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トルコ・シリア大地震 死者4万人超  緊急支援に入った高遠菜穂子さんたち

本田雅和・編集部|2023年2月23日7:00AM

特定のビルだけが倒壊

 街に入ると、日本ではマンションと呼んでもいい高層アパート型集合住宅を含む、9~10階建て程度のビル9棟が「パンケーキが上から圧し潰されたかのように」ぺしゃんこになっていた。それも隣接するビルは倒壊していないのに、立ち並ぶビル群の中で歯抜けのように特定のビルだけが倒壊。一面が壊滅状態の震源地周辺とディヤルバクルとの大きな違いだ。


 目撃者によると、大きな揺れは2回来て、まず下層階か上層階の構造上弱い方が半分崩れ、続く揺れで残りがへしゃげたという。


「何でこんな変な壊れ方をしているのだろうって最初は不思議に思いました。特に1階にある店舗部分とかが完全に潰れているのですが、聞いてみると、柱を取っ払うとか勝手な改装みたいなことをしていたことが原因らしいのです」


 倒壊したビルの前では、行方不明者の家族・親族や友人・知人ら。がれきの中から救出される人々を待ちつつ焚き火をしながら、レスキュー隊や消防員らの作業をじっと見守る。夜間は零下5度にもなる路上で寝泊まりしながら家族の生還を待っている人もいた。「このアパートには親族20人が住んでいたが、まだ1人も見つかっていない」と嘆く人も。非常階段で発見された遺体も数体もあり、避難途中に建物が崩れたことを示していた。


 時折、「車のエンジンを切って!」という指揮官の声が周辺に飛ぶ。がれきの中からかすかに聞こえる人の声を聞き分けるためには、静寂の中での作業が必要なのだ。震源に近い場所でも連日、がれきの中から生存者発見のニュースが流れる中、しかし、遺体の発見数は増えていく一方だ。

倒壊なくても居住不可に

 倒壊を免れた建物も、建築家やエンジニアによる専門家調査団が1日調べただけで市内の1000棟以上が柱や壁面など構造体の損傷で「倒壊の危険」とされ「立ち入り禁止」「居住不可」の措置を受けた。現状では数千棟か1万棟を上回ったかはわからないが、住居を失った被災者は増え続ける。


 市内には、小学校やコミュニティセンターなどに130カ所以上の避難所が設置されている。それでも足りないため、親族宅などに身を寄せられない人たちは零下の野外での車中泊や、被災者用に開放されたカフェやレストランでの寝泊まりをしている。

炊き出しのスープを受け取る被災者の高齢男性。


 学校の避難所も、一つの教室に30人ぐらいが、並べた机に毛布を敷いてベッドにして眠ったりしているが、特に高齢者にはつらそうだ。トイレも非常に非衛生的な状態になっているという。高遠さんらは避難所をまわってニーズ調査を実施。「一番リクエストが多かったのが衛生用品。オムツ、ミルク、女性用の生理用品……。学校の教室での寝泊まりなどは、夜間の冷え込みが厳しく、下着を要望する声も強かった」という。


 高遠さんらは市内でオムツ200枚、生理用品800パックなど46万円分購入。大型ワゴン車で避難所へ運んだ。協力してくれたのは、現地の80以上の市民団体、女性団体、弁護士会などでつくるプラットフォーム。備蓄倉庫を持ち、支援物資はいったんそこに入れてそこから3000人ほどのボランティア活動家が各避難所に配布していくという態勢だ。メンバーの中には、自宅の損壊で帰宅できない人もいる。

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