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大阪万博とカジノの見返りか? 維新、「共謀罪」成立に“ゴマスリ”協力

“出来レース”の兆候は松井一郎大阪府知事の会見からあった。(撮影/横田一)

日本維新の会は、自公両党と「共謀罪(テロ等準備罪)」について、取り調べの可視化(録音・録画)やGPS(全地球測位システム)捜査の立法措置の検討を附則に盛り込む法案修正に合意。5月29日、同法案は衆院を通過した。現在、参院で審議が始まっている。

昨年12月に自公と維新の賛成で成立したカジノ法案と同じパターンだが、野党を標榜するものの実態は「第2自民党」「官邸別動隊」と呼ぶのがぴったりの維新の賛成で、「強行採決ではない」と与党が言い訳をすることが可能になる。維新を狂言回しにした官邸主導の“茶番劇”といえるのだ。

維新のブレーンだった元経産官僚の古賀茂明氏は、こう批判する。

「大阪の地域政党が国政に進出したことで、大事な政策を歪めてしまう。『大阪で万博をやります。そこにカジノを誘致しましょう』という地元への利益誘導のために、国政で譲ってしまうということです。大阪で維新が信任を得たのは『改革をします』という訴えが支持されたからで、安倍政権との連携が信任されたわけではない」

実際、松井一郎大阪府知事・維新の会代表は、悲願である「大阪万博誘致」と「カジノを含む統合型リゾート(IR)推進」で安倍政権と二人三脚を組んでいる。万博もIRも候補地は大阪湾の人工島「夢洲」(大阪市此花区)だが、南海トラフ地震の津波襲来想定区域で浸水や液状化が懸念されている。しかも交通手段が未整備であるため、液状化対策や地下鉄整備(約540億円)などの莫大なインフラ整備費が必要だ。

そこで安倍政権は「東京五輪後の経済対策は大阪万博」という錦の御旗を掲げることで、巨額の血税投入を正当化。一方、維新の悲願実現を後押しする安倍政権に恩返しするために、維新は前国会のカジノ法案や今国会の共謀罪などで協力しているに違いない。まさに「ギブ・アンド・テイク」の蜜月関係といえるのだ。

【終盤国会と都議選に注目】

両者の“出来レース”の兆候は、共謀罪法案が提出された先月から漂っていた。衆院での審議が始まった4月6日、府庁内の囲み取材で松井知事は「(共謀罪の)対案を出していきたい」と語る一方で、大阪万博立候補の閣議了解が予定よりも1カ月早まったことについて、感謝していたからだ。

「(閣議了解の前倒しについて)ありがたいと思っています。閣議決定をしていただければ、速やかにBIE(博覧会国際事務局)に申請をしたいと思います。開催地の組長として国とご一緒したいと思います」(松井知事)

政府が大阪への莫大な血税投入という“餌”をまき、それに地域政党の維新が食いつくという構図。この時点から「当初は反対する構えを見せ、最後は修正協議をして賛成に回る」という維新・官邸合作のシナリオが透けてみえた。

修正合意3日前の8日夜には、大阪万博誘致を目指す超党派議連会長の二階俊博自民党幹事長が、維新の馬場伸幸幹事長と遠藤敬国対委員長と会談。大阪誘致の機運醸成に向けたイベント開催の考えを示すと同時に、維新との修正協議の歩み寄りについても触れた。自民党が万博を後押しする見返りに、維新が共謀罪法案成立に協力する“癒着”を物語るものだ。

これに対して、民進・自由・社民の野党3党は11日、テロと組織犯罪対策を目的とした法案(「航空保安法案」「組織的犯罪処罰法改正案」)を衆院に共同提出。同日の会見で蓮舫民進党代表は「現実的なテロ対策の強化法案」と強調。修正協議の真っ最中であった「維新の政権補完勢力的な役割」について聞くと、直接的な批判は避けたものの、「国民の皆さんには各政党がこの『共謀罪』についてどのような対応をしたのかは、よく見ていただきたい」と答えた。

なお「共謀罪は都議選の争点」と会見で表明した蓮舫代表は7日、都議選予定候補の応援演説で共謀罪法案を批判、対案提出も予告。

終盤国会の動向とともに共謀罪反対の民意が、都議選や次期衆院選でどう現れるのかが注目される。

(横田一・ジャーナリスト、5月19日号)

