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国会議員や市民たちが参加した意見交換会。(写真/伊田浩之)

 遅くとも2020年から25年までの、できる限り早い時期に脱原発を目指す「脱原発基本法案」の意見交換会が10月26日、東京・参議院議員会館で約200人が参加して開かれ、総選挙で法案に賛成する衆議院議員を過半数以上にして成立させようと話し合った。

 同法案は、102人の国会議員の賛成・賛同を得て前通常国会で衆議院に提出され、継続審議中。意見交換会では、官邸前抗議行動を続ける首都圏反原発連合のメンバーから「脱原発の時期が遅すぎる」などの疑問が出され、法案提出の原動力となった「脱原発法制定全国ネットワーク」の鎌田慧代表世話人は「再稼働反対の運動から手は引かない。国会の外の運動で議員を突き上げ、法律化で産業界をあきらめさせるのが目的です」などと説明した。

 会場からは「脱原発統一候補を全選挙区で出していただきたい」「現状分析では法案に賛成は衆議院は177人で成立しない。次の選挙で多数派を形成するために、政党に頼るのではなく、市民の側から候補を絞る活動が重要」「ネットワークの最大の功績は、菅直人グループと小沢一郎グループを結びつけたこと」などの意見が出た。

 意見交換会後の会見で同ネットワークの河合弘之代表世話人(弁護士)は「力を合わせようという方向性が確認できてうれしい」と締めくくった。

(伊田浩之・編集部、11月2日号)

「アカウンタビリティ」が最初に政治の世界で用いられたのは、薬害エイズ事件の時だったと記憶する。証明責任を意味するこの言葉をしばしば口にしたのは、当時厚相だった菅直人氏だった。厚生官僚たちが存在を否定していた薬害の証拠である「郡司ファイル」を探し出させ、被害者たちに謝罪したことで、菅氏は一躍「首相にしたい政治家ナンバーワン」に躍り出た。

 それから一三年を経て民主党は政権を獲り、その一年後に菅氏は念願の首相に就任する。その在任中の昨年三月一一日に東日本大震災が起き、東京電力福島第一原発事故が発生した。

 前代未問の大災害の勃発に、当時の政府が対応に苦慮したのは報道されている通りだが、それが最善だったかどうかについては今後の検証に委ねられることになる。だがこの度、その資料となるべき議事録が欠落している事実が発覚した。

 今年一月二七日に内閣府が公表したところによると、同震災に対応する一五会議のうち原発事故経済被害対応チームなど五会議は議事概要を作成するも議事録はなく、政府・東京電力統合対策室と電力需給に関する検討委員会については議事概要も不完全、原子力災害対策本部と緊急対策本部、被災者生活支援特別対策本部については議事録も議事概要もないということだった。

 これについて公文書管理を担当する岡田克也副首相は一月二四日の会見で「事後的に(議事録を)作ることが認められないわけではない」としつつ、関与した者について「ただちに処分とかそういった話ではないように思う」と述べている。

 確かに公文書管理法によればそうなるだろう。では災害から一年近くたった今でもなお作成されていないのはなぜなのか。そもそも忙しさにかまけた単純な「不作為」なのだろうか。意図的な毀棄や隠蔽ではないのだろうか。そうなると事情が異なる。

 実際に菅政権は昨年三月二五日付で近藤駿介原子力委員会委員長が「福島第一原子力発電所の不測事態シナリオの素描」を作成していたのに、それを隠蔽していた事実がある。

 これには今年一月六日の会見で細野豪志原子力行政担当相は「公表することで必要のない心配を及ぼす可能性があり、公表を控えた」と弁明している。だがこの判断には疑念が残る。政府は意図的に放射能被害を軽く見ようとしていたのではないか。

 昨年三月一七日に駐日米国大使館が米国民に対して福島第一原発から八〇キロ以内からの退去勧告を出したが、この時に日本政府が出した避難指示の範囲は二〇キロであったのも、隠蔽ではなかったのか。

 もっとも議事録の欠如については「かなり厳しい環境の下で、権限関係が必ずしもはっきりしない、新しい組織を立ち上げた中で起こった不幸な事件」(岡田副首相)とする意見もある。だが問題はその体質が「平時」においても見られることだ。

