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生物学とジェンダー学      vs(対立)からand(融合)へ

古川晶子・ライター(2025年6月20日号)|2025年7月9日11:55AM

科学に反する「常識」

 また、この「男女二元論」により最も厳しい立場に置かれているのが、存在を否定されたトランスジェンダーの人々だ。「大統領令についてめちゃくちゃだという感想を持つ人は多い。でも、そのめちゃくちゃのもとになった考え方は、私たちの『常識』と合致している」と高井さんは言う。

 性別が単純に二つに分けられるものではないことは科学的に明らかになっているが、私たちの日常生活では「性別は男女」とする「常識」を無意識に共有している。そのため科学的な事実に反する弾圧が可能になってしまうのだと指摘した。

「性とこころ」に取り組む専門家もこの無意識の共有の例外ではない。高峰修さん(明治大学)は、トランスジェンダー女性のスポーツ選手が女子の競技に出場することを「ずるい」と非難する言説を例に、「実際の競技結果やデータを見るとトランス女性が特に有利という事実はない」と説明し、この問題は「スポーツ科学者の中でも議論の決着がついていない段階なので、冷静に受け止めてほしい」と呼びかけた。

 先述の田代さんは「ジェンダーは生物学的本質主義を乗り越えるために生まれた概念だ」と言う。ジェンダーは、どのような性でも人権侵害されない社会のあり方をめざす考え方だ。生物学のような自然科学も、ジェンダー学のような社会科学も、本来、人間がよりよく生きていくための学問であり、対立するのではなく相互に活かしあうべきもの。つまり生物学とジェンダー学は「vs」ではなく「and」で結ぶことが可能なのである。「性とこころ」に取り組む専門家がその点を共有できれば、問題を抱える人々にとって、より頼もしい支え手となるだろう。

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