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北陸新幹線延伸のための地下トンネル工事で京都住民の不安高まる

土岐直彦|2021年3月16日3:26PM

【京文化の源泉を脅かす?】

さらなる懸念は他地域の地下工事でも見られる地下水の枯渇や濁り、水道の変化による悪影響だ。京都盆地の下にある「京都水盆」は琵琶湖に匹敵する巨大な水がめ。良質で豊富な地下水が茶道や京友禅(水洗い工程に必要)、伏見の酒造り、京豆腐といった「水の文化」を育んできた。鉄道・運輸機構による地域説明会でも地下水への悪影響を心配する声が出た。府も適切な対処を求めている。

井戸水が「命」の伏見酒造組合(23社)は小浜・京都ルートに決まった際、トンネルは伏見地区を避けるように府と市に陳情した。豆腐業界はトンネルが通る深さ付近からの井戸水が多いと話す。

2月中旬、「環境影響評価(本調査)の一旦停止を求める会」が左京区内で初めて開いた市民学習会。「豊富な地下水や井戸水が下鴨神社・糺の森(古代の原生林が残る)や深泥池(氷河期以来の動植物が生息)などの貴重な自然や、酒造り・豆腐屋さんを守ってきた。無謀な計画はストップさせたい」「京都の水の文化を守る市民運動の展開が必要」との声が出た。

「求める会」は、工事残土は周辺に与える影響が極めて大きいのに鉄道・運輸機構には排出、処理の展望がないと追及。大深度地下を「私権が及ばない」と用地交渉や補償なしで利用できる仕組み自体の問題性を指摘する。昨年秋、東京外郭環状道路の大深度地下トンネル工事(40メートル以深)をめぐって、東京都調布市で道路の陥没や地下の空洞が相次いで見つかった事例はよそ事ではない。

同会の榊原義道事務局長は「市内には延伸計画に反対する市民グループ立ち上げの動きが他にも出てきた。府北部の2団体とも連携し、市民学習会を地域ごとに開いて運動の輪を急いで広げる。自然や住民の生活環境を壊してまで本当に必要なのか。問題だらけの計画の妥当性を問うていく」と話す。

(土岐直彦・ジャーナリスト、2021年3月5日号)

 

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