 たとえば年金財政試算に関する政府・与党三役会議だ。一月二九日の会議の後、樽床伸二幹事長代行は記者に尋ねられて、議事録を作成していないことを白状した。輿石東幹事長も一月三〇日の会見で「党主催の会議ゆえに、公文書管理法の対象外。公表することは考えていない」と明言した。

 しかし年金問題は国民の重要な関心事であり、たとえ消費税と直接かかわりがないとしても、増税問題と切り離せるはずがない。しかも「年金制度は四〇年かけて制度を変えるもの」(輿石東幹事長)ならばなおさら公文書でなくても公表すべきではないか。それが政治のアカウンタビリティというものではないか。

 年金の試算については昨年すでに厚生労働省によるものが出ているのに、今回もこれを出さないとしているのは自分たちに都合が悪いからではないか。その態度に初心を忘れ、「よらしむべし知らしむべからず」という政権与党ゆえの驕りがあるように感じられて仕方ないのは筆者だけではあるまい。

(天城慶・ジャーナリスト、2月3日号)

 一〇月三一日、日越政府は「ベトナムの原子力発電所建設に係る協力」に関する文書を取り交わした。

 菅直人前首相のトップセールスで原子炉二基の建設に合意したのが昨年。(1)事業化調査、(2)融資、(3)安全・先進的な技術の提供、(4)人材育成、(5)使用済み燃料及び廃棄物管理、(6)燃料供給の六分野で協力を行なうとしたが、福島第一原発の事故後は協議が止まった。

 ところが、野田佳彦首相は合意を見直すどころか、原子力の平和的利用や原子力損害賠償に関する法整備、事業地決定、環境影響評価をベトナム政府が行なう約束を取りつけ、国内外からの批判を浴びている。「原発いらない全国の女たちアクション」は原発輸出方針の転換、実施中の実行可能性調査の打ち切りなどを求める署名を一日で六六〇〇筆以上集め、枝野幸男経済産業相らに提出した。 

 ベトナムの隣国、タイからも続々と異論が届いた。「東北タイ資源・環境ネットワーク」は、「日本政府と東京電力の責任ある行動を待ちわびている最中に原子力技術を確約することは、恥ずべき行為」であると断じた。タイにも一七カ所の原子力発電所計画があり、ベトナムと国境を接しているので他人事ではない。「原子力監視ネットワーク」は「日本政府の行動は、ベトナム周辺国の国民に対するテロ計画にも匹敵する」との批判を野田首相に送った。

 メコン川流域を対象に活動する環境NGOメコン・ウォッチの松本悟顧問は、「今回事故を起こした福島第一原発の一号機と二号機は、一九六〇年代に米国輸出入銀行の融資で建設された。米国の原発輸出政策で建設され、四十数年後に大惨事を引き起こしたわけです」と驚くべき事実を指摘する。

 松本氏は「ベトナムへの原発輸出にはおそらく国際協力銀行の融資が充てられる。米国でさえスリーマイル島の事故で政策を大転換させたのに」と呆れている。

(まさのあつこ・ジャーナリスト、11月11日号)

 かねがね、似ているなと思っていた。いよいよ似てきた。

 菅直人首相と小泉純一郎元首相。
「がんこ」「一匹オオカミ」「人の声に耳を貸さない」「カネにはクリーン」……共通項はたくさんある。

 国会周辺で、「菅首相は『脱原発解散』に踏み切るのでは」という”疑念”
が、依然としてくすぶっている。言わずもがな、「郵政解散」の柳の下のドジョウ狙いだ。常識的にはありえないが、「永田町の非常識」という点でも相似形の二人、ひょっとしたらというわけだ。

 むろん、相当な違いもある。是非論は別にして、小泉氏の「郵政民営化」論は年季が入っていた。それに比べ、菅首相の「脱原発」は唐突感がある。筋金入りには見えない。最近のブログで「再生可能な自然エネルギーを促進するという過去30年の思いがある」と書いているが、やや眉唾だ。

 一方、政策の一つに過ぎない「郵政民営化」に対し、「脱原発」は社会構造を変える根本問題だ。その点でみれば、単に「楯突く奴は許さない」的な解散だった小泉氏に比べ、大義名分はある。