「ヘイトスピーチ解消法」成立1年だが、現場の「街頭宣伝に変化はない」

5月10日、参議院会館において「ヘイトスピーチ解消法成立1年」の院内集会が行なわれた。

同法の成立に多大な貢献をした有田芳生参議院議員は「法務省の人権擁護局長は休日にも拘わらずヘイトデモの現場に来ていたと聞いた」と個々の意識の高まりを評価する一方、同じ法務省がヘイトスピーチに関するパンフレットを作っておきながら、ほとんど広報宣伝をしておらず、その冊子の内容にも不備があることを指摘した。「『(パンフには)ヘイトスピーチに明確な定義はありません』と書かれていましたが、それこそヘイトスピーチ解消法を読めば理解できます」。北村聡子弁護士は施行後1年間のヘイトスピーチの実態を「デモは確かに減った。しかし、街頭宣伝については変化がない」と発言。「調査結果を受けて以前に戻ってしまうのではないかと思う」と危惧を表した。

法律ができた意義は大きく、かつてはまるでレイシストを守っていたかのような自治体や警察の対応が施行後は大きく異なってきたことはさまざまな地域で確認されている。しかし、それらもまた、全国的に統一がなされた対応ではなく、今後は有機的なつながりを持つことが課題として挙げられた。

主催した「人種差別撤廃基本法を求める議員連盟」の小川敏夫会長が冒頭のあいさつで「国民全体の意識の中で(差別やヘイトが)絶対に許されないことだということを高めていく上でも効果的だと考える」と語っていたが、その意味でも各省庁が一体となっての広範な啓蒙活動が必要と言えよう。

先般、Jリーグ川崎フロンターレのサポーターが韓国のチームとの試合において旭日旗を掲げたことで、AFC(アジアサッカー連盟)より「人種差別を禁止する倫理規程」に違反したものとして1万5000ドルの罰金が課された。Jリーグもヘイトデモで必ず振られるあの旗がどういう意味を持つかを認識してほしい。

(木村元彦・ジャーナリスト、5月19日号)

JKビジネス摘発で思わず本音? 上西小百合衆院議員を狙った警視庁

5月9日、女子高生を無理やり働かせたとしてJKカフェ経営者が児童福祉法違反容疑で警視庁に逮捕された。ところがこの経営者が社長を務める芸能プロダクションのホームページに所属タレントとして上西小百合衆議院議員の名前が掲載されていた。ネット上で一時物議を醸したが無断使用だったことが判明、名前は削除され騒動は一件落着した。しかし、この裏で警視庁の怪しげな動きが明らかになった。2年前にカフェの名義上責任者になっていたX氏が東京・秋葉原の万世橋警察署で取調べをうけた時のことだという。

「私を取り調べた刑事は、契約書を見ているからわかっている。そこはつつくつもりはないと言い、調書をとっていたノートパソコンを閉じると、『ところで上西さんとはどういう関わりなの? 何回会った? 給料はどうなっているの?』と、上西さんのことばかりしつこく聞いてきたんです。警察は上西さんが所属していると勘違いしていてなにかがほしい様子でした。所轄がそんなことやるんですか、と聞くと、ちょっと上が興味を持っていて、と言うんです。“上”とは本庁なんだと。警察の目的がなにかわかりませんが、私ではなく上西さんについて探るのが目的だったのかと思うと、不気味な感じがしました」(X氏)

上西議員は自民党と連携する日本維新の会を批判し、森友学園問題でも発信を続けている。政権にとって目障りな存在ではあるが……。上西事務所の秘書によると「森友問題以降、これまで付き合いのなかった官邸担当記者が探りにくるようになりました」という。

これを知った上西議員は「私に関係ない事件で警察はこのような捜査をしてくる。こんな警察が信頼できますか。警察の裁量が拡大する共謀罪なんてナンセンスです」と憤る。国民を監視したがる警察こそ監視しなければならない存在なのではないか。

(平井康嗣・編集部、5月19日号)

JR東海が住民無視のトンネル堀削 リニア事業の限界露呈

リニア中央新幹線の建設を進めるJR東海は、4月27日、2015年末の山梨県側での着手に続き、南アルプストンネルの長野県工区(8・4キロメートル)の掘削を開始した。現場は除山という大鹿村の釜沢集落の川向いの山の麓。長野県内で本体工事にかかる作業用トンネルの掘削は初となる。

