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入管問題も選挙の争点に! 
【対談】階猛・立憲民主党前衆議院議員×中島岳志・東京工業大学教授

階猛×中島岳志|2021年10月18日1:31PM

ウィシュマさんの遺族とその代理人(左)。代理人が、ウィシュマさん死亡事件に関連する公文書の開示請求を行なったが、8月に開示された1万5113枚の文書は、“意味のある部分“はすべて黒塗りだった。(撮影/渡部睦美)

【ウィシュマさんを映した拷問のようなビデオ内容】

中島 開示されたビデオを見た弁護士は、「あまりにもひどい内容だった」と言っています。そこに映し出されたウィシュマさんは、食べては吐き、食べては吐きを繰り返し、亡くなる前日には「あーあーあー」という悲鳴を上げていたそうです。そして亡くなる当日の3月6日、入管職員が名前を呼んでも返事がなく、動かなくなっても、職員は「指先がちょっと冷たい気もします」と部屋の外に報告したり心臓に耳を当ててみたりしていて、救急車をすぐに呼ぼうとしない、という姿がビデオに映っていたそうです。こんなことがあっていいのかと、怒りで手が震えました。

 ビデオを見た弁護士から直接聞いたのですが、入管職員は、ウィシュマさんの口に無理やり食べ物を押し込み、吐き出して口が汚れているところに、また食べ物を押し込むことを繰り返していたそうです。これは拷問ですよ。許されてはいけない行為です。ビデオの一部を見た遺族が、具合が悪くなって途中で見ることができなくなったのは当然です。

本来であれば、ショックの大きい映像を見せる場合、心理カウンセラーや代理人弁護士などの同席が必要でしたが、認められませんでした。あまりにも無配慮です。

ビデオを開示しない理由として入管は、保安上の問題やプライバシーの問題と言ってきましたが、遺族も開示を希望していますし、ビデオは必要に応じてぼかしを入れたりすればいいだけのことです。死者の尊厳については、遺族が決めることであって、入管が決めることではありません。要はあまりにもひどい映像なので見せられないのです。

とにかく人権意識の欠如が著しい。入管に対して正常な判断を期待できないような状況ですので、ビデオの開示は国会がしっかり判断しなければなりません。私は全力で闘っていきます。

遺族に初めて会ったのはウィシュマさんの葬儀の時です。私は遺体と対面しましたが、写真のイメージとはあまりにかけ離れた姿でショックを受けました。遺族の気持ちを考えると、本当にいたたまれませんでした。

とにかく、ビデオの開示を行ない、真相究明しなければならない。8月には法務省「出入国在留管理庁調査チーム」がウィシュマさんに関する最終報告書を出しましたが、死因すら不明のままでした。言語道断です。死因を含めて真相解明することが、ウィシュマさんの死を無駄にしない第一歩です。そして入管行政を抜本的に改善していかないといけません。

中島 入管行政を、これからどう抜本的に改善していくべきと考えていますか。

 一つ明るい兆しが出てきたのは、スリランカに強制送還された男性2人が国に損害賠償を求めた裁判で、入管が強制送還したことは違憲であるとの判断を、今年9月に東京高裁が出したことです。2014年、男性2人は、難民不認定処分への異議申し立ての棄却決定を告知された翌日に、強制送還されたそうです。決定は告知よりも40日以上前に出ていたにもかかわらずです。難民申請が不認定となっても、異議申し立てや不認定取消訴訟ができます。しかし、異議申し立てが棄却されても、訴訟の権利はあったのに、2人は裁判に訴える時間的猶予がないまま、強制送還された。このため、憲法32条で保障する「裁判を受ける権利」の侵害、個人の尊重を定める憲法13条違反として、国に賠償を命じました。国は上告を断念し、判決が確定しました。

これまでは外国人の人権について、在留資格がなくなると、憲法が定める基本的人権の保障が事実上なくなってしまうという、1978年の「マクリーン判決」というものがありました。しかし、今回の判決で、在留資格がなくなった人でも、人権規定が適用されることが示されました。「人権がないんだから入管は何をやってもよい」なんていう理屈はもう通用しません。違法です。ここを明確にし、基本的人権の尊重に基づいた入管行政に変えていき、そのための法律にする必要があります。

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