 何と言っても、原発におさらばすることは、「経済功利主義」から「生命尊重主義」への大転換につながる。原発は、そもそも米国の軍事的、経済的戦略に基づいたもので、日本では、その甘い蜜に政・官・財が群がった。最初から、市民の生命や健康は考慮の外だった。新自由主義の本質そのものとも言えるだろう。つまり、「脱原発」は「命優先」社会実現への第一歩となる可能性があるのだ。

 だから、この際、とりあえずもろもろの批判は棚にあげて、多少のことには目をつむって、菅首相の解散決断を支持しようかと考えていた。六月半ばまでは。

 しかし、一八日、海江田万里経済産業相が「全国の原発の安全対策は適切」と宣言、菅首相は「私も同じ」と表明した。首相の「脱原発」とは果たして何を意味するのか。????だ。

 そういえば、菅首相と小泉氏の共通点がまだあった。

「その場しのぎ」

 菅首相がこう言いださないことを願う。

「人生いろいろ、脱原発もいろいろ」

福島原発事故の収束や被災地の復旧よりも、財政再建を優先する財務省。(撮影/石郷友仁)

まるで菅直人首相のライフワークのように見える「社会保障と税制の一体改革」こと消費税増税策。

さも、二〇一〇年七月参議院選挙の民主党・マニフェストで、菅首相が突如として唱えはじめたような印象になっている。しかしこれは正しい理解ではない。

説明しよう。麻生太郎政権時代に成立した、〇九年度税制改正法(〇九年三月三一日公布)の附則一〇四条には次のように明記されている。

「政府は、基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引上げのための財源措置並びに年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用の見通しを踏まえつつ(中略)段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成二三年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする。この場合において、当該改革は、二〇一〇年代の半ばまでに持続可能な財政構造を確立することを旨とするものとする」

これはまさしく「社会保障と税制の一体改革」そのものである。そしてその法案整備時期を一二年三月までと指定しているのだ。

つまり、この一一年九月からスタートする臨時国会に提出されるであろう「社会保障と税制の一体改革」法案は、自公政権末期の麻生太郎内閣が時限爆弾として仕込み、それを菅・民主党政権が粛々と実行しているのである。

すなわち、民主党政権が「附則一〇四条」に従い、一二年三月までに消費税増税法(一〇%に増税)を提出→件の「附則一〇四条」自体は自公連立政権時代に成立した法律であり、消費税増税法案は「衆参ねじれ」にもかかわらず民自公の賛成多数で成立する――という流れが待っているのである。

これひとつとってみても「あの政権交代は、一体、何だったんだろう」と虚しくなる。

時に菅首相を批判する勢力――鳩山由紀夫前首相や小沢一郎元幹事長あたり――からは、消費税増税路線を「マニフェスト違反」と批判する声を聞くが、ならば、「小鳩体制」のときに、すみやかに「附則一〇四条」を削除すべきだったのではないか。

まさかお二方が「附則一〇四条」の存在を知らなかったわけがあるまい。つまり、彼らにとって消費税増税批判は、菅首相を批判するための材料にすぎないのではないか(ゆえに私は「小鳩体制」が続いていても、消費税増税に着手したのではないかと睨んでいる)。

とはいえ、菅直人は首相に就任して以来、まるで小泉構造改革の継承者のごとくふるまっている。

そして「菅は財務省のいいなりになった」「野田佳彦は財務省の操り人形」「仙谷由人はまるで財務省の手先だ」「与謝野馨は財務省の代理人だ」という比喩もよく聞くようになった。

「政治主導」の正体

このときいう「財務省」とは、具体的には勝栄二郎事務次官を指す。3・11以降、菅首相の支持率が低下し、政局的な危機が訪れても見捨てず下支えしてきたのが勝次官である(この人は小沢氏に冷や飯を食わされそうになった経験があることから、反小沢の立場と見られている)。たとえば第二次補正予算の編成や成立に尽力し、特例公債法案が野党の抵抗で店晒しにあり、政府の兵糧が尽きる中、資金繰りに動いたりしている。

