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「非常事態のシミュレーションしていない」 
防衛省が自衛隊配備問題めぐり仰天発言

2020年4月9日5:10PM

2月11日、石垣島で市有地の売払い・貸付けなどに抗議するデモが行なわれ、100人超の市民が参加した。(提供/石垣島市民)

【石垣島 無視された請願】
配備予定地に弾薬庫4棟の設置が計画されている石垣島では、市政や議会のあり方が根本から破壊されるような事態になっている。

石垣島駐屯地(仮称)は約46ヘクタール(ha)で、約半分にあたる22・4haが市有地だ。市民の財産であるので慎重な審議が必要とされるが、市職員からなる公有財産検討委員会は今年2月5日、市側と沖縄防衛局側の不動産鑑定を参考にするのみで、外部専門家の意見を聞くことなく、市有地の売払いと貸付け、取引金額を決定したと発表した。議事録も作成しておらず、審議内容は不明だ。

公有財産検討委は昨年6月からのわずか3回の審議で今回の結論を出したが、今回の審議にあたっては、あらかじめ議事録を作成しないと委員会内で申し合わせていたことも3月定例会で判明した。

公有財産検討委の資料などによると、売払い部分は約14ha、総額約4憶1770万3800円。貸付け部分は約9ha、金額は年間約855万円だ。売払いは市議会での議決が必要で、貸付けは市長決裁のみ求められる。売払いについては、同委員会が売払いの決定を市議会3月定例会で提案し、3月2日の本会議で、賛成11、反対9という僅差で可決・承認された。

ここまでの過程での大きな問題は、本会議に先立ち、議会が自衛隊配備に関する審議を付託した2月27日の特別委員会においても、十分な議論や審議がなかったことだ。公有財産検討委での審議内容を明らかにし、配備の是非を問う住民投票の実施をするなど市民の意見を聞いた上で、市有地の処分を決めるべきだなどとする市民からの請願2件が事前に議会に提出されていたが、これの審議も後回しにされた。ついには野党委員4人が抗議の意味で一斉に退席する事態に発展したが、特別委は与党系議員のみで採決・可決した。

3月2日の本会議では、この特別委での可決結果を承認するかが問われ、反対討論に立った配備予定地近隣に住む花谷史郎市議は、「少しでも市民のことを考えるなら、丁寧に説明するくらいはやるべき」「住民投票も環境影響評価もしないまま、先輩方から受け継いだ農地や生活環境を近隣住民から奪うんですか」と、涙して訴えた。しかし、「賛成多数」で可決された。

さらに2月27日に開催された総務財政委員会では、売払いで石垣市が得る利益をすでに歳入(不動産売払収入)に盛り込んだ19年度補正予算が、可決された。

議会が閉会してすぐの3月19日には、市は防衛局と市有地売払いの契約を結んだ。市民の請願は後回しのままであり、野党議員らは23日、特別委の委員長宛てに、特別委を早急に開催し請願を審議するよう求める要請書を提出した。

市議会野党連絡協議会会長の宮良操市議は、「20年以上議員をしてきたが、前代未聞、あり得ない状況で今回の議会が終わった。横暴な市政運用が続いてきたが、まさにその最終段階ではないか。自治の崩壊だ」と話す。配備予定地近隣の嵩田地区でマンゴー農家を営む「石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会」共同代表の金城哲浩さんは「なぜ防衛省の意向が最優先なのか。市長も議会も、本当に石垣市民の代表なのか。先輩方が守ってきたこの土地は誇りですが、このままでは危ないなと感じる。大切なものがおろそかにされていく……」と声を詰まらせた。審議再開が急務だ。

(週刊金曜日取材班、2020年3月27日号)

 

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