【タグ】DHC|ニュース女子|ヘイト|一色啓人|長谷川幸洋|高江ヘリパッド
「ニュース女子」訴訟が問う日本社会の構造
阿部岳|2021年5月5日1:35PM
番組は沖縄の高江ヘリパッド建設に抗議する市民を「テロリスト」と中傷し、辛さんがその資金源、「黒幕」であるかのように名指しした。地上波の影響力は想像以上に大きかった。脅迫が身近に迫った。
心身への打撃は深刻だった。味覚を失い、何度も吐き、眠れず、やっと寝たかと思えば追いかけ回される悪夢に襲われた。2年間、ドイツに逃れざるを得なかった。
訴訟に勝ったところで、差別者が悔い改めることはないと分かっている。万が一負ければ、ヘイトはさらに悪化するだろう。それでも辛さんは提訴に踏み切った。
たまたまひどい番組があったから、ではない。日本社会全体がひどい。差別者たちが大手を振って歩けるひどい差別構造がある。
デマやヘイトを公権力が公認し、後押ししている。沖縄の異議申し立てが外国勢力に操られているかのように描いた番組と同じデマを、公安調査庁や国会議員が唱和している。
辛さんは法廷で、裁判を起こした理由をこう表現した。「きちんと記録しておきたかった。日本の良心が今、どこにあるのか」
(阿部岳・『沖縄タイムス』記者。2021年4月2日号)
※大型連休にあわせて過去記事を掲載します。