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高齢者ワクチン接種「7月末完了」に根拠なし 
五輪意識の菅首相に自治体は強い不満

吉田啓志|2021年6月10日6:42PM

【場当たり的対策で混乱も】

自治体が懸念するのは打ち手の確保だ。国は看護師免許を持ちながら離職している「潜在看護師」、歯科医、救急救命士、臨床検査技師の動員を決めた。減収を不安視する開業医対策として、接種を多くこなせば月に180万円程度の増収となる支援策も採り入れた。

だが問診などで接種の可否を判断する予診の人手も足りない。予診は医療行為であり、医師にしかできない。一連の対策について厚生労働省幹部は「蓋を開けないと何人集まるか分からない」と話す。

場当たり的な対策は現場に混乱をもたらしている。関東に住む潜在看護師の60代の女性は「5月の連休ならお役に立てると思ったのに。ガッカリです」と肩を落とした。4月20日、日本看護協会から「打ち手募集」のメールが届き、連絡先一覧にあった地元の県協会に電話すると「どこからの話? 募集などしていませんよ」と断られた。当時はワクチンの入荷見通しが立たず、自治体も打ち手の求人を出せずにいた事情があった。

そもそも首相が「7月末」にこだわるのは7月23日からの東京五輪を意識してのこと。コロナ禍を収めて五輪を開催、熱気の余韻が残るうちに衆院を解散して野党を下し、9月末に任期満了を迎える自民党総裁選での再選を見据えていると目されている。

それでも医療の逼迫状況は今なおやまず、感染力の強いインド型の変異ウイルスがじわりと広がりつつある。緊急事態宣言が再び延長される中、内外からの五輪中止圧力は日に日に高まっている。

(吉田啓志・『毎日新聞』記者、2021年6月4日号)

 

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