山町)で、毎年恒例の「男女共同参画推進フォーラム」が開催された。

働く女性の全国センター(ACW2)も参加し、「働く女性のホットライン 10年目のリアル」を報告。「退職勧奨や条件の不利益変更に直面するたびに相談し、なんとか仕事を続けている状態」「自活できる収入が得られないために親元から出られないが、親との関係に苦しさを感じている」「セクハラ体験のフラッシュバックに悩まされている」「不本意な退職をめぐる怒りがおさまらず、心身の不調を抱えて生活もままならない」などの相談例が紹介された。

相談者の勤続年数では、5年未満が増加し、10年以上が減少。2011年頃から人間関係に関する相談が最多となり、特に近年は暴言・いじめ・ハラスメントの相談が多くなっていることについて、労働条件が厳しくなったこととの関連なども指摘された。

その後、「だれもが週3日労働で生きられる社会に」をテーマに、問題提起がなされた。運営委員のNさん(37歳)は、「労働を考えた時、引きこもりだった自分にとって、無職からの脱出であり、時間的ゆとりを手放すことだった。『実験としての週3日労働』を実際に開始して感じたのは、週3日の労働で生きていきたいが、1人暮らしだったら経済的に生活が成り立たなかっただろうということ」と語った。さらに、時給を3000円程度に上げ、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)やアンペイド・ワーク(無償労働)についても考慮しなければならないと訴えた。これを受けてのワークショップは盛り上がったが、議論は始まったばかりだ。

(小林蓮実・ライター、ACW2運営委員、9月16日号)

南西諸島での“国民保護”は二の次のズサンさ──陸上自衛隊の配備に前のめりな安倍政権の無責任(内原英聡)

宮古島市と同じく粗雑な「避難のイメージ」を掲載する石垣市国民保護計画。(撮影/内原英聡)

宮古島市と同じく粗雑な「避難のイメージ」を掲載する石垣市国民保護計画。(撮影/内原英聡)

他国からの武力攻撃で生活の場が戦場と化したとき“日本国民”の生命や身体、財産はどのように“守られる”のか――。防衛省が陸上自衛隊の配備を計画している奄美や宮古・八重山など南西諸島の住民の間では、この問題がいま深刻に危惧されている。なぜなら自衛隊は国民保護を“最優先任務ではない”としているからだ。

例年通り2016年版の『防衛白書』にも〈自衛隊は、武力攻撃事態においては、主たる任務である武力攻撃の排除を全力で実施〉とあり、〈国民保護措置については、これに支障のない範囲〉でのみ取り組むと記されている。住民の安全確保は“自己責任だ”というのか。

この点をカバーするかのごとく政府は2004年、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」(国民保護法)を成立させた。同法に従い都道府県も「国民保護計画」を策定したが、市区町村単位では4カ所が未作成となっている。今年3月に160人規模の陸自沿岸監視隊が配備された沖縄の与那国町も、このうちの一つだ。

天候の条件がそろえば台湾も見渡せる「日本最西端」「国境」の与那国島。しかし人口は年々減少するなど、住民は厳しい町運営を強いられてきた。そうしたなか08年頃に浮上したのが陸自配備計画だったが、これまでの過程では筆舌に尽くしがたい苦悩を迫られた。住民は陸自配備を“経済活性”とみなす誘致推進派と、島へのリスクを増大させるとした計画撤回派に分断され、いまも溝は埋まっていない。さらに強引かつ急ピッチで進められた基地の建設工事により、大量の土砂が海へ流出するなど環境汚染も甚大だ。自衛隊配備に拙速な国側の失態といえる事態が相次ぐなか、大前提となるはずの「国民保護計画」さえ整っていない。

