考えるタネがここにある

週刊金曜日オンライン

  • YouTube
  • Twitter
  • Facebook

【タグ】

生活保護費引き下げ取り消し訴訟、初の二審で原告敗訴 大阪高裁“逆転判決”の不可解

三宅勝久・ジャーナリスト|2023年5月2日7:00AM

原告逆転敗訴の「不当判決」を報告する弁護団。4月14日、大阪高裁前で。(撮影/三宅勝久)

 デフレなどの影響を口実に厚生労働省が生活保護費の基準額を引き下げたことの違法性を問い、生活保護利用者が所管の自治体や国を相手に全国各地で起こしている「いのちのとりで裁判」(尾藤廣喜・全国弁護団代表)の初の控訴審判決が4月14日、大阪高裁(山田明裁判長)であった。一審の大阪地裁(2021年2月22日、森鍵一裁判長)は、基準額引き下げの根拠とした物価データは信用性を欠くとして処分の取り消しを命じたが、大阪高裁はこれを破棄する原告逆転敗訴を言い渡した。原告団は「司法の役割の放棄だ」と強く批判。上告して争う構えだ。

「いのちのとりで裁判」は生活保護利用者1000人以上が原告となり、14年から18年にかけて全国29地裁に提訴。これまで19地裁で判決が出ており、4月13日の大津地裁では原告が敗訴したが、一昨年から今年にかけては9地裁(大阪、熊本、東京、横浜、宮崎、青森、和歌山、さいたま、奈良)で原告が勝訴した。初の控訴審となる大阪高裁も原告勝訴判決を下す可能性が高く、焦点は早期解決に向けた政府の姿勢に移るとの見方が強かったが、期待は裏切られた。

 最大の争点の一つが、厚労省の用いた「生活扶助相当CPI」という物価指数の信頼性だ。同省は08年から11年にかけて物価が4・78%下落したとして「デフレ調整」の名の下に保護費を引き下げた。だが総務省の消費者物価指数を使って計算すると下落率は2・35%。大きな開きが出た理由を探ると奇妙な事実が浮かんできた。

 まず「生活扶助相当CPI」自体の不可解さだ。厚労省独自の指数で、当時の基準改定で初めて用いた。しかも生活保護基準部会という専門家集団があるのに、その検討を経ていない。指数の出し方も不自然。テレビ、パソコンといった、価格下落が著しく、かつ生活保護世帯が日常的に買わない品目をあえて抽出している。

「CPI」以外にも不自然な点は多数あった。自民党が生活保護費引き下げを選挙公約にしていたこともあり、数字の操作が疑われた。

【タグ】

●この記事をシェアする

  • facebook
  • twitter
  • Hatena
  • google+
  • Line

電子版をアプリで読む

  • Download on the App Store
  • Google Playで手に入れよう

金曜日ちゃんねる

おすすめ書籍

書影

黒沼ユリ子の「おんじゅく日記」

ヴァイオリンの家から

黒沼ユリ子

発売日:2022/12/06

定価:1000円+税

書影

エシカルに暮らすための12条 地球市民として生きる知恵

古沢広祐(ふるさわ・こうゆう)

発売日:2019/07/29

上へ