勝次官が懸命に菅首相を支えたのは、ひとえに財務宿願の消費税増税を実現させるためである。

官邸をよく知る者は現政権を「勝政権」と呼ぶが、それほどまでに菅首相は勝次官に依存し、官邸の重要事項を仕切らせている。

今年、一月一四日の組閣において与謝野馨氏を経済財政政策担当相、社会保障・税一体改革担当として入閣させたのも、勝次官の意向である。麻生内閣の財務大臣が菅直人首相のもとで消費税増税に血道をあげているのは偶然ではなく必然なのである。これが民主党の「政治主導」とやらの正体だ。

そして勝次官は、菅内閣での消費税増税法案を成立させることを目標にしてきた。それが菅政権がここまで続いてきたひとつの大きな理由といえる。つまり菅首相が辞任し、もし消費税増税慎重派が新代表に選出されたりしたら、もし消費税増税支持の代表候補がボロ負けしたら、もはや目も当てられない。財務省としては、またもや消費税増税を見送らなければならなくなる。ちなみに勝次官は幻の「国民福祉税」の細川護煕政権時代、官房長官秘書官を務めている。あのような悪夢は二度と見たくはないだろう。

「内閣府は一二日の閣議に、二〇二〇年代前半までの中長期の経済財政試算を提示した。社会保障と税の一体改革に沿って消費税を一五年度までに五%上げた場合でも、国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス+PB)の赤字は二〇年度に一七・六兆~一八・三兆円にのぼる。政府が目標とする二〇年度の黒字化を達成するには、消費税換算でさらに七%程度の収支の改善が必要となる」(八月一二日付『日本経済新聞』電子版)

いまさら、何をか言わんや、である。そんなことはこの新制度を検討する前から分かりきっていたことではないか。

民主党「税と社会保障の抜本改革調査会」勉強会(二〇一〇年一一月開催分)配布資料「税と社会保障の抜本改革~スウェーデンとの比較の視点から~」(日本総合研究所調査部)によれば、一三年度までに消費税を三%引き上げ、一五年度までに二%引き上げ、さらに一九年度までに四%を引き上げることで、PB黒字化が達成するとしている。

つまり一五年度までの五%増では財源が足らず、さらにその四年後までに四%増、税率一四%にすることが求められているのだ。

野田財相が「正当後継者」

そう。そもそもこの消費税増税は「社会保障改革」をひとつの口実に挙げているが、真の狙いは「財政健全化」+PBの黒字化にある。ならば五%増税では全く足らないのである。

要するに、今回の消費税増税では、消費税率一〇%で何年持ちこたえられるのかの議論が一切なされていないのだ。ひとまず五%を増税して何年後かのさらなる増税が目論まれているのだとしたら、そしてそれが国民に隠されていたとしたら、それこそ「ペテン」に等しいのではないか。

政権に居座り続けた菅首相は、退陣三条件(「特例公債法案」「第二次補正予算」「再生可能エネルギー法案」の成立)が全て揃う八月二六日に退陣すると八月一〇日の衆議院財務金融委員会で明言した。これは菅首相本人の意思のみならず、勝次官からも退陣を了解されたとみるのが正しい。そして退陣が予定される二六日から中一日挟んだ二八日には新代表選挙(両院議員総会)が開催されるべく、調整がすすめられている。

そして菅首相の正当後継者として野田佳彦財務相が名乗りを挙げる。野田氏は八月一〇日発売『文藝春秋』に掲載の「わが政権構想」にて「政府・与党は、六月三十日に社会保障・税一体改革の成案をまとめました。(中略)私は、覚悟をもってこの一体改革を実現していきたいと考えています」と、菅首相の増税路線継承を明確に打ち立てた。

つまり、勝次官は野田氏を全面的に支えていくことになる。野田氏が負けた場合には全てが白紙に戻る可能性すら秘めているからだ。

今回の代表選挙は新総理大臣を選ぶ選挙であり、この消費税増税のみならずTPP(環太平洋戦略経済連携協定)や政権の枠組み(野党対策)に、〇九年マニフェストのありかたも議論されなくてはならない。

通常国会も終了するのだから、代表選の期間は八月二七日から九月の第一週ぐらいを充てても支障がないと思われるのだが、そうはならなかった。選挙期間が長くなればなるほど国民ウケが悪い「増税派」が嫌われるのは明らかだからだ。もしメディアで世論調査を実施して「増税候補不人気」などという結果が発表されたら、民主党で多数を占める一年生が、雪崩をうって「反増税」に流れる可能性があるからだ。

短期決戦あるのみ。そういう理解でいいですかね、勝さん?

