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刑法の性犯罪規定、6年ぶりの大幅改正

小川たまか・ライター|2023年6月26日7:00AM


 6月16日、性犯罪の規定を見直す刑法の改正案が参議院本会議で可決、成立した。刑法の性犯罪規定は2017年に110年ぶりに大幅に改正されており、6年ぶりの改正となった。まず今回の改正までの経緯を振り返ってみたい。

 17年の改正は、量刑の引き上げ(懲役3年以上から5年以上へ)、親告罪から非親告罪化、強姦罪を強制性交等罪へ(いわゆる〝男性も被害者に〟)、監護者性交等罪の創設などがあったものの、議題の項目に上がっていた性交同意年齢の引き上げや暴行・脅迫要件の緩和もしくは撤廃、公訴時効の延長などについては軒並み据え置きとなっていた。一方、3年後を目処に再改正が必要かを検討する附帯決議がついた。

 同年7月に性暴力の被害当事者団体を中心とする一般社団法人Springがさらなる改正を目指して活動を始めるなど、再改正を求める動きは当時からあった。さらに、この年の秋に「#metoo」が始まり、また19年3月には4件の性犯罪無罪判決をきっかけとするフラワーデモが始まるなど、性暴力に関する話題や報道が増えたことが後押しとなった。

 4件の無罪判決の中でも特に、名古屋地裁岡崎支部判決は世論に衝撃を与えた。中学生の頃から実父から性虐待を受け続けていた19歳の女性が、実父からの性交渉を拒めたこともあったため「凖強制性交等罪」の構成要件である抗拒不能の状態には足りないと判断されたための無罪判決だった。性犯罪の被害者が直面する法の壁が目に見えるかたちで明らかになった判決だった。この裁判を含め、4件中3件はその後高裁で逆転の有罪判決が出ている。

 署名活動やロビイングの成果があってか、20年3月に再改正へ向けての検討会設置が決定。検討委員には、性虐待の当事者でありSANE(性暴力被害者支援看護職)の資格を持つ山本潤さんも選ばれた。この後、法制審議会での議論も経て、改正案の要綱がまとめられていた。

 今回の改正では、これまでの強制性交等罪・強制わいせつ罪と凖強制性交等罪・凖強制わいせつ罪が不同意性交等罪・不同意わいせつ罪に統合・改称され、罪が成立するための構成要件も8項目に明確化された。これまで13歳だった性交同意年齢が16歳に引き上げられ、13歳〜15歳については年齢差4歳以下については処罰対象外とする年齢差要件がついた。

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