約10年も具体的な避難計画を放置

しかし、その「国民保護計画」が策定されても有事に役立つ担保はない。会派「沖縄の風」の伊波洋一参議院議員は8月3日、「国際人道法違反の宮古島への自衛隊配備に関する質問主意書」を政府に提出。08年策定の宮古島市国民保護計画について、(1)「避難実施要領のパターンの作成」、(2)「島外避難における備え」、(3)「避難実施要領の策定」の進み具合を質問した。同市の計画によると「避難実施要領のパターン」とは、市が〈関係機関(中略)と緊密な意見交換を行いつつ、消防庁が作成するマニュアルを参考に、季節の別、観光客や昼間人口の存在、混雑や交通渋滞の発生状況等について配慮し、複数の避難実施要領のパターンをあらかじめ作成する〉(32頁)というものだ。

かりに自衛隊が配備されれば“標的の島”になるおそれがある。それで攻撃を受けたとき国民保護計画が機能しなければ、住民の危険はさらに高まるだろう。だが行政は約10年間も具体策を放置している――。伊波議員の質問に対して政府は8月15日、〈宮古島市は、平成二十八年八月三日時点において避難実施要領のパターンを作成していないと認識している〉と他人事のように答弁した。

一方、宮古島市の下地敏彦市長は6月20日の市議会で、市への陸自配備「受け入れ」を表明している。同市国民保護計画では有事の際、飛行機や船で住民約5万人を島外避難させるイメージ図もある。だが市職員の一人はこう漏らす。「その乗り物が狙われたらどうするか、といったことも(市では)議論していません」

内閣官房と総務省は責任を回避

国民保護計画を所管する内閣官房と総務省消防庁に“責任の所在”を問い合わせた。内閣官房の担当は、「市町村の国民保護計画については都道府県がチェックしており、国側が直接タッチしているわけではない」と回答した。総務省消防庁の担当も「私どもでお答えするのは難しい。自治体ということになるのではないか」と国側の責任をはぐらかした。

陸上自衛隊は「富士総合火力演習」(総火演)で“離島奪還作戦”を過去5回実施したというが、今年8月28日の総火演では島民の存在すら想定していなかった。『八重山毎日新聞』(本社石垣市)は9月3日の社説で、総火演では〈「国民保護法」に基づく住民避難はなかったという。これはなかったのではなく、できないというのが本音だろう。(略)「島民の存在は想定されていない」という演習など税金の無駄遣いである〉と批判した。弾薬だけで約3億9000万円もの税金を投入し、隊員約2400人が参加したという演習でさえこの状況だ。石垣島の住民はこのように不安を明かす。

「昨年10月に突然、石垣島自衛隊配備推進協議会という団体が発足しました。彼らは配備候補地の近接地区にパンフレットを配布し、〈部隊配備は、住民の命と平和な暮らしを守り抜きます〉と強調しました」。このパンフレット「石垣島への自衛隊配備の魅力」を主に作成したのは地元の砥板芳行市議だ。住民はこう続ける。「しかしパンフには具体策への記述が見当たりません。陸上自衛隊の配備計画は他国の脅威を煽る半面、住民のコミュニティや生態系をこわす危険性が大いにあります。候補地に近接する各集落は、配備への断固反対を表明しています」

宮古島市内では昨年10月22日、自民党主催の「平和安全法制セミナー」が開かれた。登壇した“ヒゲの隊長”こと佐藤正久参議院議員は、国民保護計画の所管は「総務省系統」であり、「各県や自治体が作る」と説明した。また自衛隊の配備によって「空港と港、そういうインフラっていう部分も整備しやすくなります」と宣伝したが、その前段では「宮古島から約5万人を避難させるというのは生半可じゃない」と本音を吐露している。

集団的自衛権の行使容認が閣議決定された2014年7月1日、安倍晋三首相は「いかなる事態にあっても国民の命と平和な暮らしは守り抜いていく」と豪語していた。しかしこの発言とはかけ離れた行政運営により、南西諸島はいま混迷をきわめている。
(うちはら ひでとし・編集部)