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【スクープ】死因不明の“福島病”を生み出してはならない
「急性心筋梗塞ワースト1」で福島県が放った奇策

明石昇二郎|2019年5月25日4:56PM

2回連続「ワースト1」

 そして15年のワーストランキングで福島県の急性心筋梗塞・年齢調整死亡率は、男性で人口10万人当たり34・7人(全国平均は同16・2人)、女性で15・5人(全国平均は同6・1人)となり、男女そろってワースト1を記録。この調査結果は2年後の17年6月、厚労省から公表された。報道でも取り上げられ、その結果、福島が急性心筋梗塞多発県であることが広く認知されてしまうこととなる。

福島県における急性心筋梗塞のピークは、表2からも明らかなように原発事故翌年の12年だ。その後は男女ともに下落傾向にあるものの、全国平均のほうがさらに下がったことで、福島県の“高値”が際立って目立っている。

全国ワーストランキングで2回連続最悪という事態を受け、急性心筋梗塞で亡くなる人を減らすべく福島県が取った対策は、驚くべきものだった。15年のワーストランキングが厚労省から公表された17年に同県内で死亡した人たちを県独自で調査。カルテ等を分析した結果だとして、同県の急性心筋梗塞による死者データには心筋梗塞ではない人が含まれている可能性がある――とする報告書を、3月25日に公表したのである。これでは厚労省への“異議申し立て”と受け取られても致し方ない。

案の定、NHKや地元紙は、
「急性心筋梗塞でない人も統計に」(NHK)
「急性心筋梗塞死との診断 一部は別の死因か」(『福島民報』)
「実際は判定不能多数」(『福島民友』)
などと報じた。

なかでもNHKは、同調査に参加していた福島県立医科大学災害医療部・島田二郎部長の、
「死因についてわからない場合は死亡診断書に不明と正確に書くべきで今後、医師にも共有したい」
とするコメントまで紹介した。

県も「統計不正」か

ただ、「独自調査」を実施したのは全県ではなく、県北地域の一部だけ。死亡診断書の「死亡の原因」欄などに急性心筋梗塞との記載があった260人を調べたところ、心電図などのデータで診断する世界保健機関(WHO)の診断基準「モニカ基準」(注)で「判定不能」となるものが約7割(177人)もあり、モニカ基準で「急性心筋梗塞ではない」と判定された人が14%(32人)。一方、別の死因に分類されていたが急性心筋梗塞と判定された人も4人いたのだという。

〔注〕モニカ基準 心血管疾患の原因を炙り出すべく世界各国の患者を10 年間追跡調査したWHO(世界保健機関)の疫学研究「MONICAプロジェクト」で使用された診断基準。厚労省が人口動態統計で用いているWHOの国際疾病分類(ICD)とは異なる。

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