(小谷洋之・ジャーナリスト、8月19日号)

「日本の新しい産業革命」を唱える菅首相。(撮影/筆者)

 菅直人首相は七月三一日、長野県茅野市で開かれた「みんなのエネルギー・環境会議」の初会合に参加し、二度にわたり挨拶をした。

 経済産業省原子力安全・保安院のやらせ問題については「厚生相時代に経験した薬害エイズ事件と同じ構造」と指摘した上で、製薬会社の利益を尊重した厚生省(当時)と、原発の安全性を国民の立場でチェックすることが本務にもかかわらず、逆に推進する側の”お手伝い”をする保安院を重ね合わせ、原子力行政改革の重要性を訴えた。

 また菅首相は、震災の前後で原発に対する考え方が変わったと事故直後を振り返りながら、「(原発事故の発生確率が)たとえ一億分の一でも一回で地球が崩壊するようなリスクは取れない。原発に出来るだけ依存しない社会にする」と改めて脱原発の姿勢を強調した。するとテレビクルーはすぐに「原子力行政を厳しく批判した菅首相。辞任という二文字は全く頭にないようです」と実況中継をした。

 挨拶の後も首相は会場に残り、全体討論第二部「再生可能エネルギー」の議論に耳を傾けた。そして約一時間後、感想を求められると再び壇上に上がり、こう訴えた。

「(日本のエネルギーを)自然エネルギーで全てまかなうことも十分可能だ。日本の新しい産業革命につながっていく。今から二、三百年前は山にしば刈りに行ってやれていたのだから、自然エネルギーを新技術に転換すればいい」

 しかし討論では、菅首相が政治生命をかけると宣言した”肝煎り法案”である「再生可能エネルギー法案」が野党との修正協議で骨抜きにされる危険性が指摘された。パネリストの水野賢一参院議員(みんなの党)は、最前列の首相に呼びかける形でこう訴えた。

「自民党は電気料金が高くなるとして、電気の大口需要者のための骨抜き修正案を考えている。業界寄りの後ろ向きの修正ではなく、電力自由化・送発電分離・電力会社の地域独占打破をセットにした、電気料金を安くする政策を入れた前向きの修正をする度量を与党に求めたい」

 実際、与野党協議で骨抜きになる恐れについては複数の国会議員が指摘していた。阿部知子・社民党政審会長はこう話す。

「原子力損害賠償支援機構法案もそうでしたが、今は水面下で自公民の修正協議で合意するのが慣習になっています。再生可能エネルギー法案でも海江田万里大臣が『電気料金への賦課金の上限を〇・五円(キロワット/時)とする』と答弁し、この内容を法案に明文化する動きが自公民の担当者にあるようです」

 この上限「〇・五円」は、震災・原発事故前の試算を基にしたもので、二〇二〇年に原子力発電が四一・五%、自然エネルギーが一三・五%(水力を含む)が前提になっている。自然エネルギーの伸びは四%にすぎない。

 この上限を法案に書き込めば、再生可能エネルギーの促進にはならない。阿部氏は続ける。「菅首相が国際公約をした『二〇二〇年代のできるだけ早い時期に再生可能エネルギーの割合を少なくとも二〇%を超える水準』にすることは実現困難になるのです。しかも経済産業委員会は、知事をはじめ地方の声を聞かないまま審議を進めています。関西広域連合はこの法案審議について申し入れをしましたが、嘉田由紀子・滋賀県知事は『地方の声を国会にどう届けたらいいのか』と訴えていました」。

 山田正彦前農林水産相もこう話す。「電気料金が上がると言われているが、自然エネルギーは液晶パネルと同様、普及拡大によってコストが急激に下がり、コストが高騰している化石燃料に置き換わる節約効果も出てきます。七月二九日に江田五月環境相と面談し、〇・五円の上限について説明したところ、『そうなったら大変だ』と言っていました。海江田大臣は産業界の言い分だけでなく、総理が再生可能エネルギーを基幹エネルギーにすると言った意味をよく理解されるべきではないか」。

