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新型コロナ、重傷除き自宅療養原則化は「治療放棄」との批判

吉田啓志|2021年8月24日7:41PM

政府は8月初め、新型コロナウイルス感染症の患者について、急増地域では入院対象を重症者や重症化の恐れが強い人に限り、基本は自宅療養とする方針に切り替えた。東京などで逼迫してきた入院病床を確保する狙いだが、家に留め置かれる患者の命を危険にさらしかねない。「治療放棄だ」との批判を踏まえて一部修正はしたものの、野党などからの撤回要請は突っぱねた。

根底には「ワクチン接種が進めばコロナもインフルエンザ同様、自宅療養が基本になる」との考えがある。官邸官僚の一人は「患者の中心が高齢者から死亡リスクの低い若者に移った以上、誰でも入院できる方針は変えるべきだ」と言う。しかし、今回の入院基準の変更は、ワクチン不足にあえぎ、感染者急増に慌てふためいた末の弥縫策というのが実情だ。救える命を救えない事態が起きたら取り返しがつかないことになる。

厚生労働省はコロナの症状に関し、(1)軽症(せきなど)(2)中等症Ⅰ(肺炎で酸素投与は不要)(3)中等症Ⅱ(酸素投与が必要)(4)重症(人工呼吸器が必要)――の四つに分類している。2日に発表した当初方針は「入院は重症患者や特に重症化リスクの高い者に重点化する」。中等症の扱いに触れていなかったことから、国が中等症患者を見放したと受け止められた。

野党は「自宅療養者の重症化リスクを判断できるのか。自宅で亡くなるリスクが高まる」(立憲民主党の山井和則氏)「自宅療養が原則なら治療のスタートが遅れる」(共産党の宮本徹氏)と責め立てた。与党からも「酸素投与が必要な中等症を自宅で診るのはありえない」などの批判が相次ぎ、撤回を迫る声が出ていた。

8月5日、国会内であった政府・与党コロナ対策連絡会議。坂井学官房副長官は出席者に政府方針の修正案を配った。国の通知に添える文書で「酸素投与が必要な中等症、投与不要でも重症化リスクのある患者は入院可」「入院の有無は最終的に医師の判断」などと加筆されていた。会合では政府の情報発信に対する不満は飛び出したものの、修正内容は了承された。

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