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無実の訴え退け死刑執行「菊池事件」、熊本地裁が再審請求棄却

高波淳・フリージャーナリスト|2026年2月10日6:17PM

 ハンセン病患者とされた男性Fさんが、1952年に起きた殺人事件をめぐり隔離施設内の「特別法廷」で裁かれ、無実を訴えながら死刑を執行された「菊池事件」の第4次再審請求で、熊本地裁(中田幹人裁判長)は1月28日、請求を棄却する決定を出した。弁護側はこれを不服とし、2月2日、福岡高裁に即時抗告した。

1月28日、熊本地裁前で地裁の決定について説明する徳田靖之弁護士。(撮影/高波淳)

 弁護側が最大の争点と位置づけた「憲法的再審事由」(憲法違反の裁判手続きは、それ自体が再審の理由になるという主張)について地裁は、確定判決の審理手続きに重大な憲法違反があったことがわかり、その憲法違反が事実認定に影響を及ぼし、重大な事実誤認をきたす場合は「再審を開始すべき余地があることは否定できない」との判断を示した。

 だが、弁護側が憲法的再審事由の主張の中で大きな力を注いだ、一審の国選弁護人が弁護人の職務に反してFさんが有罪であるかのような弁護活動をしたという問題については、憲法違反だとは認めなかった。

 地裁は確定判決の審理手続きについて、個人の尊厳を保障した憲法13条、法の下の平等を定めた14条1項、裁判の公開原則を定めた82条1項に違反するか違反する疑いがあると判断。しかし、これらの憲法の規定に適合し、公開法廷で審理したとしても、確定判決の証拠関係などに変動はなく、こうした憲法違反が確定判決の事実認定について重大な事実誤認をきたすとは認められないとしたうえで、菊池事件については「憲法違反を理由に再審を開始すべきであるとは認められない」と結論づけた。

 また、弁護側が新証拠として提出していた、凶器とされる短刀や親族の供述をめぐる二つの鑑定書については、明白性がないなどとして退けた。

ハンセン病元患者の怒り

「不当決定」「憲法的再審事由を認めず」

 地裁の決定書を受け取った弁護側の弁護士たちが地裁前で「旗出し」をすると、元患者や支援者らから「えーっ」「うぁー」などと驚きや落胆の声が湧き起こった。

 ハンセン病違憲国家賠償請求訴訟全国原告団協議会会長の竪山勲さん(77歳)は「我が国の司法は死んでいる。司法の責任はまったく取らない、怖い国だ。憲法違反で人を殺してもいい、そんなばかなことがどこにあるか。私たちハンセン病元患者たちの命は、人間の命ではないということだ。許せない」と怒りをぶつけた。集まった人たちは、地裁に向かって抗議の拳を上げた。

 弁護団の徳田靖之共同代表(81歳)は記者会見で「最悪の決定だ。再審請求を認めたくないという結論がまずある。徹底的に闘う。長い闘いになると思うが、どんなに長くなり、どんなに苦難に満ちた闘いであろうとも、Fさんの無実を明らかにするまで、最後まで闘いたい」と話した。

 Fさんは52年に熊本県内で元村職員のAさんを殺した容疑で逮捕され、国立ハンセン病療養所・菊池恵楓園や、隣接する「熊本刑務所菊池医療刑務支所」の中に設けられた特別法廷で裁かれ、53年に一審で死刑判決。57年に確定し、自身による三度目の再審請求が棄却された翌日の62年9月14日に、死刑を執行された。2021年に遺族が再審請求し、前例のない死刑執行後の再審の可否をめぐり、地裁の判断が注目されていた。

(『週刊金曜日』2026年2月6日号)

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