 集会後の記者会見で菅首相は「建設的な前向きの議論がなされた」と上機嫌だったが、再生可能エネルギー法案の骨抜きについては問題視していないのだろうか。

(横田一・フリージャーナリスト、8月5日号)

ストレステスト実施の発端となった九州電力・玄海原発。しかし依然、先行きは不透明だ。(撮影/筆者)

突然、菅直人首相が打ち出した「原発のストレステスト(耐性試験)」について、政府は七月一一日に統一見解を発表した。「玄海原発」(佐賀県玄海町)など運転停止中の原発に対し、再稼働の可否を判断するために暫定的な「一次評価」を実施する一方、稼働中を含む全原発については本格的な「二次評価」によって運転継続か否かを判断することとした。

一次評価を短期間で行なうと言っても一定期間が必要となり、しかも菅首相が安全審査に慎重な姿勢を崩していないため、早期の再稼働は困難な見通しとなった。今夏の電力需要逼迫を”脅し”にして、なし崩し的な原発再稼働を進めようとした経済産業省の目論見は打ち砕かれることになったのだ。

一一日の統一見解発表に至るまでの政府の迷走に対し、「閣内不一致」「玄海原発の地元自治体は混乱」といった批判が与党内からも噴出したが、諸悪の根源は「経産官僚の”操り人形”になっている」(民主党関係者)と揶揄される海江田万里経産相だろう。

五月に浜岡原発停止を要請。六月一五日にも「再生可能エネルギー促進法案(固定価格全量買取制度法案)」の成立に政治生命をかけると発言するなど、菅首相は脱原発の姿勢を打ち出していた。ところが、こうした動きとは対照的に海江田氏は、原発の再稼働について「安全性に問題がない」との主張を繰り返し、六月二九日には玄海原発の地元・佐賀県を訪問して古川康知事や岸本英雄玄海町長と面談。原発を抱える地元自治体を説得する役を買って出ていた。

こうした原発再稼働方針の経産官僚のシナリオ通りに動く海江田氏に対し、菅首相はいったんは「大臣と同じ立場」と表明したものの、経産官僚主導から脱却する機会をうかがっていたとみられる。

そして六月二七日の首相記者会見で、「今回の事故を受けて、原子力発電所の安全性ということが極めて重要だということは国民の共通した理解」「定期点検中の原発についてもしっかりと安全性を確認をすることは当然行なわなければならない」と強調。その上で、自然エネルギーが十分に普及するまでの間、化石燃料の使用が必要になることや、”埋蔵電力”と言われる自家発電所の調査を指示したことについて説明をしていった。

経産官僚は「原発再稼働をしないと夏の電力需要を乗り切るのは難しい」という「電力ないない神話」(川内博史衆院議員・科学技術イノベーション委員長)で海江田氏を”洗脳”し、その一方で『産経新聞』などのメディアを使って原発再稼働キャンペーンを展開していた。「この動きに対して菅首相は反転攻勢に出たのです」と民主党関係者は解説する。

「記者会見やエネルギー・環境会議(国家戦略室)で菅首相は、安全性が最優先と強調しつつ、自家発電所の活用を口にした。資源エネルギー庁が約六〇〇〇万キロワット(後に約五三〇〇万キロワットに下方修正)と公表した『自家発電』を使うことで、『原発再稼働しないと電力需要が逼迫する』という経産官僚の嘘を打ち破ろうとしたのです。その上で、海江田氏にストレステストの検討を指示してハードルを高くして、夏前の再稼働を事実上、不可能とした。菅首相の作戦勝ちといえます」(民主党関係者)

菅首相に梯子を外された形となった海江田氏は怒り、辞任をにおわす発言をしたが、非は官僚の手のひらで踊ってきたことにある。ただし海江田氏に会った川内氏はこう話す。

「七日に海江田大臣に会って元気づけましたが、原発再稼働なしでも夏の電力需要のピークを乗り切れる『電力ないない神話』について説明したところ、頷いて聞いていました」

内閣支持率が一五%に低下したものの、再稼働の先送りで脱原発解散に不可欠なエネルギーシフトを目指す政策の一貫性は整いつつある。残る問題は、海江田氏。経産官僚の”洗脳”(情報操作)から目覚めて、多くの国民が望む原発の安全性最優先に方針転換をするのかが注目される。
(横田一・フリーリポーター、7月15日号)

