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安倍話法のまやかし(西谷玲)

2017年5月23日1:30PM

大型連休が終わり、国会論戦が再び始まった。森友学園問題や北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)をはじめとする緊迫する国際情勢、安倍晋三首相が2020年と期限を切って表明した憲法改正への動きなど、課題がてんこ盛りである。しかし、野党の追及がいま一つ迫力不足に映る時がある。安倍首相の答弁スタイルとともに考えてみたい。

安倍首相の答弁でまず目立つのが、自分の都合のいいところにだけ焦点をあてて答えるということだ。たとえば、首相がよく「アベノミクス」の成果として引き合いに出す数字に「100万人の雇用を作った」というものがある。確かに、就業者数は2012年に6270万人だったが、15年には106万人増えて6376万人となっている。

ところが重要なのは、その内訳である。正規雇用は3340万人から3313万人に27万人減っているのである。逆に、非正規雇用は1813万人から1980万人になっているのだ。167万人増えているのである。これを答えず、表面的な数字だけを強調するのは政治家として不誠実であろう。

ほかにも、生活保護世帯が減っていることもよく引き合いに出すが、これも内実が肝心である。確かに生活保護世帯は減っているのだが、高齢者の保護世帯は増えているのだ。「貧困老人」が増加しているのである。

野党の質問力についても指摘しておきたい。重要なのはファクトとデータをおさえて、何が聞きたいのかクリアに問い、理詰めで追及していくことである。ところが、最近の野党の質問を見ていると、延々と1人でしゃべり続けて何が聞きたいのかよくわからなかったりする。また、肝心のファクトが間違っていたりするのだ。

たとえば、昨年、カジノ法案について公明党の山口那津男代表が、パナマ、キューバ、コロンビアの3カ国を視察した時のことについて民進党の蓮舫代表がたずねた。蓮舫氏は、山口氏はキューバのカジノについて視察したと言及した。ところが山口氏は、ちょっとややこしいのだが、キューバ滞在中にパナマのカジノについて話したのだった。キューバにはカジノは現在開かれていない。

野党は細心の注意を払って事実関係の間違いがないようにしなければならない。一つ間違いがあっただけで足もとを見られ、あげつらわれ、質問全体の正当性について疑問を突きつけられてしまう。

それから、蓮舫氏の言うように提案型を標榜するのなら(筆者は必ずしもそれに全面賛成するものではないが)、具体的な政策を小さなものから要求していくことである。

ある閣僚は言った。

「こちらだってすべての政策をチェックできているわけではない。相手の言ってきたことでなるほどと思えば、その場では検討する、というふうにしか答弁しなくても取り入れる」

実際その役所では、この国会だけですでに複数の野党提案を実行に移しているのだという。ちなみにこの野党とは共産党である。

安倍首相は歴代の首相に比べて狭量であり、人の意見を聞かないように見えるが、こういう閣僚だっているのだ。野党は安倍話法のまやかしを追及し、細かく政策を積み上げていくことだ。

(にしたに れい・ジャーナリスト、5月12日号)

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