しかし、難工事への挑戦にもかかわらず、掘削の連絡が大鹿村や釜沢地区の自治会になされたのは前日。釜沢への通知はメールで1行触れられていただけだ。私は釜沢の隣の上蔵地区に住むが、新聞記者から問い合わせを受けて当日午後はじめて着手を知り、いっしょに現地を見に行った。

掘削現場に通じる道路はゲートができ近づけないため、重機の騒音が響く釜沢集落の林道から急斜面の山中を10分ほど下り、工事現場の対岸に着いた。現場は山肌にトンネルの入り口が据えられていたものの、他に完成した建設物は見当たらない。掘削作業ではなく、川沿いに防音壁を作業員が1枚1枚設置していた。

もともとJR東海が、南アルプストンネルの掘削開始を予定していたのは、上蔵地区の小渋川非常口だ。ところが昨年11月の小渋川現地での起工式では、住民の抗議を受け社長と長野県知事も含め、来賓多数が会場に足止めされた。その上、掘削地の保安林の解除手続きが長引き、解除予定を林野庁が告示したのが今年2月。

それに対し住民から多数の異議意見書が提出されたためさらに遅れ、2番目に掘削する予定だった除山非常口で起工式から半年後の安全祈願祭となった。

現在長野県内で排出される974万立方メートルの残土の最終処分地が決定した場所はなく、今回の着手のあり方そのものが、むしろリニア事業の限界を示している。

南アルプスの自然破壊を懸念する登山者グループは、4月10日に都内で記者会見を開き、3912筆の賛同で工事への反対を表明している。

(宗像充・ライター、5月12日号)

自民区議の後援会に「ヤミ政治団体」の疑い 政治資金規正法違反か

葉梨康弘衆議院議員(自民)の親族にあたる葉梨俊郎杉並区議会議員(会派名・杉並区議会自民党)の後援会団体が法律で義務づけられた設立届出をしていないことが発覚、違法な「ヤミ政治団体」である疑いが浮上した。

2014年6月の区議補欠選挙に関連した葉梨氏の「選挙運動費用収支報告書」にこう記述がある。

「2014年6月21日/7万円/寄附/はなし俊郎後援会(政治団体)」

「はなし俊郎後援会」という政治団体から葉梨候補(予定者)に対して7万円の寄附をしたという意味である。だが、東京都選挙管理委員会や総務省政治資金課に照会したところ、「はなし俊郎後援会」の届出はなかった。葉梨俊郎氏に関連する政治団体は一つも存在しない。

政治資金規正法6条は、政治団体の活動について、都道府県選挙管理委員会や総務大臣への届出と収支報告書の提出などを義務づけている。また同8条は、無届出のまま寄附を受けたり支出をすることを禁止。違反者に対しては「5年以下の禁錮または100万円以下の罰金」という厳しい罰則をもうけている。

「はなし俊郎後援会」のヤミ政治団体活動がこれらの法律に抵触するのは明らかだ。

葉梨区議の自宅に質問状を送ったが締め切りまでに回答はなかった。

葉梨区議は2003年、自民党公認で杉並区議に初当選。一度落選したのちに14年の補欠選挙で再び議員となり、15年の統一選でも当選して現在にいたっている。

議長だった05年には政務調査費(当時)9万円で冷蔵庫を購入して批判された。15年には、区議選1カ月前の3月末に、杉並区広報を丸写しにしたチラシを2万5000部と大量に作成して配布、経費約80万円を政務活動費で支出した。現在一部返還を求める住民訴訟が東京地裁で続いている。

(三宅勝久・ジャーナリスト、5月12日号)

賃上げ闘争のため、新たに「秋闘」を(高橋伸彰)

黒田東彦・日本銀行総裁による異次元の金融緩和から4年を経ても、2%の物価安定目標を達成できないのは、デフレの真因が貨幣量の不足ではなかったからだ。1990年代後半以降20年近くにわたり、グローバル競争での生き残りを口実に大手輸出企業が先頭に立って賃金を抑制したからデフレに陥ったのである。

そのことに安倍首相も気づいたから、財界主導の「官製春闘」で賃上げを図ろうとしたのではないか。実際、2014年9月の経済財政諮問会議における榊原定征経団連会長の「法人実効税率を真水で2%下げれば、賃上げに回すことができる。今年の賃上げ、しかもベアが実行できたのは総理の御英断で、復興特別法人税を1年間前倒し廃止したことが、非常に大きな力になった」という発言を受け、安倍政権は早々に法人税率を従来の25.5%から15年度は23.9%、16年度に23.4%、18年度以降は23.2%への引き下げを決定した。