農業用水の確保は可能――開門反対派論拠に疑問符

 諫早湾干拓事業の潮受堤防開門問題で菅直人首相は一月三一日、中村法道・長崎県知事らが出していた公開質問状(二三項目)に文書で回答した。しかし中村知事は「具体的な回答がほとんどない」「農業用水の代替水源も検討課題としていた」などと反発。地元の開門反対派は「水門開門をすると農業が続けられなくなる」と訴訟の構えもみせている。

 一方、一月二三日に同市を訪れた鹿野道彦農水大臣は意見交換会で「下水処理場の再生水を代替水源として検討」と発言。これに対し中村知事は「既に検討して使用困難という結論を出した」と反論した。公開質問状にはその理由を「全窒素(濃度)が農業用水の基準の八倍高い」と記していた。

 しかし下水処理の行政担当者はこう話す。

「国交省は下水処理場の再生水の利用を推奨し、すでに六・九%が農業用水として使用されています。『窒素濃度が基準の八倍』と言っても、薄めて使えばいいだけの話。実際、長崎県内でも川の上流で再生水を注ぎ込み、下流で薄まった河川水を取水している地区もあります」(行政担当者)

 国交省下水道部の資料「我が国における下水処理水の再利用状況」には、「下水処理水年間一三九・三億立方メートルのうち、再利用量は約二・〇億立方メートル(再利用率一・五%)」のデータとともに、「農業用水等の再生水利用事例(香川県多度津町)」も紹介されていた。

 その説明図には、下水処理場から再生水プラントを経て再生水が河川放流されたり、農業用溜め池に注ぎ込まれたりする様子が描かれている。

 この国交省の資料を中村知事らが見ていないのなら情報収集不足も甚だしく、見た上で「使用困難」と主張していたのなら、詐欺師紛いと言われても仕方がないだろう。

(横田一・フリージャーナリスト、2月11日号)

 二月三日の旧正月。旧暦の風習の残る沖縄では大切な日だ。こともあろうにその日の朝、「沖縄防衛局の車一五台が高江に向かっている」との情報が入ってきた。

 駆けつけた住民や支援者らの厳しい抗議で、防衛局は米軍ヘリパッド建設に向けたこの日の作業を断念せざるを得なかったが、翌日は倍数の職員に、ダンプ二台を動員し、住民との対峙が終日続いた。

 三月から六月までは国の天然記念物・ノグチゲラの繁殖期に当たるため工事ができない。そのため何が何でも二月中に工事を進めようと、防衛局はなりふりかまわぬ強硬姿勢だ。

 一月二六日には、高江住民の抗議と監視の座り込みを国が「通行妨害」で訴えたスラップ訴訟(大企業や国、自治体など経済的に力のある団体が対抗勢力に対する嫌がらせを主な目的として起こす訴訟)の公判が那覇地裁で行なわれた。その最中、沖縄防衛局は高江の現場に約三〇人の作業員や職員、作業トラックを動員して工事(砂利の搬入)を強行した。年末年始や早朝を狙って作業を強行してくる防衛局に対し、現場では二四時間の監視体制を強いられているが、この日は公判への出席や傍聴のため、住民や支援者の多くが車で三時間以上を要する那覇へと出かけ、現場は手薄になっていた。

 裁判の途中で知らせを受けた住民側弁護士は、法廷で工事強行を裁判長に報告し、原告側に座っている防衛局職員に強く抗議。傍聴席からも、「空き巣狙い」のようなやり方に怒りの声が上がった。

 裁判所から「対話」を勧告されているにもかかわらず、国は裁判を故意に長引かせて住民を苦しめつつ、現場においては国家権力を使って力で押しつぶそうとする考えのようだが、酒井良介裁判長は、裁判の迅速な進行のために集中審理を提案。裁判長の提案通り、国が「妨害行為」としているものの一つひとつについて審理すれば、国の訴えに正当性がないことが明白になるだろう。

