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玉城デニー沖縄県知事単独インタビュー 「沖縄を二度と戦場にしないために、ミサイル配備を許すことはできません」

渡瀬夏彦・ノンフィクションライター|2024年4月25日6:23PM

揺れた「不承認」決定

 話を戻そう。最も恐れていたことが起きたのは、いや、悔しいことに予想通りのことが起きてしまったのは、昨年12月28日だった。

 日本政府は、公有水面の埋め立てに関わる沖縄県知事の処分権限を奪い、国と地方自治体は対等と定めた改定地方自治法(1999年成立)が存在するにもかかわらず、沖縄の民意を無視して、前代未聞、問答無用の「代執行」の暴挙に及んだ。

 周知の通り、大浦湾側に広がる軟弱地盤を隠蔽できなくなった国(防衛省沖縄防衛局)が提出した辺野古新基地建設における設計変更申請書(2020年4月)に対して不承認(21年11月)とした姿勢を貫く玉城デニー知事に代わって、斉藤鉄夫国土交通大臣(公明党衆議院議員)が、防衛省沖縄防衛局の進めようとする辺野古新基地建設工事に必要な「承認」をしたわけである。

 たった今、「不承認とした姿勢を貫く玉城デニー知事」と書いたわけだが、じつは簡単にその姿勢を保てたわけではなかった。つまり、最高裁が昨年9月4日に県敗訴の判決を下したあと、県庁の事務方幹部らは、おおよそ設計変更の「承認」へと傾いてしまい、知事の思いも揺れた。

 9月下旬頃には、県内メディア関係者から筆者にも、「知事が『承認』の決断を下す可能性は高い」との情報が寄せられていた。玉城知事は、苦しかった胸のうちを自らこう振り返る。

「最高裁の判決をわれわれはどう受け止めるべきか、というときに、県の職員には、『苦渋の決断』で最高裁判決に従わなければならない、『承認』もやむなし、という思いはあったと思います。法を順守しつつ仕事をするのが行政マンだという意味で。わたしとしても、行政マンのトップとしては、その考えに落ち着くこともできたかもしれません。しかし、政治家としてどう責任を取るんだと思ったときに、やはりあきらめては駄目なんだという結論に達したのです。あきらめたら試合終了だけれども、あきらめなければ、そこから活路を見出せることもあるのだ、と」

言いなりになるのか

 この知事の英断を促した重要人物がいる。元衆議院議員、元沖縄県議会議長の仲里利信氏だ。現在の玉城デニー後援会長でもある。仲里氏が他の後援会メンバーとともに、玉城知事や副知事らと面談したのは9月30日、国が指定した「承認期限」が数日後に迫っていた。

「わたしの言葉を知事はしっかり受け止めてくれた」と話す元衆議院議員の仲里利信氏。(撮影/渡瀬夏彦)

 仲里氏はズバリ強い口調で直言した。

「ここで知事が承認してしまったら、この先、すべて国の言いなりになってしまう。次の知事選も来る衆議院議員選も、そして6月の県議選も戦えないと思ったほうがよい。もし承認するというのなら、わたしは後援会長を辞めます」

 仲里利信という人は、長らく自民党沖縄県連に所属し、自民党議員として県議会議長まで務めているのだが、「戦争に繋がるものは一切許さない」という信念を貫き続けてきた、いわば「安倍戦争準備路線」の対極に位置する政治家だ。翁長雄志知事が就任直後、14年12月の衆議院議員選挙で仲里氏の応援に力を入れていたとき、筆者は密着取材をしていたが、翁長知事は「『オール沖縄』の原点と言えるのが仲里先生の存在です」と街頭演説で強調していたものだ。

 県議会議長当時の仲里氏は、軍の関与による集団自決の記述を削除させようとする教科書検定に抗議して開催された県民大会(11万人以上が宜野湾海浜公園に結集)の実行委員長だった。

 まさに超党派で県民が団結する運動の先頭に立ち、リーダーシップを発揮し、大会を成功させた。

 先島諸島への自衛隊配備にも当初から反対の意思を表明し続けている稀有な保守政治家である。沖縄戦体験者として恒久平和を希求してやまず、戦争に繋がるあらゆる動きを憎む、そういう沖縄ならではの良心的保守の代表のような存在だ。

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