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ハンセン病家族訴訟、政府は控訴せず 
安倍首相が謝罪

高波淳|2019年8月6日10:31AM

首相談話後の原告会見。マイクの男性が林力さん。その左隣は黄光男さん。(撮影/高波淳)

ハンセン病患者への誤った隔離政策で家族への被害があったと認め、国に賠償を命じた「家族訴訟」の熊本地裁判決(6月28日)で政府は7月9日、控訴しない方針を決めた。控訴期限だった12日、安倍晋三首相は家族への謝罪を盛り込んだ談話を発表。原告側も控訴せず、判決が確定した。

安倍首相は9日、「筆舌に尽くしがたい経験をされたご家族のご苦労を、これ以上、長引かせるわけにはいかない」と表明した。これを受け同日、原告側は国会内で会見。首相が原告に会って被害を直接聞き謝罪することや、被害者全員への一括一律の被害回復制度を早く設けるよう求めた。

9日の会見で、父が療養所に入所し、人生が劇変。結婚して生まれた娘にも父の存在を隠した原告団長の林力さん(94歳)は「隠す必要がなくなったよと父に手を合わせて報告したい」。生まれて間もなく両親や姉が収容され、家族というものが長い間よく理解できなかった副団長の黄光男さん(63歳)は、その後、両親が相次いで自ら命を絶った。「家族が断絶されたままの関係の人がたくさんいる。国は関係性を取り戻す責任が生じた」と語った。

4歳の時に両親が収容され、自身も差別事件にあった奥晴海さん(72歳)は、判決が言い渡された6月28日が母の命日。「両親が喜んでくれていると思った」。子どものころ父親が収容された後、母に「死のう」といわれた経験を持つ原田信子さん(75歳)は「首相と会って私たちがどんな苦労をしたか話したい」と話していた。

首相談話は隔離政策下、患者・元患者だけでなく家族に対しても極めて厳しい偏見、差別が存在したのは厳然たる事実と認め「政府として改めて深く反省し、心からお詫び申し上げます」と謝罪。訴訟への参加・不参加を問わず家族を対象に補償の措置を講ずるとし、首相は家族と面会する意向だ。

(高波淳・記者〈朝日新聞社社友〉、2019年7月19日号)

 

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