原発事故から「最短潜伏期間」が過ぎ、
福島県で胃がんが「有意な多発」
2019年6月6日12:26PM
男女ともに多発
15年の「全国胃がん年齢階級別罹患率」と福島県の同罹患率を比較してみたのが、この【表】である。男女ともにさまざまな年齢層で、全国平均を上回っている年齢階級が散見される。
そこで、全国と同じ割合で福島県でも胃がんが発生していると仮定して、実際の罹患数と比較する検証を行なった。疫学の手法で「標準化罹患率比」(略称SIR、standardized incidence ratio)を計算する方法だ。全国平均を100として、それより高ければ全国平均以上、低ければ全国平均以下を意味する。
福島県の胃がんについて、08年から15年までのSIRを計算してみた結果は、次のとおり。
【胃がん】福島県罹患数 SIR
08年男 1279 88・3
09年男 1366 94・1
10年男 1500 101・1
11年男 1391 92・2
12年男 1672 110・6
13年男 1659 110・9
14年男 1711 119・3
15年男 1654 116・6
08年女 602 86・6
09年女 640 94・2
10年女 700 100・9
11年女 736 100・9
12年女 774 109・2
13年女 767 109・9
14年女 729 109・0
15年女 769 120・3
国立がん研究センターでは、SIRが110を超えると「がん発症率が高い県」と捉えている。11年を境に、男女とも全国平均を超え始め、15年の女性では120を上回ってしまった。
次に、このSIRの「95%信頼区間」を求めてみた。これは、疫学における検証作業のひとつであり、それぞれのSIRの上限(正確には「推定値の上限」)と下限(同「推定値の下限」)を計算し、下限が100を超えていれば、単に増加しているだけではなく、確率的に偶然とは考えにくい「統計的に有意な多発」であることを意味する。