しかし、労働者にとっては脱デフレを図り、アベノミクスを成功に導くことが賃上げの目的ではない。現在の生活を守り、将来の安心を確保するのが目的である。それにもかかわらず、連合は主要企業の集中回答があった3月15日のアピールで今春闘を「『経済の自律的成長』実現に向けた労使の社会的責任や人への投資が企業の存続と成長に寄与することを訴え(中略)4年連続して賃上げの回答を引き出している」と総括する。

鉄鋼労連で長年にわたり春闘の賃上げ闘争を支え、連合の政策委員長も歴任した千葉利雄は、自戒も込めて日本経済の発展や企業の生き残りに対して労働組合が協力するのは、あくまで「例外的なもの、つまり危機管理的な、緊急避難的な手段と位置づけるべき」(『戦後賃金運動』)と述べ、危機が去れば「労働組合は機を失せずに本来の積極的な分配闘争に立ちもどって、主体性を強めていかないと、運動の生命力が弱くなっていく」(同)と警告する。

かつての石油危機とは異なり、現在のようにマクロ的にはプラス成長が続き企業収益も好調を示す中、労働組合があえて賃上げは経済成長や、人への投資を通して企業の成長や存続にも寄与すると訴えて春闘に臨む必要はない。

また、もしかりに大企業労組が中堅・中小労組や未組織労働者を気遣い、本来勝ち取れるはずの賃上げを自制しているなら、それこそ本末転倒である。なぜなら大企業労組が賃上げ要求を抑えたことで増える企業収益は、結果的に経営者の報酬や株主の配当に回り、日本全体で見れば階層間の格差が拡大するからである。

前出のアピールで連合が「すべての働く者の処遇の『底上げ・底支え』『格差是正』の実現をめざしている」と訴えるなら、傘下の大企業労組はむしろ可能なかぎり大幅な賃上げを獲得したうえで、身銭を切って中堅・中小労組や未組織労働者を支援すればよい。

賃上げの不足による個人消費の停滞は、労働者が現在の生活に苦しみ、将来の生活に不安を抱いているあらわれにほかならない。連合には春闘で取り残した分は、新たに「秋闘」を組織しても取り返すくらいの気概をもって賃上げ闘争に臨んでほしい。

(たかはし のぶあき・立命館大学国際関係学部教授。5月12日号。一部敬称略)

前代未聞の安倍首相、現職総理として5月1日に「改憲宣言」していた

5月1日、東京・憲政記念館で改憲の演説をする安倍晋三首相。(撮影/永野厚男)

「いよいよ機は熟してきた」「理想の憲法の具体的な姿を自信を持って国民に示す時だ」「新しい憲法を作っていくこと……を、自民党総裁としてお誓い申し上げる」

改憲派の国会議員で構成する新憲法制定議員同盟(中曽根康弘会長)が5月1日、東京・永田町の憲政記念館で開いた「新しい憲法を制定する推進大会」(主催者発表で1250名出席。サテライト会場含む)に、現職首相として初めて出席した安倍晋三氏の発言だ。

安倍氏の演説は、かけ声だけでなく、踏み込んだものだった。「結果(を出す)」を5回、「具体的(な提案)」の語を3回も使用。

そして、「谷垣禎一総裁の時、示した憲法改正草案は党の公式文書だが、そのまま憲法審査会に提案しない。どんなに立派な案でも衆参両院で3分の2を形成できなければ」などと述べた上、民進党の福島伸享衆院議員に「今深くうなずいて頂けた。建設的な議論に参加して頂けると期待する」と秋波を送るなど、手ぬかりなかった。

その福島氏は、「憲法改正するために政治家になった」と力んだものの、「立憲主義に立脚した憲法を」とも発言。閉会後、筆者が「民進党支持者には護憲派はかなりいますが」と問うと、福島氏は「安倍氏(の改憲)には反対です」と答え、ブレを見せた。

安倍氏は、日本会議系の「民間憲法臨調」(櫻井よしこ代表)などが3日、都内千代田区で開いた「公開憲法フォーラム」に寄せたビデオメッセージで、(1)憲法9条1項・2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込む、(2)高等教育の無償化、(3)五輪開催の2020年に新憲法施行を――の3点を主張。具体的改憲項目と時期を明言したのは、初めてのことだ。

