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命を左右する改正入管法が成立 送還される人たちの運命は

樫田 秀樹・ジャーナリスト|2023年6月7日11:19AM

「僕たちは犯罪者じゃない」


 そして入管法改正案は親子も引き裂く。

 仮放免の両親から生まれた子どもや、幼少期に日本に帯同してきた子どもは、自動的に仮放免者として扱われている。子どもたちは思春期になると、自分がいくら進学しても就職できないとの諦めから高校以上の進学は、きわめて少ない。

4月24日、クルド人の子どもたちが自主休校してまで参議院会館の集会に参加し、「自分たちを還さないで!」と訴えた。(撮影/樫田秀樹)

 それでも、いつかは在留資格をと諦めずに進学をした1人がトルコ国籍のクルド人のラマザンさん(25歳)だ。高卒後に自動車整備学校に進学し、在留資格を求める裁判を起こし、21年に在留特別許可を得た。

 そのラマザンさんは、5月25日に開催された参議院法務委員会に初の元仮放免者の参考人として招致され、居並ぶ与党議員や日本維新の会の議員たちにこう問いかけたのだ(概要)。

「妹は、日本で2009年に生まれました。日本で生まれたにもかかわらず、仮放免になりました。両親が仮放免だからという理由で、理解ができませんでした。今から5、6年前に裁判をやることにしました。そして、私と弟は在留資格が出るが、妹と親は出ないことになりました。日本で生まれた妹こそがもらうべきです。なぜここまで苦しめられるのか分かりません。あなた方の子どもは、無理やり引き離されて、あなた方と別の国で生活できますか。私は今日、かつての私と同じ立場で苦しんでいる大勢の子どもたちのためにここに来ました。彼らは、法案が通ったら送還されるのではと怯(おび)えていることを知ってください。私も、家族が送還されてバラバラになるのではと不安です」

 実際、在留資格のない子どもたちも怯えていて、4月24日、参議院議員会館で、約10人の小学生から高校生までのクルド人の学生による改正法案への反対を訴える院内集会が開催された。

 平日だったが、子どもたちは心配のあまり、自ら学校を休んでこの集会に懸けたのだ。

「行きたい大学は絞り込んだのに、このタイミングで行ったこともないトルコに送還されれば、ゼロどころかマイナスからの勉強になる」(高校生女子)。

「トルコ語を話したこともなく、文化もわからない。日本が生きる土台です。日本で自分の人生を築きたい。助けてください」(中学生女子)。

「僕たちは犯罪者ではない。普通に暮らしたいだけ」(小学生男子)。

 私たちの社会は、子どもたちにこんな訴えをさせている。

 この子たちは、親や兄弟から引き離されるかもしれず、これまでの勉強がすべて無になるトルコに帰されるかもしれない。

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