 一月一四日に発足した菅直人再改造内閣を『琉球新報』は「『沖縄切り』の表れ」と表現したが、エスカレートする住民への攻撃は、沖縄への「宣戦布告」としか言いようがない。

(浦島悦子・ライター、2月11日号)

「TPP交渉参加になぜ米国議会の承認が必要なんだ。これでは外交権の放棄ではないか!」

 一月二七日朝、東京・永田町の衆議院第二議員会館において民主党の「APEC(アジア太平洋経済協力)・EPA(経済連携協定)・FTA(自由貿易協定)対応検討プロジェクトチーム(PT)総会」が開かれた。PTの民主党議員に説明するため外務省、内閣官房、経済産業省、農林水産省の説明官が出席したが、民主党の国会議員の間では冒頭の発言を始めとする怒りが次々に噴出したという。

 菅直人政権が掲げる「平成の開国」。その中核政策になっているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)。四月に統一地方選を控え農村部を抱える地方の反発が強いこともあって、日本政府はいまだにその交渉会合に正式に参加していない。しかし、外務官僚らは米国を始めとする交渉参加国と情報収集と称する協議を水面下で実施しており、いつでもTPP交渉に参加できるようにエンジンを暖めている。昨年一二月一三日~一五日にはニュージーランド、豪州、シンガポール、今年一月一三日及び一四日には米国(日米貿易フォーラム)、一四日~一七日にはチリやペルーと協議している。

 TPPの交渉会合は直近では二月にチリで行なわれる第五回交渉会合を始め今後も毎月のように行なわれる予定だ。最終的に今年一一月のハワイAPEC首脳会議において交渉参加国の間で合意が目指される方向である。

 PT総会出席者への取材や民主党議員に配られた当日の議事メモによれば、冒頭の発言内容を始めとして外務省担当官から今回初めて説明されたことが多かったという。

 ちなみに冒頭の質問に対し外務省の八木毅経済局長は「米国議会の承認は日本に対してだけでなく、他の国についても同様」と答弁している。そもそもTPPは多国間協議だ。にもかかわらず交渉参加希望国に対しては米国議会の承認が必要なのである。まさにTPPが米国主導の多国間自由貿易協定だという実態が浮かび上がってくる。

 八木経済局長らは一月一三日にTPPの情報収集として日米貿易フォーラムに出席しているが、そこでは牛肉輸入問題、郵政関連問題、自動車の技術基準ガイドラインについて米国側から提案がなされたという。ここでいう「郵政関連」とは米国が年来要求している郵貯・簡保の、「自動車」は車検基準の規制緩和を意味する。いずれも日米交渉では実現してこなかった米国側の要望だが、TPPという多国間協定に一括して混ぜてしまえば日本で受け容れやすくなるからだとは、うがった見方か。

 さらにTPPの交渉会合において農業、金融、労働、紛争解決など二四の作業部会(左図表)が存在するが、規制緩和の具体的な議論が交渉参加国で進んでいることも当日は明らかになり、これにも批判が噴出した。

「ここまで分野が広がれば全省庁としての取り組みになるはず。外務省の経済局長ではなく、まずは前原誠司外相が説明をするのが筋だ。TPPは外務省経済局が振り回しているよ」(出席者)

 決定的に外務省が民主党国会議員たちを逆撫でしたのは、民主党PTへの説明会以前に八木経済局長らが自民党の部会に対して二四分野について詳しい説明を実施していたことだ。このことを問い質されると八木局長は開き直ったように「(自民党には)二四部会について具体的に説明した」と答弁。民主党は正面から面子を潰された格好になったという。

「今外務省とつながっているのは親米派の前原外相周辺ぐらい。外務省が政権与党の民主党ではなく野党である自民党にまず話をするとは、なめられたものだ」(出席者)。二月一日にあらためて民主党PTへの説明会は開かれたものの、質問がTPPの中身に及ぶと、外務省は「交渉に参加しなければ詳しいことはわからない」と繰り返し、突っぱねたという。かように民主党議員と外務省の関係は冷え切っているらしい。

(平井康嗣・編集部、2月4日号)