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〈参院選公示前緊急対談〉
消費税減税を野党は打ち出せ

雨宮処凛 中島岳志|2019年7月3日6:02PM

参院選の公示日が迫っている。今、多くの人が気にかけているのは今年10月に予定されている消費税増税の問題だ。野党が参院選で支持を集めるには、消費税減税を打ち出す、この道しかない。

中島岳志(なかじまたけし)東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授、本誌編集委員。1975年、大阪生まれ。ヒンディー語専攻。インド政治や近代日本の思想史を研究。著書に『中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義』(2005年、白水社)、『「リベラル保守」宣言』(13年、新潮社)、『自民党 価値とリスクのマトリクス』(19年、スタンド・ブックス)など。

中島 参院選の最大の争点は「格差」だと思います。 第2次安倍政権になってからの約6年半で格差が広がっています。
安倍政権の経団連(日本経済団体連合会)中心主義は一目瞭然で、「目先の株価を上げろ」とさまざまな公的資金を投入してきました。今、年金が問題になっていますが、年金の原資を使ったのは安倍政権ですよね。さらに、大企業優遇の法人税を進め、逆進性の強い消費税の増税も2014年に断行しました。一見、景気が良いように見えるのは、輸出が好調だからです。その貯金も米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席の争いによって陰りが見えてきています。それが世界の趨勢です。
こんな中で安倍政権はまた逆進性の強い消費税を上げて、まだ大企業を守ろうとしています。今回の参院選は、それに対する「反乱」と位置づけなければいけません。左右対決ではなく上下対決=「格差」の問題であるということ。この問題の一番中核にあり、みんなの生活に関わっているのが消費税です。野党が訴えていくべきはここではないでしょうか。

消費税減税で共闘を

雨宮 私は貧困や格差の問題にずっと関わってきて、給料日前日には小銭しかない人たちの実態も見てきました。消費税増税を進める人たちは、そういう実態をまったく見ていません。一方で、野党はこの間ずっと負け続けているので、何らかの「勝てる政策」を出していかなければいけません。それが消費税の問題だというのはその通りだと思います。「れいわ新選組」の山本太郎さんは消費税の減税・廃止を訴え続けていますが、廃止まではいかなくても、減税で野党が山本さんと手を組むことは現実的ではないでしょうか。
山本さんは、私や中島さんと同じ44歳前後のロスジェネ世代です。ロスジェネの下のほうは30代で、最近、安倍政権が「人生再設計第一世代」と呼び直して限定的な言い訳程度の“支援”を進めようとし、問題が再燃しています。
私自身は、ロスジェネの問題に12年関わってきました。若者の問題、少子化の問題でもあるので、運動を始めた当初は、「こんな『ボリュームゾーン』世代を見捨てるはずがない、言えば変わる」と思っていました。しかし、実際には無視され、裏切られ続けてきました。第2次安倍政権になってからは、ひどい法律もたくさんできて、「次負けたらどうなるんだ……」という崖っぷち感があります。

中島 そうですよね。年金問題は重要だが、ロスジェネ世代にとってはまだ遠い話です。一方、消費税は圧倒的に全世代の問題です。消費税が10%に上がるのか、5%に下がるのかは、とても大きい。たとえばこれから夏が来て、熱中症のリスクが高まりますが、「このクーラーのスイッチを押すか否か」ということに関わってくる問題です。いくら「実質賃金を上げろ」と政府が言っても、最終決定するのはそれぞれの企業で、そこに政府は介入できないわけです。
消費税を3%下げれば、賃上げと同じ効果がある。自民党に投票する人を含め、中間層にとっては大きいと思います。消費税減税を途方もない政策だと言う人たちもいますが、カナダは近年、消費税率を下げています。世界では選択可能な政策なのに、日本では「突拍子もない政策」と考えられてしまうこと自体が、世界と少しずれていると思います。

雨宮 野党は過去に、社会保障の充実のため増税を主張してきて、負け続けた前例もありますよね。

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