ビデオ上映後、登壇した公明党の遠山清彦衆院議員は、「わが党の加憲アプローチに合う考え方である」と同調。護憲・リベラル派にとって重大な事態になってきた。

(永野厚男・教育ジャーナリスト、5月12日号)

安倍話法のまやかし(西谷玲)

大型連休が終わり、国会論戦が再び始まった。森友学園問題や北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)をはじめとする緊迫する国際情勢、安倍晋三首相が2020年と期限を切って表明した憲法改正への動きなど、課題がてんこ盛りである。しかし、野党の追及がいま一つ迫力不足に映る時がある。安倍首相の答弁スタイルとともに考えてみたい。

安倍首相の答弁でまず目立つのが、自分の都合のいいところにだけ焦点をあてて答えるということだ。たとえば、首相がよく「アベノミクス」の成果として引き合いに出す数字に「100万人の雇用を作った」というものがある。確かに、就業者数は2012年に6270万人だったが、15年には106万人増えて6376万人となっている。

ところが重要なのは、その内訳である。正規雇用は3340万人から3313万人に27万人減っているのである。逆に、非正規雇用は1813万人から1980万人になっているのだ。167万人増えているのである。これを答えず、表面的な数字だけを強調するのは政治家として不誠実であろう。

ほかにも、生活保護世帯が減っていることもよく引き合いに出すが、これも内実が肝心である。確かに生活保護世帯は減っているのだが、高齢者の保護世帯は増えているのだ。「貧困老人」が増加しているのである。

野党の質問力についても指摘しておきたい。重要なのはファクトとデータをおさえて、何が聞きたいのかクリアに問い、理詰めで追及していくことである。ところが、最近の野党の質問を見ていると、延々と1人でしゃべり続けて何が聞きたいのかよくわからなかったりする。また、肝心のファクトが間違っていたりするのだ。

たとえば、昨年、カジノ法案について公明党の山口那津男代表が、パナマ、キューバ、コロンビアの3カ国を視察した時のことについて民進党の蓮舫代表がたずねた。蓮舫氏は、山口氏はキューバのカジノについて視察したと言及した。ところが山口氏は、ちょっとややこしいのだが、キューバ滞在中にパナマのカジノについて話したのだった。キューバにはカジノは現在開かれていない。

野党は細心の注意を払って事実関係の間違いがないようにしなければならない。一つ間違いがあっただけで足もとを見られ、あげつらわれ、質問全体の正当性について疑問を突きつけられてしまう。

それから、蓮舫氏の言うように提案型を標榜するのなら(筆者は必ずしもそれに全面賛成するものではないが)、具体的な政策を小さなものから要求していくことである。

ある閣僚は言った。

「こちらだってすべての政策をチェックできているわけではない。相手の言ってきたことでなるほどと思えば、その場では検討する、というふうにしか答弁しなくても取り入れる」

実際その役所では、この国会だけですでに複数の野党提案を実行に移しているのだという。ちなみにこの野党とは共産党である。

安倍首相は歴代の首相に比べて狭量であり、人の意見を聞かないように見えるが、こういう閣僚だっているのだ。野党は安倍話法のまやかしを追及し、細かく政策を積み上げていくことだ。

(にしたに れい・ジャーナリスト、5月12日号)

日本国憲法施行から70年 改憲危機に5万5千人が都内に集結

会場の東京臨海広域防災公園には5万5000人が集まった。(撮影/斉藤円華)

日本国憲法の施行から70年を迎える憲法記念日の5月3日、「5・3憲法集会」(同実行委主催)が東京臨海広域防災公園(東京都江東区)で開かれた。参加者数は主催者発表で、昨年の5万人を上回る5万5000人。

「今の日本は戦争に近付いているようでキナ臭い。憲法が活かされていない」と話すのは都内に住む会社員の男性(30代)。妻と幼い子どもとともに「家族のお出かけ」を兼ねて参加したという。

憲法改正の是非を巡って、男性は「防衛や安全保障は今ある法律で対応できるはず。憲法を変える必要がある、と思う人はその点をどう考えるのか、逆に聞きたい」と考える。自衛隊についても「戦力の不保持を定めた憲法第9条の下で、自衛隊を合憲とするのは私に言わせれば詭弁。9条を活かすのであれば、書いてある通り実行してほしい」と話した。

