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玉城知事、沖縄のチムグクル(まごころ)が辺野古新基地を止める!

2018年11月9日6:29PM

話し合いで解決を

告示直前、女性たちの大集会。妻や娘や孫たちに囲まれ、弾けるような笑顔を見せた。(撮影/渡瀬夏彦)

一方の安倍政権は、「辺野古移設が唯一の選択肢」であると言い、あくまで沖縄の民意を無視して新基地建設をゴリ押しする姿勢を崩していない。そんな思考停止に陥っている政府と、どんな「デニー流」の対峙の仕方をするのか。当然わたしは問わざるを得ない。するとデニー知事は、肩の力を抜いた自然な口調でこう答える。

「裁判では解決できませんよ、話し合いでしか結論は出せませんよ、まずは話し合いましょうね、という姿勢が基本ですよ。こちらがすべてさらけ出して握手を求めて近づいていくことは、ある意味では怖いことかもしれません。しかし、相手(政府首脳陣)だって怖いはずです。

これは国と国同士の話し合いでも当てはまることだと思います。たとえば、南北の首脳会談が板門店で行なわれたとき、二人が手を繋いで南北軍事境界線を跨ぎましたね、南から北へ、そしてこんどは北から南へ跨いでみせましたね。それはたしかにパフォーマンスであるかもしれないけれど、そのパフォーマンスから生まれる話し合いの心、空気というものがあるはずなんです」

デニー知事の凄みを見た気がした。安倍晋三首相や、菅義偉官房長官に自ら歩み寄って、話し合いの空気そのものを生み出していこうとする気概が垣間見えたのだ。

わたしは、「翁長さんの頑張りは凄いものでしたが、しかし、大きな枠組みの中で、耐えて我慢して非常に苦しんでおられるようにも見えました。デニーさんの大胆さには、ゾクゾクさせられますね」と述べた。デニー知事から返ってきた言葉がまたふるっていた。

「それはぼくが、一般人だからですよ。政治家の家庭に育ったわけでもないごく普通の人間だからだと思います」

なるほど、慣例や常識の枠を超える発想のしなやかさ。普通の人の感覚こそが、デニー県政の真骨頂となる予感さえする。

「僕自身は、特にハートが強いとか、意志が強いとか、そういう人間じゃありません。むしろ、なるべく穏便に、みんなが笑って楽しく過ごせればそれでいいと思うような、元々はそういうタイプの人間です。でもね、自分で考えて自分で決めたことは、大切にしたいと思う人間なんです。

そして、求められる立場に立ったときに、自分が何を言いたいのか、とことん考える。誰かから言われたからこれを言わなきゃいけない、とかではなく、言いたいことをきちんと言う。強さを見せなきゃいけない場面に立ったら、体を張る、その覚悟は、政治家として常に最低限持っているつもりです」

わたしたちが注目すべき点が見えてきたと思う。

これからデニー知事が、ブレない信念で、辺野古新基地建設を阻止するため、政府との交渉を始める。そのとき、このように真っ当で柔軟な沖縄県知事の姿勢を、これまでのように無視する政府であるか、否か。具体的には「沖縄の基地負担軽減」担当責任者である菅官房長官が、どのような態度で話し合いの場に出てくるのか、否か。わたしたちは、まずそこを厳しく監視しよう。

今後の県議会で、「辺野古」県民投票に関する条例が可決され、知事が投票実施日を決定する公算が大である。翁長前知事の遺志を継ぐデニー知事の誕生を、さらに強力に後押しする県民投票結果が出るかもしれない。そのとき政府が、まともな姿勢で向き合うのか、否か。全国の人びとは、一層厳しく政府首脳の振る舞いを監視しなければならない。

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