「日本国憲法を一字一句変えるな、とは思わない。けれども憲法が価値とする国民主権や基本的人権は守りたい。その意思表示のために来た」。都内在住の公務員の女性(40代)は、「自由に物を言いにくくなっている」と感じる。

「たとえば『憲法守れ』と言った瞬間に『考えが偏っている』と受け止められてしまう。護憲集会の会場提供が不許可になっても批判の声が弱い」(女性)。共謀罪法案が通ればさらにその傾向が強まるのでは、と女性は危惧した。

横浜市から来た大学教授の男性(50代)は「(集団的自衛権を容認した)安保法制の変更はクーデターに等しい。現状は日本国憲法が停止し、立憲主義が機能していない状態。現状追認のための改憲は法治主義ではない。憲法の下位に平和基本法を設けて自衛隊を規定すべきだ」と話した。

集会では民進、共産、自由、社民の野党幹部らが発言。米軍新基地建設への抗議中に逮捕され、5カ月余りの勾留を経て釈放された沖縄平和運動センターの山城博治議長も登壇した。山城氏は「私たちの運動、全国の仲間の闘いを潰すために共謀罪が用意されようとしている。力を合わせて共謀罪を葬ろう」などと訴えた。

(斉藤円華・ジャーナリスト、5月12日号)

国家主義者は救国の伝道師ではない(浜矩子)

「東が西から遠いほど、わたしたちの背きの罪を遠ざけてくださる」。旧約聖書の一節だ(詩篇103.12)。神の力を謳い上げている。聖書講座を開講しようとしているのではない。フランス大統領選の成り行きを見守る中で、この「東が西から遠いほど」というフレーズが頭に浮かんだのである。

最終的に誰が勝利するかはさておき、候補者たちの主張を聞きながら、奇妙な点に気がついた。それは、いまや、どうも東が西からあまり遠くなさそうだということである。聖書の上記の言い方は、東と西が対極にあるところに眼目がある。人間からこれ以上遠くはなりえない遠方に、神は罪を追いやってくださる。それが、この一節の勘所だ。

政治の世界において、対極的な位置づけにあるものは何か。それは右と左だろう。右翼と左翼が政治的信条の両極だ。この両端を結ぶ直線上に、中道右派とか中道左派があったりする。右翼から最も遠いところに向かって進めば、左翼にたどり着く。左翼から遠ざかれば遠ざかるほど、右翼に近づく。東から西が遠いほどに、左翼は右翼から遠い。そのはずである。

だが、今のフランスでは少々状況が違う。今回の選挙に向けて最右翼に陣取ってきたのが国民戦線を率いるマリーヌ・ルペン氏だ。極左ポジションから急浮上したのが、ジャン=リュック・メランション氏である。フランス政治の信条測定定規において、この両者が左右の両端を画している。そういうことだ。ところが、この2人が言っていることは、驚くほど似通っている。反グローバル・反自由貿易・反EU。2人とも、ロシアのプーチン大統領がお気に入りだ。

いみじくも、選挙キャンペーンの本格始動に当たって、ルペン氏が次のように言っていた。「いまや、右翼も左翼もない。あるのは、グローバル対愛国の対決だ。」メランション氏も、これには大いに同感しそうだ。

対極的に遠い関係にあるのは、いまや、右と左でも西と東でもなくて、グローバルと愛国なのか。こんな対極意識が広がってしまうのは、実に危険なことだと思う。グローバルを悪役に仕立てることで、国家主義者たちが救国の伝道師であるかの自画像を打ち立てる。このまやかしに乗せられると、人々は、それこそグローバルなスケールで国家権力の餌食と化していく。

グローバル化という現象は、確かに扱い方が難しい。だが、国境を超えた相互依存関係が深まれば、それだけ、誰も偉そうな顔が出来難くなる。誰もが誰かのお世話になっている。これほど人々を謙虚にしてくれる構図はない。これほど、人々がお互いに愛想良くすることを容易にしてくれる時代はない。親分がいないから、誰もが責任をもって全体のことを考えなければならない。なかなか、麗しい風景だ。グローバルは愛国で、愛国はグローバル。実は、それが今日的時代状況であるはずだ。

この感覚で、西と東が手を結び、右翼と左翼が抱き合うなら、確かに、人類は罪から最も遠いところにいけるかもしれない。神よ、何とぞ、そこに向かって我らを導き給え。

(はま のりこ・エコノミスト。4月28日・5月5日号)